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蟲師 4

虚繭取り
いろんな土地を転々とする蟲師に文が届く仕組みがわかります。
そういえば、蟲師はどうやって仕事の依頼を受けているのだろう?と疑問でした。
その秘密は繭にあり。
通常の繭は1本の糸でできているが、稀に「玉繭」といって、2匹で2本の糸から作られたものが存在する。
それらをバラして2つの繭に作り直すと、対となる繭ができる。
繭の中に入っているウロさんという蟲は、この2つの繭の間しか行き来できなくなり、
その往来を利用して文を運んでいるという、何ともメルヘンチックなシステム。

その繭を取る仕事をしているのが、綺(あや)という少女。
10歳の時、本家のおじいさまに引き取られ、この仕事をしている。
当時、緒(いと)という姉も一緒に引き取られたが、とある偶然の事故で、この世から姿を消してしまった。
ウロさんが密室間を移動する時に作る虚穴に取り込まれてしまったのだという。
5年経っても戻ってこず、手だてもないまま、綺は緒を待ち続けていた。

そこへ訪れたギンコは驚きの提案をする。
なんと、虚穴の中へ入って見に行ってみようと。
そこで目にした現実とは…。
いくつも穴があるうち、外の世界と繋がってるのは1つしかなく、それがどれだか特定できない。
ましてや緒がどこを通ったかも追うことができない。
蟲たちの世界の恐ろしさを痛感させられ、綺は過失とはいえ自責の念に苛まれるのでした。
やっぱり蟲を甘く見てはいけないのですね。
蟲に悪気はなく、その在り方に沿って存在しているだけなので、人間の方が蟲の性質を理解して扱わないと。

一夜橋
3年前、橋から谷底に落ちた女が、無傷で戻ってきた。
しかしどこか様子がおかしい。
ずっと日向を向いて呆としたまま、言葉も発しないという。

3年前…
ハナは本家からの縁談を断れず、苦しんでいた。
そんな時、ゼンはハナと駆け落ちすることを持ち掛ける。
意を決して橋を渡り、村から出ようとした時、ハナはもろくなった部分から足を踏み外し、そのまま谷底へ。

そして村にはこんな言い伝えもあった。
谷底に落ちたものの戻ってきた者は「谷戻り」といい、その者たちは「一夜橋」が架かる夜に死んでしまう。
ギンコの見立てによると、これらの現象は全て「ニセカズラ」という蟲の仕業だという。
ニセカズラは谷に落ちて死んだ者に寄生し体を乗っ取るが、より日の射すところを求めて移住する。
その移住の現象が「一夜橋」であり、寄生したニセカズラも抜け出ていってしまえば、宿主は死体となる。
だからギンコの説が正しければ、一夜橋がかかる夜に、ハナも死んでしまうことになる。
その一夜橋が架かるのは今年。果たしてハナの運命は?
そして村八分になり、生きる場所を失ったゼンの選択は?
結末はここでは語りませんが、ゼンの出した答えには胸を打たれるものがありました。
人の感情はそうそう割り切れるものではないですよね。

ちなみに、この橋のモデルになった場所が徳島県にあるそうです。

春と嘯く
タイトルありきで出来た話というだけあり、すごく綺麗なストーリーだなと思いました。
これから寒くなって、春が恋しくなる季節にピッタリ。

姉と二人きりで暮らしているミハルは、蟲が見える体質で、どんな蟲でも親しみをもって近づいてくタイプの少年でした。
ただし蟲も扱い方に気を付けないとこちらが害を受けることになり、
ギンコは蟲との正しい向き合い方を種類ごとに教えていくことに。

ミハルは冬になると、姉には理解しがたい行動もとっていました。
ひとりで冬山へ入り、採れるはずのない山菜を採って帰ってきては、そのまま春まで眠り続けるというのです。
話を聞いたギンコは「春まがい」ではないかと見当をつける。
木に咲く花のような姿をした「空吹(うそぶき)」という蟲がいて、
特殊な匂いを出して、冬眠中の動植物の活動を促すのだそうだ。
ギンコが村を離れる前にミハルは冬山へ入り、倒れていたところをギンコに発見された。
春には目覚めるのを知っていたため、ギンコは一度、村を離れる。

1年後、様子を見にギンコが再び訪れると、なんとミハルはまだ目覚めていないというのだった。
早速、調査のためギンコは山へ入る。するとギンコも同じ症状に!!
この先はここでは語りません。
ただ、この話から思ったことは、四季の移ろいのある日本に生きていて、春の訪れは格別なものだな、と。
例えば桜だとか春一番だとか、現実にも春を告げるものはいろいろありますけど、なんだか嬉しくなりますよね。
冬の間に凍えて縮こまっていた身体が一気に目覚めていくような。
どうしても気も弱ってしまうような冬。
さすがのギンコも、冬の家の灯に誘われて、ついつい長居してしまったようです。

籠のなか
竹林から出られず里へ戻れなくなってしまった男・キスケの話。
キスケと行動を共にしている間、ギンコも竹林から外に出ることはできなかったのだが、
キスケと別れた途端、里に抜けることができた。
里に着いて、里の者からキスケに関する妙な噂を聞き、気になったギンコは再び竹林へ。

竹林には白い竹が生えており、実際にそれを目にしたギンコは、「間借り竹」だという。
その竹にまつわる昔話をキスケから聞くことができた。
それによると、この竹林には元々若い夫婦が住んでいたそうだ。
夫婦には長年子が出来ず、夫は家を空けるようになった。
少々変わり者だった女房は、夜な夜な竹林を徘徊するようになった。
ある時、女房が身ごもったというので、怪しんだ夫が後を尾けてみると、女房が白い竹に縋り付いていたという。
そうして生まれた子が、後にキスケの妻となるセツだった。
生まれこそ尋常ではなかったが、その後は普通の子のように育ったセツは、里の子どもたちもよく遊んでいた。
キスケもその中の一人だったが、ある時から、キスケも竹林から出られなくなってしまった。
そうして今に至る、と。

キスケとセツの間にも子がいて、その子もセツと同じように筍の姿で生まれてきた。
それを見たキスケもセツの正体を知って恐れたが、それでもセツに対する思いは変わらなかった。
ギンコによると、セツは蟲と人の間に生まれた子で、「鬼蟲(おにこ)」と呼ぶらしい。
そして、キスケが出られないのは、セツがいつも口にしている水のせいだという。
蟲は体の一部に命令を下し、意思を伝える。
間借り竹の場合、この水を通して、竹林から出させないよう意志を伝えていたのだ。
キスケが竹林を出るためには、完結にいえばこの繋がりを絶つことなのだが…。
それを聞いてしまったセツがとった行動と衝撃の結末が!!

竹というのは竹林一帯が同じ根を持ち、それらすべてでひとつの個、または世代交代する家族だっていうのを、
この話を読んで初めて知りました。
だから尚のこと、間借り竹の意思が伝わりやすかったのかもしれないですね。

草を踏む音
それはまだギンコが蟲師となる前の頃の話。
地主の息子・沢(タク)とワタリのイサザの友情の物語。

ワタリとは、蟲師に蟲の関わってそうな噂とか、光脈筋の変動などの情報を売ることを生業としている者のこと。
ちなみにモデルはサンカという漂泊民だそうです。
当時、沢の一族が守る山には光脈筋があり、毎年、五月雨の頃になるとワタリたちがやってきていた。
山で偶然出会ったワタリのイサザとは、同年代なこともあり、次第によく話すようになった。
ところが沢が教えた話が情報として取り扱われていたことを知り、少なからずショックを覚える。
そして梅雨は明け、ワタリたちは旅立っていった。

その翌年、またワタリたちが山にやってきた。
そんな中、地主である沢の父親が急死した。
土地の所有権をめぐって一族はもめ、結局、親類にみんな取り上げられてしまった。
それを察したのか、山の様子が変わってきているので、土地を離れた方がいいとイサザは告げに来る。
その予告通り、半年後に山は火を噴いた。
今思えば、あれはきっとヌシの交代だったんだなと思う。

この話にギンコがどう関係するのかというと、元々ギンコの噂をイサザたちに教えたのは沢の方だった。
叔父からの又聞きではあったのだが、ふた山超えた町に、白髪で緑の隻眼の子供がいると。
情報を聞いてから実際に会って拾ってきたそうで、ワタリの一味としてギンコもやってきた。
ところが蟲を寄せ付ける体質のギンコは蟲師に引き渡され、そこから蟲師としての道を歩んでいくこととなる。
普段めったに暴かれることのないギンコの生い立ちが、こんな風にして描かれるとは!

やがて時が経ち、沢も立派な大人になった頃、偶然にもギンコは沢の里へやってくる。
イサザからの情報を聞いて。
遠く離れたイサザは沢たちのことを案じていたし、沢も土地を離れなかったという意味では、土地をしっかり守った。
ギンコを介してだけど、お互いの友情が感じられる、イイお話でした。



蟲師 (4)  (アフタヌーンKC)

蟲師 (4) (アフタヌーンKC)

  • 作者: 漆原 友紀
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2003/10/22
  • メディア: コミック



タグ:蟲師
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