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D-黄金魔(上)

今回のDは何とビックリ!
まさかの借金取りとの旅!
もう住む世界が違う人達、とはまさにこのことですよね。

今回の依頼人・エル爺さんは、
なんと、貴族に金を貸して、踏み倒されているというのです。
貴族が借金!それも人間に!というのが、何ともまあ突飛な状況なんですが、
貴族に金を貸す方もなかなかですよね。
相当図太いキャラをしています。

取り立てる相手は、ヴェレニス侯爵という、貴族界でも大物。
その用心棒としてDを雇います。
この展開にも仰天!

契約が決まったら一目散にヴェレニスのところに向かうかと思いきや、
なかなかそうは行かず。
エル爺さんは他にも厄介な輩に金を貸していたのです。
道中で出会うたびに、返済を迫るが…。


上下巻の上巻なので、まだ本丸にはたどり着けず、
Dの活躍もさることながら、やり手なエル爺さんの仕事ぶりが目立ちます。

爺さんの性格も手伝って、どこか憎めないコミカルなやり取りがあり、
何だかDとの関係性も温まっているような‥・。
下巻ではいよいよ本丸のヴェレニスのもとへ向かうわけですが、
面倒な道連れがいたり、神祖の影がちらついていたりと、展開が気になります。
そもそも、今回の珍しい人間関係で、もはや予測不能です!




吸血鬼ハンター25 D-黄金魔(上) (文庫)

吸血鬼ハンター25 D-黄金魔(上) (文庫)

  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2012/08/31
  • メディア: 文庫


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深夜枠

東京事変が発売した全てのシングルのカップリング曲を網羅した、
カップリング・アルバムです。
カップリング曲とは思えない、ものすごいクオリティです。
ちなみに、ジャケットの女の子のキャラクターの名前は「むてきちゃん」で、
林檎ちゃんが命名したとか。

ハンサム過ぎて
アルバム初収録となった曲。
全英語詞なのですが、一気に惹き込まれる感じが、
オープニングナンバーにピッタリです。


「キラーチューン」のカップリング曲。
浮雲さんが、ブラック・ミュージックを歌うのが上手い林檎ちゃんに歌ってもらいたいと、
スウィート・ソウルをイメージして作った曲だそうです。
ブックレットには日本語詞しか載ってないですが、実際には英語詞で歌われています。
なのでかなり本格的!!
ムーディーな世界観に酔いしれます。

BB.QUEEN
こちらも「キラーチューン」収録。
浮雲さんが、東京事変へ加入される前に書いた曲で、
当時パソコンで宅録できるようになったのが面白くて作ったそうです。
ピアノの速弾きだったり、サウンドも面白いですが、
巧みに韻を踏んだ歌詞もまた面白い!

我慢
「能動的三分間」のカップリング。
作曲の伊澤さん曰く、「反射神経で書いた曲」。
歌詞が関西弁なのは、林檎ちゃんの関西弁が聞きたいという伊澤さんのリクエストにより、
林檎ちゃんが作詞しました。
といっても林檎ちゃんは福岡出身なんですが。
そのためか、コテコテな感じはしなくて、むしろ粋!?

ピノキオ
「OSCA」のカップリング曲。
伊澤さんによるオーソドックスでピアノ・オリエンテッドなポップ・チューン。
作る過程で一度も悩まずに、ほぼ曲のサイズそのまま、3分ちょっとでできた曲だそうで、天才!
それでいて、この壮大なストーリー性のあるメロディー展開は本当にスゴイ。
歌詞の内容について、「ピノキオと人間を題材にした」と話していますが、
なんと伊澤さん本人はピノキオの話をよく知らなかったようです。

鞄の中身
こちらも「OSCA」収録。
初めて英訳を作詞者以外の者が務め、かつ初めてメンバー以外の人物が英訳に携わっています。
林檎ちゃんがこの曲を貰った時点で想像した歌詞はもっと別な世界観だったのですが、
実際にレコーディングしてみるとシュールな響きがあったので、そういう内容の歌詞を書いたそうです。
私の鞄の中身は見せられたもんじゃないですね。
しかし、どうしていつもあんなに重くなってしまうんだろう?と不思議でしょうがない。


「遭難」のカップリング曲。
林檎ちゃんが自身の誕生日を祝うために1日で書いたそうです。
独特な哲学的な考え方に、その感性に、ただただ脱帽。
誕生日をこんな視点でとらえたことなかったな。

恋は幻
「修羅場」のカップリング曲。
ネッド・ドヒニーの名曲「Get It Up for Love」のカバー。
林檎ちゃんが伊澤さんにぴったりだと思っていて、どうしてもやりたかった曲だそうです。
とのことで、ピアノの音に集中して聞いてしまうんですけど、なんとドラマチックな旋律!
伊澤さん、毎回スゴイんですけどね。

落日
こちらも「修羅場」に収録。
歌詞には、メンバー2人が一気にいなくなったことで、
今後バンドがどうあるべきかということや、もっとプライベートなことなど、
東京事変に起こった変化と私的な気持ちがリンクした林檎ちゃんの心情が書かれています。
途中から、夕日に照らされるような神秘的な音色がするのが、印象的です。

ダイナマイト
こちらは「遭難」に収録。
50~60年代に活躍したジャズ・シンガーのブレンダ・リーが歌ったことでも知られる、
スタンダード・ナンバーのカバー。
ステップ踏んだり、手を叩いて、身体を動かしたくなるような、コミカルなアレンジ。

その淑女ふしだらにつき
ミュージカル・ショーチューン「ザ・レディ・イズ・ア・トランプ」のカバー。
そのままミュージカルの1シーンを見ているような展開。


林檎ちゃんと、旧メンバーの晝海さんとのデュエット曲です。
全英語詞ですが、単なるデュエットではなく、
しっかり掛け合いで会話しているのです。
役名?が「姫」と「殿」なのが面白い。
この曲、メロディがすごく綺麗なんですよね。
第1期メンバーだからこそできた曲な気がする。

ただならぬ関係
ここにきて新曲!
当時、解散もしていたし、まさか新曲があるとは思っていませんでした。
解散は残念だったんですけど、そんなしんみりさを吹き飛ばしてくれるような印象でした。
でもまさか、今やまた皆さんに遭えるなんてね!!



深夜枠

深夜枠

  • アーティスト: 東京事変
  • 出版社/メーカー: Universal Music
  • 発売日: 2012/08/29
  • メディア: CD


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アコギタクイ-共鳴新動-

アコギタクイシリーズ第二弾。
こちらは書き下ろしの新曲と、
卓偉さんと親交のあるアーティストとのコラボレーション作品集となっています。
卓偉さんが尊敬するミュージシャン=ざっくり言うとスゴイ人たちばかりで、
そうそうたる顔ぶれです。
きっと卓偉さんご本人も、相当な刺激を得たのではないかと感じられます。

二人が愛するすべてに
知人の結婚式で歌ったことをきっかけに書いたウェディングソング。
卓偉さん、いつかウェディングソングも書いてみたいな、とずっと思っていたそうですよ。
アレンジのテーマはゴスペルということで、本気のビッグコーラスにするために、
ご自身の声で何声ものパートを重ねて厚みを出しています。
ドラムも、教会で叩いているかのように深く響いてきて、
結婚式が行われているその教会で、新郎新婦の為にたくさんの仲間が祝福を胸に歌いかける、
そんなシチュエーションをイメージしながらレコーディングされたそうです。
確かに、そんな空間が感じられます。
いつかステージで聖歌隊と一緒にこのビッグコーラスを再現する‥・
そんなことが実現したら、きっとものすごい迫力になるんだろうなぁ。
そこまで行かなくても、結婚式の二次会で卓偉さんご本人に歌ってもらえるなんて、羨ましい。

FCUK YOU
ファックユーではなく、「フックユー」です。よく見てください(笑)
誤植じゃないですよ。実際に街中でこの綴りを目にされたそうなんですが。
本来のスペルならHOOK。引っかけるという意味にもとれますよね。
日本のカタカナ英語ならスペルが違っても呼び方はフック。
ということは「お前を引っかける」とか「落とし入れる」とかそういう意味!?
1曲目があんなに壮大なラヴバラッドだったのに、2曲目でこんなにも一気にガラッと変わる。
ロックですねぇ。

aim
米倉利紀さんとのコラボレーション。
Bメロからサビにかけてどっちのメロディが主旋律かわからないような。
常にツインボーカルで押し通していきます。
米倉さんとはミュージカル「RENT」で共演されたご縁。
ミュージカル俳優同士、お互い引けを取らないツインボーカルは、圧巻です!

悪戯な砂時計
2002年には存在していた曲で、何度もアルバム候補曲にあがっては外れ…という経緯があるそう。
今回晴れて収録されたのですが、どうして外れたの?というくらい、インパクトあります。
卓偉さん曰く、そもそもアコギのイントロから始まるパンキッシュな曲など、
今までのロックだけにこだわったアルバムには収まりづらかったのかも、と分析されています。
でも今回のアコギタクイのテーマならバッチリハマるとのことで、
収録していただけて良かったです~。

To You
つんく♂さんに提供した曲のセルフカバーです。
といいつつ、つんく♂さんと一緒に歌ってます。
今ではつんく♂さんの声は貴重ですが、
卓偉さんとつんく♂さんの声があまりにもマッチしていてビックリしました!
余談ですが、アウトロのビッグコーラスをよ~く聞いていると、「シャ乱Q」が隠れています。
卓偉さんの遊び心。

天才になりたい
虐待をうける少年が主人公の歌。
近年いじめや虐待が社会問題となっていますが、決して冷やかしで書いたわけではなく、
卓偉さんご自身もこういう経験をしてきたからこそ、
虐待やいじめをうけてきたからこそ書けた曲だそうです。
大人になった今だからこそわかること、言えること、
そして子供の頃うまく説明できなかった気持ち、それをこの歌詞に表しています。
普通はテーマにしないような内容、誰もが目を背けてしまう内容であっても、
そこをフォーカスしてロックにのせて歌う。
それが進化していく卓偉さんの新たなアプローチです。
卓偉さん曰く、まったく勉強ができなくて、お父さんに怒られる度に、
天才に生まれてたらどんなに楽だったろうといつも思ってしまうような子供だったとか。
それでこのタイトル、歌詞なのですね。
もうリアル過ぎて、そんなに責めないで!って声かけたくなっちゃう。

気にすんな
2011年秋にユーストリームで24時間弾き語りライブを行い、
その生放送中に書きあげられた曲でした。
ブリティッシュロックの匂いがプンプンするアレンジ。
卓偉さんはイギリスの音楽が好きで、パンクから始まり、
いろんな音楽を作り勉強されたという、ルーツと進化が感じられます。

僕だよ
TRICERATOPSの和田唱さんとの共作。
一人の女の子を和田さんも卓偉さんも好きになり、
その女の子に二人ともプロポーズするという歌詞で、ドラマみたい。
歌詞にはお互いの車も出てきたり、お互いのことをけなし合いながら自分をアピールしたり、
常にお互いが歌いっぱなしなところも面白いです。

叫ぶ女
何年も前から詞も曲もできていたそうですが、
タイミングが合わずお蔵入りとなっていたようです。
「叫ぶ女」ということで、シャウト感を出すために、キーが高い!
勢いを重視したパンク。
そして歌詞に登場するシャウトウーマンは、もはや狂気です。

古い教会
Fried Prideとのコラボ。
SHIHOさんともミュージカル「RENT」とのご縁ですが、
二人のアツイ歌声のロックは、これまた圧巻です!
詞は卓偉さんがロンドン旅行でウェストミンスター寺院に行った時にできたそうで、
物語を描いてはいますが、半分は実話だったり。
卓偉さんの中のリアリティとフィクションを半分ずつ融合した歌詞になっていて、
歌い出しの季節は冬、二番の歌詞は春、三番の歌詞が夏、転調してからの四番の歌詞が秋、
と場面によって春夏秋冬で展開していきます。

生きてる意味がない
スコティッシュパンクのルーツとも言えるバグパイプ。
ようやくバグパイプを使ったアレンジとイントロを作ることができたそうです。
すごく印象的なメロディーラインなので、耳に残ります。
歌詞に「とんこつラーメン」が出てくるのが、さすが福岡県出身!
卓偉さんの本音は、惚れた女を失うより、とんこつラーメンを食べられなくなるほうが、
生きてる意味がないそうです。

カサブタ
広沢タダシさんとのコラボ曲。曲を卓偉さん、詞を広沢さんが書いています。
この詞のテーマについて、二人で打ち合わせをされたそうで、
主人公は優柔不断で言い訳が多くて、謝れば何でも許してもらえると思ってるようなしょうもない男。
彼女のほうはほとんど出てこないけど何だか知的な感じ。
とかなんとか言いながら完成した歌詞は、感動的だった!!

今は何も言わずに
卓偉さんの師匠、森重樹一さんとのコラボ曲。
作詞を依頼する時に、森重さんが思うままに書いてくださいとだけ伝えたところ、
あがってきた歌詞は、森重さんそのままであるのと同時に、卓偉さんのすべてにも当てはまる、
パーソナルなことを詞にするからこそリアリティが溢れるのです。
他にも、歌い方に関してもありがたいアドバイスがあったそうで、
大いに影響があったのではないでしょうか。
まさに夢の共演です。

花束とスーツ
これは、ロンドン旅行中に、卓偉さんが実際に目にした光景がベースになっています。
卓偉さんが街を歩いていたら、ツイードのスーツに大きな花束を抱えた初老の男性を見かけました。
男性はどこか早歩きで、すれ違う人には花束で自分の顔を隠していました。
たまたま同じ方向に歩いていたのですが、病院が見えてきて、
男性は花束を抱えたまま病院に入っていきました。
すると病院のエントランスに、彼のワイフらしき女性が、点滴をしたまま車椅子に座り、
両手を広げて待っていました。
彼はしゃがみこんで彼女を抱きしめました。
そして大きな花束を彼女に渡しました。
卓偉さんは気づかないうちに、立ち止まったまま病院の前の歩道で、
一部始終を見てしまっていたそうです。そして、自然と涙がこぼれたとのこと。
なんていう素晴らしい光景なんだ、なんて素敵な夫婦なんだ!って、
私もこの光景を目にしたら、思わず見入ってしまうと思います。
それに卓偉さんの想像した物語を足して詞におこし、
自然とすぐにメロディも降りてきて、この曲になったそうです。
ハーモニカソロだけになる長めのアウトロが印象的。



アコギタクイ-共鳴新動-

アコギタクイ-共鳴新動-

  • アーティスト: 中島卓偉
  • 出版社/メーカー: UP FRONT WORKS Z = MUSIC =
  • 発売日: 2012/08/29
  • メディア: CD


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あるキング

伊坂さん初の試みであろう、
ある人物の0歳から23歳までを追った、
疑似伝記な小説です。

その人物とは、山田王求。
もちろん架空の人物です。

彼は、地元の弱小球団である仙醍キングスの大ファンである両親の元に生まれました。
ちなみに、仙醍キングスとは仙台のもじりだと思いますが、
今回は、このように地名の漢字がもじって出てきます。
東卿ジャイアンツとか、名伍屋とか。

仙醍キングスは、負けて当たり前の常敗球団で、
チーム創立以来、一度も日本一になったことがなく、リーグ優勝すらも経験していない。
それどころか、ほとんど最下位なのです。
ただ、それでもファンはいる、そんな球団でした。

しかし、そんな球団であっても、名を残した選手がいました。
南雲慎平太。
仙醍市生まれの彼は、野球の才能に恵まれた、いわゆるエリートとしての人生を送っていた。
少年野球の頃から注目を浴び、高校、大学野球でも見事な成績を残し、
プロでも活躍が見込まれたが、ドラフト会議でのくじ引きで仙醍キングスへの入団が決まった。
南雲慎平太のような優れたバッターがいたところで、
仙醍キングスには宝の持ち腐れであるし、実際その通り、優勝を経験することはなかった。

南雲慎平太がFA権を取得した時、大半の人間が、彼は移籍するものだと思った。
ところが彼はFA宣言をせず、引退まで仙醍キングスに在籍し、主力打者として活躍した。
そして引退後も、しばらくすると監督として仙醍キングスに戻ってきた。

王求の母、山田桐子は、そんな南雲慎平太の逸話を知っている。
彼女が小学生の頃、長期入院をしている同級生がいた。
病名は教えてもらっていなかったものの、桐子は仲の良いその同級生のことをよく見舞い、
授業のノートを貸し、学校での出来事を伝えた。
ある時、その同級生がベッドで、晴れやかな顔をしている日があって、
理由を尋ねてみると、それまで南雲選手が訪れていたという。
彼女は入院中に、南雲選手に何通もファンレターを送っていたそうで、
それが叶ったかたちのようだ。
そこで南雲慎平太は去り際、「次の試合でホームランを打つから、君も手術を頑張るんだよ」
と約束した。いわゆる「予告ホームラン」というやつですね。

実際、南雲慎平太はホームランを打った。
しかも、三打席連続ホームランだった。
桐子はその試合のことを大人になっても覚えていて、
10年以上が経って結婚することになった山田亮にそのことを話すと感激し、
仙醍キングスのファンであることを誇りに思った。

監督就任から5年、南雲慎平太は辞任することになった。
最終戦の対戦相手は、東卿ジャイアンツ。
すでにリーグ優勝を決め、日本一へのシリーズ戦に照準を合わせている東卿ジャイアンツと、
最下位の仙醍キングスの試合なのだから、
ここでの勝敗がお互いの成績に重大な影響を与えることはない。
むしろ、南雲慎平太監督最後の試合とも言えるこの最終戦は、
仙醍キングスに花を持たせるのが道理でしょう。
しかし、そんな紳士協定のようなものは全く通用せず、
東卿ジャイアンツが猛攻していた。
その場面の描写として、南雲監督の表情をとらえており、
「口を若干尖らせた、その表情は、なくのを我慢する子供にしか見えない」という表現が、
何とも言えない惨めさや寂寥感を誘い、野球がよくわからない私を同情させたほど。

そんな状況の中、山田桐子は臨月を迎えていた、
テレビで試合を観戦している中、破水をし、病院へ向かう。
病院でも二人はテレビで試合を見ていたが、
やがて山田桐子は分娩室へ向かい、残った山田亮が一人で試合を見つめていた。

試合の最終局面で、仙醍キングス側のベンチに、打球が飛んだ。
バッターの振り遅れたバットが、打球を横に飛ばし、ファウルボールとなったのだ。
ボールはまっすぐ、南雲監督に向かった。
幸いなことにぶつかることはなかったが、それに驚いた南雲監督は体勢を崩し、
綺麗に転び、頭をベンチの端にぶつけた。
実はこの時のことがキッカケで、試合後ホテルに戻ってから、南雲監督は亡くなってしまう。
試合は9回表で、スコアは15対1と大差をつけられていた。
そして、試合結果はもうわかっているというように、
試合終了までを放送することなく、放送時間終了で中継はぶつ切りされた。

こんな仙醍キングスファンにとっては屈辱的と言える状況の中、
山田王求は生まれてきた。
ここまでの屈辱の描き方が本当に凄まじく絶望的で、一気に惹き込まれますよね。
それもこれも、「フェアはファウル」という、
死ぬ人間がいれば、誕生する人間もいるということを伝えたいがため。

「Fair is foul, and foul ia fair」とはシェイクスピアの戯曲「マクベス」で、
冒頭で現れた3人の魔女が言う台詞。
フェアはファウル、ファウルはフェア。
日本だと、「きれいは汚い」「良いは悪い」とか、「光と闇」と訳されることもあるようです。
要するに、「良い」と見えるものでも、魔女からすれば、「悪い」かもしれず、
その反対に、「悪い」ことが、魔女には「良い」ことかもしれない。
物事は見方によって変わる、そういう意味だと山田亮は解釈していました。
これがこの作品のテーマのようなもので、これからの王求の人生につきまとうものとなります。

「マクベス」は南雲慎平太の愛読書で、山田夫妻も繰り返し読んでいたそうですが、
私も読まなくては!!と思いました(笑)

そんな熱狂的な仙醍キングスファンの両親から生まれた王求。
「王求」という名前をつけたのは、父親の方でした。
母親は、「将来この子は仙醍キングスで活躍をする男になるのだから、
王という感じがつかないのはおかしい」と発言したところ、
父親が、「それならば、将来、キングスに求められる存在なのだから、
王に求められる、と書いて、王求はどうだろう」と賛同した。
ただ、奇蹟的なのはこのあと。
出生届に記入してみたところ、王求と横書きで書いた瞬間、
その文字の並びが、「球」という漢字を横に間延びさせたようにも見えることを発見した。
このブログも横書きなので、王求と書き続けていると、段々「球」の変形に見えてきますね。

かくして、これから王求の野球漬けの人生が始まります。
だけど、それは決して順風満帆なものではありませんでした。
それこそ、「マクベス」のように。
3人の魔女が登場したりと、「マクベス」をかたどって進んでいきます。

たくさんあるエピソードの中、印象的だったのは、3歳になった王求が、
父親に連れられて戦隊ヒーロー物のショーを見かけた時のこと。
味方のヒーローがおされている時に、お姉さんが、
「さあ、みんなで応援するよ。せえので、頑張れーって声をかけるよ」
って、あるあるな展開だと思います。

そんな中、王求の父親はこう語る。
「頑張れ、というのは、もともと、我を張れ、ってところから来ているんだ。
我を張り通す。『我を張れ』が変化して、『がんばれ』だ。
自分の考えを押し通せ!ってことかもな」
なるほど。
これが、後の野球のシーンにも関わってくるのですが、感動的でした!


この作品、連載時⇒単行本⇒文庫本となる際に、かなり改稿されているのです。
それが後ほど「完全版」として出版され、それらを読み比べることができるのですが、
「マクベス」との絡ませ方が全く違うのが興味深いです。

また、構成の話をすると、王求の年齢ごとに章立てしているのですが、
その章ごとに語り手が変わります。
その語り手を推察するのも面白い。

個人的には、「十歳」の章で、語り手のクラスメイトがキュリー夫人の伝記を読み、
キュリー夫人の子供の頃の話が載っていて、
そこに、キュリー夫人が何を思ったのかが書いてあることに驚いた、ということに共感しました。
私も幼い頃に同じ疑問をもって、誰か大人に聞いたんじゃなかったかな。
大人になってから偉くなったはずなのに、何で子供の時の心情が、わかるんだろう?って。
そう思ってたのが私だけじゃなくて安心しました。

疑似伝記でありながら、「マクベス」の要素も入った、何とも新感覚な小説。
不思議な力にどんどん惹き込まれていきますよ。



あるキング (徳間文庫)

あるキング (徳間文庫)

  • 作者: 伊坂幸太郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2014/02/28
  • メディア: Kindle版


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A SUMMER BEST

Ayuの夏うたばかりを集めたアルバム。
一時期、Ayuは毎年夏うたをリリースしていて、
気が付けばこんなに曲数があるんだと驚きました!
2枚組で、1枚目はわりとノリノリな曲、
2枚目にはしっとりなバラードが集められています。
アゲアゲな夏も、しんみりな夏も、Ayuにお任せですね。

ほとんど有名な曲ばかりなのですが、新収録曲もちらほら。
TRFの「Happening Here」をカバー。
Ayuらしい、大胆なアレンジになっています。
また、夏といえばavexの夏祭り「a-nation」のテーマソングも。
夏の思い出が蘇る方、たくさんいるのでは?

DVDには、a-nationなど、収録曲のライブでのパフォーマンスが収録されていて、
映像でも追体験できますよ!




A(ロゴ) SUMMER BEST (2枚組ALBUM+DVD)

A(ロゴ) SUMMER BEST (2枚組ALBUM+DVD)

  • アーティスト: 浜崎あゆみ
  • 出版社/メーカー: avex trax
  • 発売日: 2012/08/08
  • メディア: CD


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manu a manu

もっちーの3枚目のソロアルバム。
もっちーらしい、ほっこりした雰囲気に癒されます。


めぐみ
空とか風とか自然とか、身の周りのいろんなものに、
支えられて生きてるんだなぁってことを感じられました。
そういうことを感じられると、
周囲がキラキラ輝いてみえるもんですよね。

HAJIMARI
低音ピアノを中心とした、
個性的なベース音で、
ステップ踏んで踊りたくなる、おしゃれなアレンジ。

美しき麗しき日々
ほっこり、暖かい気持ちになれる曲。
こんな風にゆったりと日々を過ごしていけたらいいなぁ。

雨は徒然に
雨の曲は世の中に数々あれど、こんな音色は初めてかも!
ちょっとメロウな、メリーゴーラウンドを思わせる音色のワルツ。
雨の憂鬱も、こんな表現によるアプローチもあるのね。

やさしくなれたら
時期的にも、甲子園を想像しました。
青春の象徴ですね。
人によって、青春の体験は違うけど、
あの純粋さは失いたくないな、と思ったり。

tokyo hotaru
隅田川流域で行われた、同名のイベントのテーマソング。
もっちーの出身地にも近いのですが、それだけじゃなく、
このイベントの掲げるテーマとか、もっちーにピッタリだなと思いました。
いつか東京で蛍が見られる日がくるのかしら。。。
素敵なイベントなので、いつかまたやればいいのに。

State of mind
全英語詞で、おしゃれなポップに仕上がっていますが、
歌詞は優しい言葉で綴られています。

悲しいときも嬉しいときも
宇崎竜童さん作曲の、メッセージソング。
ちょっとフォークソングっぽい雰囲気があるような。
分かりやすい言葉で、励みになります。

to
使われている楽器が全て優しい音色。
そこに、もっちーのほんわかした歌声。
聞いてて笑顔になるような曲です。

夜明け
明るい希望の光がさしてくる「夜明け」。
開放的な優しいメロディも相まって、
心が開けていくような、晴れ晴れとしたラストを迎えます。



manu a manu (ALBUM+DVD)

manu a manu (ALBUM+DVD)

  • アーティスト: 持田香織
  • 出版社/メーカー: avex trax
  • 発売日: 2012/08/01
  • メディア: CD


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