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夢なりし“D”

醒めない夢を見続けるということが果たして幸せなのか?
吸血鬼と人間が永遠に共存できるという平和な夢物語。
終わらない舞踏会なんて幻想的でロマンチックですよね。
そんな夢見る少女が犠牲になってしまいました…

17歳の少女シヴィルは、とある吸血鬼に襲われ、眠らされ続けています。
年もとらず。いつまでも夢見がちなお年頃のままで。
幸せな夢なら見せ続けてあげたい。
良い夢であればあるほど、夢だって気がついた時のショックが大きく、寝覚めも悪いもの。
今回の夢は個人レベルではなく、大きくなりすぎてしまいました。
いたいけな少女が背負うには大きすぎる。あとは本人の意思次第。

知らない方がいいこと」はいっぱいある。
信じてた人が、本当は別の人のことを思っているとか。
そんな時、「夢であればいいのに」なんて思う。
いい夢を見てるときは「夢なら醒めないで」って思う。
夢の中でならどんな人のエゴも叶う。
夢は心の拠り所であり、夢を操作するなんて、禁忌の業なのではないか、とも思った。
人の寝言に干渉してはいけないっていうのも、あながち嘘じゃないかもね。

個人的なことですが、Dがナンに向かって「ん?」って聞き返したのが意外で、羨ましい!!
こんなセリフ言うような人じゃないもの!!
ナンは他の人より多く、夢の中でDを見たって主張してるけど、
それで特別に見られたいっていう気持、ちょっとわかるな。
Dにとってはどうってことないことだろうけどね。

ここからはシェルドン婆さんのセリフを引用。
「人間てのは、この辺に眼に見えない鎖を山ほど引きずってるものなのさ。
その端は地面にくっついて、二、三キロは歩けるけど、そっから先はどうしても行けない。
鎖の名前は『家庭』だったり、『財産』だったり、『恋人』や『憶い出』って言う場合もあるさ。
若いうちは、地面から引っこ抜いてうろつけるけど、10年20年と経つうちに、鎖はもっと太く、もっと多くなる。
そうなれば、後は適当なところに腰を下ろすしかないのさ(以下略)」
Dもいつか腰を落ち着ける場所ができるのかな?
Dは何歳なのかわからないけど。

このセリフ、私にも結構ズシッと響きました。
いい歳して、地に足ついてない生き方だもんなぁ…。

いろんな意味で眼の覚める一冊。
寝覚めがいいか悪いかはその人次第☆


夢なりし“D” 新版 (朝日文庫 き 18-5 ソノラマセレクション 吸血鬼ハンター 5)

夢なりし“D” 新版 (朝日文庫 き 18-5 ソノラマセレクション 吸血鬼ハンター 5)

  • 作者: 菊地 秀行
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社出版局
  • 発売日: 2008/01
  • メディア: 文庫

招かれた辺境の村へ向かう途中、Dは繰り返し一人の少女の夢を見た。
夢の中で少女はいつも、古びた館で青い光を浴びて踊っている。
少女は、Dが向かう村で貴族の口づけを受けて以来、三十年間眠り続けているシヴィルだった。
一方村では、すべての村人がDの夢を見、平穏な生活が崩される予感に身を震わせていた。
奇怪な夢の交錯を知らず、Dは刺客が待ち受ける村に入った。
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