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D-死街譚

今回は「移動街区」という閉ざされた空間でのお話。
こんなところに吸血鬼が出たらもう大パニック!!
そんな閉鎖社会の人たちの描写もうまく描けています。
外からの刺激には滅法弱いのです。

招かれたDは、言わば他所者招いたくせにねぇ
他にも他所者扱いされる男たちがいるのですが、とにかくこの人たちはアツイ。
Dの傍に男たちが寄ってくるのは珍しいこと。
そしてDとの温度差が、いい味出してます。

1人目の男:ジョン・M・ブラッサリー・プルート八世
略すなって言うからあえてフルネームで。面倒なので、以下「プルート八世」で呼びます。
Dが移動街区に乗り込む前に偶然出会った男。
放射能汚染の少女を助けるために、Dと一緒に移動街区に乗り込むことになります。
これは強烈なキャラですよ。Dも苦笑い。
強烈な個性のせいで何してるのか謎な人だけど、この男の行動にも注目。
ただの陽気なおじさんではありません。

2人目の男:ツルギ医師
Dたちよりも先に乗り込んでいた巡回医師。
巡回医師なので、この街の人ではありません。
この人の熱意はスゴイ。いいお医者さんだよ。
どうやらあの人と関係があるようで。
Dシリーズはあまり過去作とのリンクがないから、こういうのは貴重です。

それから、この作品にはもう一つの「閉鎖」がある。
放射能汚染によって声を耳を失った少女、ローリイ。
プルート八世によって救われた少女だが、彼女の生きる世界は閉じた世界である。
生活の中の物音や誰かの声を聞くこともできなければ、自分の気持ちを叫ぶこともできない。
そんなローリイをDが珍しく(?)励ました。
「失くしたものは取り戻せないが、新しいものを身につけることはできる」
滅ぶだけの吸血鬼に対して、ローリイにはまだ未来がある。
この一言は何気に深い!!

読めば読むほど深まっていく一作。


D-死街譚 新版 (朝日文庫 き 18-4 ソノラマセレクション 吸血鬼ハンター 4)

D-死街譚 新版 (朝日文庫 き 18-4 ソノラマセレクション 吸血鬼ハンター 4)

  • 作者: 菊地 秀行
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社出版局
  • 発売日: 2008/01
  • メディア: 文庫


毎時20キロの巡航速度で辺境の大平原の上空を滑走するその「街」は、外部との接触を一切断った、限りなく平穏な移動街区であった。
住民は、辺境の荒野に生きる人々がさらされる大自然の脅威とも、飢えとも、妖魔の跳梁とも無縁の生活を送っていた。
だが「街」は今、重大な危機にさらされていた。
「街」に吸血鬼が出現したのだ。
依頼を受けて、Dは死臭のたちこめる「街」に入った。
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