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D-魔性馬車

今回の舞台は乗合馬車。
Dの世界観って、中世貴族のゴシックな感じが流れているのですが、
西部劇の要素もあるのです。
街道の途中に現れる居酒屋とか、治安官(西部劇だと保安官かな?)なんて、
西部劇に登場するアイテムそのものですよね。
西部劇特有のあのクールな寂寥感も漂う。
だけどDが生きるのは、遠い未来のお話なのです。
SFと中世貴族文化と西部劇だなんて、実は物凄いコラボした世界観だったんだ!
と改めて気づかされます。

さて、今回の舞台は西部劇で言うところの「駅馬車」が舞台。
飛行体とか高度な技術も発達しているところの、
あえての「馬車」というのが、何とも趣がありますよね。

ワケありの人々が乗り合わせるのですが、全員面識はない。
そこに現れる人間模様がまた、物語に惹きこませるのです。
クールそうに見えて、実は人情モノ。それがシリーズの魅力でもあります。

乗り合わせた乗客は以下のとおり。
●クレア・シャルゼン(27歳、酒場女)
●ハーマン・ブリッグス(51歳、鍛冶屋)
●JJ(36歳、貴族ハンター)

そこにいわくつきの乗客が。
シニスター公爵の執事として寵愛されていたドルレアック。
彼に付き添う女性治安官のルイーズ・キルクと、助手のベルボとランツ。
それから新たに助手として採用したアル・ゼメキス(21歳、農夫)。

この合計8名による道中の物語です。
Dは最初からこの馬車には載っていません。
いつものように、遅れて現れます。

何と言っても気になる乗客はドルレアック。
10年以上、貴族に仕えていて、血を吸われているかどうかはまだ定かではない。
その存在に『都』の貴族研究学会が興味を持ったようで、
ルイーズたちにより、『都』まで運ばれることになった。
その扱いは檻に入れられ、まるで猛獣のようであった。

出発して直後、ルイーズからこんな宣告がある。
ルイーズたちの本来の任務は、ドルレアックの護送に他ならず、
この先、危険な土地を通過して行く上で、命の危機にさらされるような場合、
乗り合わせた客たちを守りきれるとは限らないこと。
任務であるドルレアックを守ることが優先されること。
心底納得できるとは言い難いが、さすがは辺境の人間、覚悟はできていた。

案の定、道中は平穏ではなかった。
町を出て貴族の領地へ入ってから、JJが怪しい生物を仕留める。
それは人間と蝙蝠を合体させた生物だった。
人間の知能と狡猾さ、蝙蝠の飛翔能力を組み合わせ、
しかも、貴族の吸血能力を持たせてある。
つまり、尾けられ、監視されているということだ。
恐らく、件のシニスター公爵に。

馬車はやがて、「貴族のアトリエ」と呼ばれるエリアに差し掛かった。
ここは昔々、宇宙からエイリアン・ビーイングが襲来したときに、
貴族は彫刻中の像に生命を吹き込んで、最前線の兵士として使ったらしい。
その結果、一応貴族が勝ったことになっていて、
今もこの星の生命体が生きている、ということになっているが。

Dと合流したのもこのポイント。
人影にいち早く気づいたのはJJでした。
JJといえば実は貴族ハンターで、Dと同業者!
Dのことを知らないはずがない。
ただし、JJ本人曰く現役ではなく、貴族ハンターとして致命的なキズを負っているとか。
Dに対し、静かな羨望または絶望的な悔しさが、ところどころに滲んでいます。

そういう心の弱みにつけ込む心理戦も繰り広げられる。
一例として、夢を使った攻撃があるのですが、Dの世界で夢が使われることはよくあるかも。

無事ではない道中を経て、馬車は無事に目的地にたどり着けるのか。
ドルレアックや人々はどうなるのか。
何と言っても、Dの目的は何なのか。
最後まで目が離せません。


吸血鬼ハンター 21 D-魔性馬車 (朝日文庫ソノラマセレクション)

吸血鬼ハンター 21 D-魔性馬車 (朝日文庫ソノラマセレクション)

  • 作者: 菊地 秀行
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2009/09/18
  • メディア: 文庫


捕えられた貴族の下僕の護送を命じられた女治安官は、三人の助手とともに、ハンターや酒場女、移動鍛冶屋らが乗り合わせる馬車で『都』へと向かった。
街道は途中、下僕の主、シニスター公爵の領地を通る。
下僕奪還を図る公爵が送った人面翼獣に惑わされて迷い込んだ貴族の隠れ墓地で一行が出会ったのは、Dであった。
いかなる依頼を受けているのか、Dは馬車に同乗し、一行と危険な旅を共にしはじめた。
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