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LAS VEGAS

活動休止を経てかなり久しぶりに発売されたオリジナルアルバム。
音楽プロデューサーの小林武史さんプロデュースによるものです。
この年に発売された復帰シングルからプロデュースされていますが、
小林さんとはその数年前から接触していたようですね。
活動休止の間も着々と準備をしていて、満を持して発表された作品だと思います。


Sweet Rosemary
カントリーを基調とした楽曲。
映画「ギルバート・グレイプ」をモチーフとして書いた曲で、
確かに、この青春映画の雰囲気にマッチします。
また、復帰後から歌詞の書き方が変わってきたようで、
普遍的な歌詞を書いていきたいという歌詞に近付けた曲なんだそうです。
今までの難しい単語が羅列した、ちょっと近寄りがたい歌詞に比べたら、
だいぶ親近感があって、距離感が近く、
歌詞の内容がストレートに入ってくるので、聴きやすいと思います。
本人曰く、「このアルバムの中心になると考える曲」だそうで、
当時の鬼束さんの姿勢を、率直に表現した曲なんだろうな、と思いました。

bad trip
映画「スパン」を見て書かれたバラードで、
音楽監督を担当したビリー・コーガンだったら、こういう曲を書くだろう
というイメージで書かれたそうです。
全編英語詞で、洋画の挿入歌として流れても良さそうな仕上がり。
アルバム全体を通して旅をイメージして制作されているそうで、
この曲はそのテーマそのものですね。
ちなみに本人は旅は嫌いだそうですが、人生とは長い旅のようなもので、
そういう大きな括りでのテーマだと考えればよいと思います。

蝋の翼
ギリシャ神話のイカロスがモチーフ。
イカロスといえば、よく小学校で歌われる「勇気一つを友にして」の重苦しいイメージがありますが、
対照的に明るいイメージに仕上がっていて、
ポップス的要素を押し出したバンドサウンドになっています。
私の中のイカロスのイメージが、一気に前向きなものに一新しました!

僕等 バラ色の日々
ピアノとストリングスを基調としたロックバラード。
「バラ色の日々」と字面で見れば楽しいイメージなのですが、
そのイメージを繰り返し求めることに対する皮肉を込めているそうです。
楽曲全体の世界観を、「その何度も何度も繰り返す行為が表す人生観を絶望的にぼんやり見ている感じ」
「絶望と手をつないで歩いている感じ」と説明しています。
聴いていると、ふっと絶望感に捉われるような感覚があります。

amphibious
タイトルの意味は、人間に使う場合「二重人格」として使われますが、
本人は「両性具有」の意味をもって書いたそうです。
こういう大胆なロックナンバーも、今までにはなかったアプローチかも。

MAGICAL WORLD
復帰第一弾シングル「everyhome」のカップリング曲ですが、
アルバムバージョンとして再録音されています。
ボーカル・ピアノ・チェロの構成だったシングルバージョンに対し、
ストリングスとパーカッションが加わっています。
本人曰く小林武史さんのイメージをもってして曲を作ったそうで、
小林さんのことを寂しい部分も持っている人なのではないかと想像して書いたそうです。
何となくですが、アーティストや音楽プロデューサーって、
孤高なイメージがあるような気がして、
まぁ職業柄そういうものなのかもしれませんが、
そういう部分でしっくりきました。

A Horse and A Queen
鬼束さんが21歳の時に作った曲なので、以前のレコード会社にいた頃から存在していたものの、
お蔵入りされていたようです。
なので、初期の頃に発表された曲の曲調を踏襲しています。

Rainman
このアルバムには収録されていないですが、シングル曲「育つ雑草」のカップリング曲でした。
その時は初めて自身がピアノ弾き語りを披露した楽曲でしたが、
このアルバムではバンドサウンドで構成されています。
全編英語詞なのですが、文法に忠実にするため、
和訳を元に一部英語詞を加筆修正した箇所もあるそうです。
和訳を見ての印象ですが、なんて優しい歌なんだと。
雨は涙などの比喩かもしれないけど、そんな「雨」が止むのを、
ただ黙って側にいて待ってくれる。
そんなミスター・レインマンの存在に、ほっこりしました。

Angelina
20歳の時に作られた曲なので、このアルバムの中では一番古く作られた曲となります。
タイトルはアンジェリーナ・ジョリーから付けられたそうです。
個人的には、アンジェリーナ・ジョリーといえば強い女性のイメージが大きくて、
正直、こういう感じの曲のタイトルとしては意外だったんですけど。
ただ、その強さの裏にある繊細さのようなものを、
鬼束さん独自の感受性で感じ取ったのではないかと思います。

BRIGHTEN US
讃美歌をイメージして作られた曲で、全編アカペラで歌唱されています。
こちらも全編英語詞なのですが、歌詞のニュアンスは英語詞のままの方が伝わるだろうという、
本人の意向から、この曲のみ日本語訳詞が付けられていないのです。
中学・高校時代に毎日歌っていたので、讃美歌にはなじみがあり、
英語で讃美歌を歌う機会も多くあったのですが、
実際の讃美歌と間違えそうなくらいの出来です。
歌詞のワードだとか、讃美歌らしい旋律の運び方とか、完璧だと思いました。

everyhome
活動休止からの復帰シングル。
ピアノのみというシンプルな構成で制作されたバラードで、
小林さんのピアノとの同時収録となっています。
風が大きなテーマになっているそうで、映画「フォレスト・ガンプ」を観ていたら曲が出来た、
と本人が語っています。


全体の印象として、カントリー・バラード・ロック・ポップス・讃美歌など、
これまでの作品には見られなかったほど楽曲ジャンルが多彩で、
バラエティに富んだ仕上がりになっています。
また、数々の映画の影響を得ている楽曲も多く、
活動休止の期間が、ほどよい充電期間になったのではないかな、と思いました。



LAS VEGAS

LAS VEGAS

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: UNIVERSAL SIGMA(P)(M)
  • 発売日: 2007/10/31
  • メディア: CD


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タグ:鬼束ちひろ
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