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D-黄金魔(下)

貴族相手に借金の取り立てをした異色作が完結!
題材が題材だけに、終始、俗っぽいというか、
Dシリーズにしては、かなり珍しい作品だったと思います。
Dの中でのコメディと言ってもいいくらい。

それは文体にも表れていて、
「白川夜船」だとか「吞み助」だとか、
昭和レトロなワードもいくつかありました。
今、流行ってますもんね、昭和レトロ。

Dは一応ライトノベルに分類されるのでしょうが、
読者の年齢層は結構上だと思うので、
ノスタルジーを味わえるのでは(笑)

この世界観を作り出したのは、
間違いなく高利貸のエル爺さんだと思うのですが、
そこに引けをとらない最強キャラが登場しました。
気功師兼貸金業者であるドロテア・マーリンゲン公爵夫人。
「公爵夫人」とある通り、この人は貴族の老婆です。
まさか貴族も金を貸していたとはね。。。
ただ、やっかいなのは、貴族は寿命が長いので、取り立てもしつこい。
もはや期限なんてなく、永遠に取り立てられます。

侯爵夫人は4000年ほど前、
デゾレ・ペンゾルトンという女貴族に、
自分の亭主を籠絡された。
この二人はとんでもない悪政を敷いて、
最終的には中央政府から死刑を言い渡されてしまったのだが、
亭主の方は、女に貢ぐために、なんと人間の高利貸しから借金までしていた。
(4000年も前の話なんで、エル爺さんではないですが、
その頃から、貴族に金を貸す人間がいたんですね!)

亭主は、夫人の宝石にまで手をつけようとした。
盗み出す現場を押さえて、借用書を書かせた。
一京ダラス(もう桁が凄すぎる!)分の宝石を借り受けます、と。
返済期間は1年、夫人は担保を要求すると、
亭主は妾のデゾレ・ペンゾルトンを担保に設定してきた!
もはやわけがわからないが、これで契約は成立し、
やがて全てが破局を迎えたとき、夫人は妾のところへ行って、
金を返すよう迫った。
ところが妾は、いきなり夫人の心臓に後ろから白木の杭を打ちこみ、
自分自身も刺した。
幸い、ほんの数ミリずれて致命傷にはならず、夫人は助かったが、
妾の方は塵と化していた。

夫人は当時、美しさの絶頂だったそうだが、
この事件から復活したところ、年相応の老婆な顔と身体になってしまったらしい。
妾は滅んでしまったものの、踏みつけられっぱなしでは夫人の気が済まない。
滅びた者は生まれ変わる。
その時まで待って、取り立ててやろうと決めた。
なんと質の悪い取り立て屋!
そして、夫人が探していた妾の生まれ変わりというのが、
ヴェレニス侯爵の娘、マチルダだという。

こうして、夫人もエル爺さんと同様、
取り立てる側の仲間(?)として加わりましたが、
この二人の老人パワーが凄まじくて、左手すら影が薄くなってます(笑)

こんなやり取りを見てると、作中で人間の娘・リジアも言ってましたが、
人間も貴族もそんなに変わらないのかもしれない、って思ってしまいますね。
途中、マチルダが、人間の少年ジジと、
白鳥のボートに乗って楽しい時を過ごす場面なんかもあります。

こういう人間と貴族の交わりこそが、神祖が望んだものなのかも!?
そして、この作品にも神祖は関わってきます。
最後にエル爺さんから重要な話も伝えられます。
これって、Dの旅の終着点?と思ってしまうのですが、
あいにく、そんなことなかったかのように現在もDシリーズは続いています。
ただ、Dについての核心をついていることは確かですね。
これがなかなか粋なワードだなぁと思いました。

Dの旅路については、まだまだ読んでいたい。
だけど、私が死ぬまでにDの旅の終わりも見届けたい。
複雑な気持ち。




吸血鬼ハンター(25) D‐黄金魔(下)

吸血鬼ハンター(25) D‐黄金魔(下)

  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2013/02/27
  • メディア: Kindle版


神祖に愛された貴族の居城まであと少しというところで、Dたちの行く手を阻むように忽然と町が現れた。
その町には、数分前まで人々が活動していた形跡があるものの、何者かの手によって一瞬のうちに幽霊町にされてしまったのだ。
そして魔手は一行にも向けられ、彼らの眼の前で操獣師のトーバが消失してしまう。
大きな戦力を欠いたまま貴族の城に乗り込まなくてはならなくなった人間たちの運命は!?
黄金魔編、完結。
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