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D-昏い夜想曲

1冊で3つのお話が読める!とってもお得。
せっかくなので、作品ごとにレビューを書いていきたいと思います。


「D-昏い夜想曲」
本のタイトルにもなっている作品。
夜想曲(ノクターン)
夜の世界に生きる者たちにピッタリで、なんて綺麗な表現だろうって思いました。
血を吸うのではなく、歌を歌い続けた吸血鬼の話。
その歌を聞いた者は必ず魅了されるというのは、どんな歌声なのか聞いてみたいですね。

気になったDのセリフ。
「思い返すということ、覚えているということは、そうするものたちにとってのみ意味がある。
知ってることでも、学ぶことでもなく、古のものをただ覚えていること。
それが『礼』というものかも知れん」
これは以前、風立ちて“D”という作品でも、似たようなセリフを取り上げた気がするのですが、
Dの根底に通じるものは、滅び行く者に対するこんな精神なのかもしれないですね。

この作品、結末は賛否両論あると思います。
結局ライはどうなったのか?アムネやその周囲の人たちは??
その点は、各自で読んでみてください。


「D-想秋譜」
秋は実り多い季節で、また感傷的な気分にもなりやすくて…私もとっても好きな季節です。
そんな秋がDの世界ではこんな風に表現されるんだなぁ、と感動してしまいました。
ドレス姿の貴族や、Dの優美さがまた似合う!
ロマンチックな世界観が十分に引き出せた作品だと思います。

とはいえ、やっぱり残虐性はあるわけで。
一見、素敵な秋を迎える村で、若い娘が吸血鬼の生贄に捧げられるという習慣があったのです。
Dの世界において、どこの村でも大抵、村長はろくでなしですね(笑)
生贄として選ばれてしまったセシル、救い出そうとする恋人のライル。
ライルは血筋の割に、潔くてイイ奴だ!
秋の恋もいいですなぁ~。

話がそれてしまいましたが、この作品も意外な結末が待っています。
秋にはやっぱる切ないストーリーが似合うのですかねぇ。
今の時期みたいな、秋の夜長にピッタリな作品です。


「D-戦鬼伝」
貴族に作られた戦闘士たちの、時を越えた戦い。
永きに渡り、相手を待ち続けた巨人と、未だ覚醒しない少女。
二人とも自分が何のために生まれ、本当は何者であるかを知らない。
ただ運命に導かれるままに…。

一見、平凡な農家の娘に見えるライア。
彼女には自分自身も気がついてない姿があった。
村人からは気味悪がられ、父親はアル中にまでなってしまった。
一方、こちらは明らかに貴族に作られた、名もなき巨人。
彼は自分のことをダイナスと名乗った。
その体格に比例してなのか、気持ちいいほど豪快で、憎めない存在である。

この作品のDは何だかいつもより優しい気がします
いつものように口数は少ないけど。
何も知らないライアに悟られないよう口裏を合わせたり、
普通の人間のままでいられる方法はないかと調べたり。
驚くべきなのは、今回、誰からも依頼を受けてないこと!
この村に来たいきさつはわからないけど、今作の中で、依頼を受けているシーンや、雇い主と思われる人物は登場しません。見落としじゃなければ…。
Dが依頼もなしにここまで動くとは珍しい。
もしかしたら、貴族が人間の運命に手を加えたことへの罪悪感があるのかな?


***
というわけで、季節も場所も全く違うシチュエーションでの作品集でした。
旅物語ならではですね♪
いずれもじっくり浸れて、しんみりできるので、秋の夜長に是非★
ところで、3作ともに、メインとなる人物の名前に「ライ」がついてるのは偶然でしょうか?



D-昏い夜想曲 新版 (朝日文庫 き 18-9 ソノラマセレクション 吸血鬼ハンター 別巻)

D-昏い夜想曲 新版 (朝日文庫 き 18-9 ソノラマセレクション 吸血鬼ハンター 別巻)

  • 作者: 菊地 秀行
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社出版局
  • 発売日: 2008/01
  • メディア: 文庫


D、三人の戦闘士、そしてライがアニスの村に着いた夜、二十年ぶりに貴族の館に灯がともり、伝説の歌が流れ出た。
かつて貴族が村人を招き寄せるために作ったという、聴く者の心を捉えて離さぬ魔性の歌が。
表題作「D-昏い夜想曲」の他、「D-想秋譜」「D-戦鬼伝」の三作品を収録し、昼と夜二つの世界の狭間を歩むDの孤独な戦いを鮮やかに描く、待望の傑作中編集!
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