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Dr.コトー診療所 7

今回は、大きなエピソードが2つ。
どちらも人生と向き合い、深く考えさせられるきっかけをくれるものでした。


まず、島にやってきた歌手の下江田永時(エイジ)。
全国ツアーの打ち上げ旅行として島に来たのですが、
宿泊場所として事務所の社長から紹介されたのは廃墟同然の別荘でした。
彼は数年前にはヒット曲を出していたものの、今や落ち目となってしまったアーティストなのです。
世間からも事務所からも冷たい目で見られ、自分の置かれてる立場を知るにはちょうどいいと悟るのですが、
そんな彼に与えられた試練はそれだけじゃありませんでした。
これといった娯楽もなく夜歩きをしていたところ、スズメバチに刺され、ひどいアレルギー反応を起こしたのです。
症状は気管にまで及び、このままでは窒息してしまうところでしたが、気管切開することで危険を脱しました。
これで回復!と言いたいところですが、術後、カニューレも抜き、発声の問題は無いはずなのに、声が出ない!!
ここから、声が出せるようになるまでの、本当の意味での治療が始まるのです。

声が出なくなる原因っていろいろありますけど、意外とメンタルによる部分も大きいんですよね。
例えばちょっと乾燥する室内にいた時などの体調への不安からとか、精神的なショックからとか。
声を使う仕事で喉に気を遣っている人ほど敏感な気がします。
エイジさんも歌手なので、気管を切開したことによるショックかな?と思いきや、もっと根本的な問題を抱えていました。
実際には彼は声が出ないフリをしていて、「医療ミスによって声が出なくなった」と話題づくりにしようとしたのです。
自分を売り込む芸能界では、私生活やトラブルさえも使って注目を集めようとするものですが、
やっぱり歌手なら歌で勝負してほしいですよね!
そんな彼を、退院まで付き添ったマネージャー飯田と、デビュー時からのバックバンドのメンバー斉藤はさとします。
「無理することも高望みすることもない。今の自分を表現すればそれでいい。」
今のボロボロの状態の彼にしか書けない曲があるはずで、そのありのままの自分を表現すれば心を打つものが作れるはずだと。
そして、マネージャーの飯田がどれだけエイジの才能に惚れ込んでいるのかを。

改めて、表現者というのは捨て身の仕事なんだなと実感。
自分の身を削ってでも、その痛みから生まれたものにこそ大きな意味がある。
でも一人で痛みを抱えるのは辛くて、そこにファンなどの支えてくれる存在の大きさを感じるものだよね。
エイジの場合はマネージャーという一番身近なところにファンがいたのだから、
表現者として最高の環境に身を置いていると思います。

それから声が出ないフリで、医療ミスをでっち上げられようとも、
実際に声が出せない状況には変わらないとして、
その真の原因を突き止めようとしたコトー先生の懐の深さに感動しました。
医学書にも載ってない大切なことを教えてくれますね。


そしてもう1つのエピソードの舞台は古志木島ではなく北海道。
何でもいつも高額な医療機器を寄付してくださる芦田代議士からの要請で、
「辺地医療の透視図」というシンポジウムに出席するためだそうです。
人前での講演だなんて、コトー先生がいかにも苦手そうなイベントですが;
その会場にて、事件が起きました!
その頃、東京の世田谷では医師達を狙った連続殺人事件が起きていたのですが、
その犯人の由田が表れ、壇上の医師達に向かって発砲したのです!!
駆けつけた警官により狙撃され、瀕死の重傷を負うのですが、
そんな犯人を前に、コトー先生が医師としてとった行動とは…。

これは考えさせられる問題だし、難しいトピックだと思います。
既に3人の命を奪い、生きていても死刑確実な男など、助ける必要などない。
そういう見方もあると思います。
でもそれは誰が決めることなんだろう?
生きている価値があるかどうかなんて、誰が判断するのだろう?
私が思うに、人が生きる意味っていうのは死ぬ時にわかるものだと思うのです。
そこで初めて、その人の人生が価値あるものだったかどうかがわかる。
だからそれまではどうにでも変えることができるのです。
そして「死」は人が与えるものではなく、いわゆる「天命」ってやつが存在すると思ってます。
ところが最近、医学の進歩で「脳死」という概念ができて、人が生死を判断できるようになってしまった。
もちろんメリットもあるけど、未だグレーゾーンな部分もありますよね。
このことが由田の犯行理由にも関わっていて、脳死の複雑さを改めて感じました。
脳死についてはこの先また触れることがありそうなので、今回はこの辺で。

人生で選択を迫られる場面ってたくさんあると思います。
その時の答えが正しかったかどうかもまた、死ぬまでわからないはずです。
ただ医者の場合、人の命にかかわる選択になる。
でも短絡的な答えを出して終わらせるのではなく、やれるだけのことはやってほしいと思う。
術後の「手を尽くしました」にウソがないようにしてほしい。

今回、コトー先生と初めて出会い、考え方で対立する江葉都先生。
この先生がこういう態度をとる理由はあるようで、この先また語る機会があるでしょう。



Dr.コトー診療所 (7) (ヤングサンデーコミックス)

Dr.コトー診療所 (7) (ヤングサンデーコミックス)

  • 作者: 山田 貴敏
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2002/09/05
  • メディア: コミック


絶海の孤島・古志木島の小さな診療所で
数々の難手術を成功させるDr.コトーこと五島健助。
離島医療に関するシンポジウムに参加することになった彼は空路、北海道へ。
なんとその会場に、猟銃を持った男が現れ医師達に向かって発砲。
駆けつけた警官により狙撃され、瀕死の重傷を負う。
そんな男の命なんて、ほっとけばいい……
殺伐とした空気の中、コトーは一人、オペ室に向かう!
奇跡と感動の離島医療物語。
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