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D-白魔山(下)

お待たせしました、下巻です。
季節が巡ってしまいましたが、暑い時期に雪山が舞台の物語で、
少しは涼んでいただけたらと(笑)

上巻のレビューを読み返してたら、ほとんど内容には触れてなかったんですね。
なので、今回は多少ネタバレ気味で書いていきます。

上巻のラスト、白魔山にギルゼンの城が再び造営された時、
ビバーク中の一行も捕らえられてしまいました。
ただ一人、寸前に逃げ出したリリアを除いて。

リリアはギルゼンに血を吸われて、別の存在となって再会しました。
ただし、通常の犠牲者とは何かが違う。
貴族の犠牲者はまず例外なく、精神的に支配され、貴族の配下的行動を取る。
ところが稀に例外が存在し、貴族の下僕となりながら、明確に以前の自我を保持していられる犠牲者たち。
身体的?には疑似吸血鬼ではあるが、人間の時と同じ貴族に対する敵意を抱いている者、「半覚醒者」と呼ばれるそうです。
リリアもそんな例外の一人。
ギルゼンに対しても「あの男」と呼んでいました。

さて、バラバラになった一行はというと…
クレイとルリエのコンビは、隣の牢にとらえられていましたが、
謎の影によって逃がされ、一度は城の外に出る。
しかし、クレイは何かやることがあると言って城に戻り、
ルリエもヴェラとダストを探したいと言って戻る。
二人は行動を共にするかと思えば、クレイは上へ行き、ルリエは下へ別れて行くことに。
途中、クレイとルリエは思いもよらない再会をするが、クレイは別ものとなっていた。
それは、ギルゼンが一万年前に捕まえて血を吸った異星人に、クレイも血を吸われていたこと。
どうやらクレイの血を吸った異星人も稀な「半覚醒者」だったようで、
クレイもギルゼンを斃しに向かう。
しかし、パワーアップしたクレイでもギルゼンには敵わず、クレイの望みはルリエに託される。
クレイが山で成し遂げたかったこととは、かつて愛した二人の女の墓標を山の頂上に立てること。
クレイなりに一生懸命愛した女がいたんだなぁ~というのと、
こんな身の上話までして、二人の間に男の友情のようなものが芽生えていたのに驚きました。

こう見えて意志が強くて勇敢なルリエ少年。
「遠回りするのはいい。だが、後ろを見るな。
 見れば後戻りしたくなる。それでは先へ進めんぞ。
 大事なものは常に先にある」
と、父から言われて育ったのです。
その父にも果たして会うことができるのでしょうか。

一方、ルリエが探しに戻ったヴェラとダストのコンビはというと…
二人とも同様に牢にとらえられていたのですが、
負傷したジャンヌが手当をするよう、女医のヴェラを解放する。
疑似貴族であるジャンヌやリリアを手当して以降、ギルゼンの配下の負傷兵を一心不乱に手当していく。
貴族を相手に気丈にも治療していく様は勇敢だが、そこにはドクターとしての好奇心もあったに違いない。

そして、ただならぬ関係を漂わせていたヴェラとダストの関係も明らかに。
二人はかつて夫婦でした。
三年前、村の小学校の子どもたちがこの山に登り、ヴェラも医師として同行した。
その時に山虎に襲われ、大人たちが応戦するも、一人の女の子が犠牲になってしまった。
それが、ヴェラとダストの7歳になる娘でした。
その時も怖くて何もできなかったけど、今回も精神崩壊した時に臆病な面を見せる。
それが本当の姿だといい、見殺しにした当時のことを悔いていました。
二人の間の悲劇は、ここまでずっと尾を引いていたのですが、物語とともに結末を迎えます。

人間たちのドラマがある中、Dはギルゼンの思惑を知ることになる。
ギルゼンは1万年前に不時着したUFOから異星人をつかまえ、ある実験をしていました。
それが吸血鬼と異星人の融合。
不老不死の血を持つ貴族と、異星人の技術の融合です。
その対極の存在がD。
神祖は貴族と人間の血の融合を目指していましたが、その唯一の成功例とされるのがDなのです。
神祖と対抗すべく考えたギルゼンは、その究極として、Dの血を求めたが…。

吸血鬼の物語といえば、中世ヨーロッパの世界が一般的ですが、
こうして異星人なんかが登場してくると、ずっと未来の話なんだなって実感します。
言われてみれば、不老不死の吸血鬼が1万年以上も長らえるなんて、想像に難くないですもんね。
でも、石造りの城だとか、クラシカルな世界観も引き継がれているからこそ、
吸血鬼マニアに愛される作品なのであって、
その矛盾については、貴族の「懐古主義」として解決しているので、不自然じゃなく受け入れられる。
これはもう、Dの読者にはお約束ですね!

それぞれの運命をのせて、物語は衝撃の結末を迎えます。
まだやり残したことがある時、不老不死の血の誘惑に負けてしまうのかな?
貴族となって、死んだ家族が帰ってきたら嬉しいと思うのかな?
不老不死になるかわりに、得られる代償があまりに大きすぎる。
「生命のもうひとつの可能性」とは、なかなか言い難い生き方です。

ここからは私の不純な感想コーナー。
リリアにDの指示通りにさせる為、Dはリリアの血を吸います。
さすがの「半覚醒者」体質も、Dにはかなわない。メロメロになってしまいました。
どうせ吸われるなら、私もDに吸われたいな。
って、吸われる前から骨抜きになってますけども(笑)
あいにくDは、人間の血は吸わないポリシーなんですけどね。

あと、Dがまた奇跡を起こしたよ。
なんとルリエ少年の頭を撫でた!!
純粋に健気で勇気ある少年に心動かされたようです。
少年の行く末を案じているのも意外。
何だかうらやましくて、勝手に興奮してしまいました。
立派なドクターになって、いつかDとまた会えるといいですね。



Dー白魔山 下 (朝日文庫 き 18-29 ソノラマセレクション 吸血鬼ハンター 17)

Dー白魔山 下 (朝日文庫 き 18-29 ソノラマセレクション 吸血鬼ハンター 17)

  • 作者: 菊地 秀行
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2008/01
  • メディア: 文庫


シーラ山の雪に閉ざされた山腹を突き破って出現した城の内部には、城主である最凶の貴族ギルゼン、彼を守護する騎士団と兵士の他にも、恐るべき存在がDを待ち受けていた。
一万年前に不時着してギルゼンに捕獲され、吸血鬼と化した異星人である。
ギルゼンは異星人の超技術を使って、己れを含めた住人もろとも城を時の流れから切り離していたのだった。
甦ったギルゼンの願いは、神祖に対抗する野望の実現である。
それには、Dが必要だった。
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