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蟲師 6

天辺の糸
吹は清志朗の末の妹の子守として雇われていたが、
尾っぽのついた箒星を見たなど、時折不可思議な事を話し、
里には吹のことを白い目で見る者もいたが、
いつしか清志朗は、そんな吹に惹かれていた。

ある日、吹は空から糸が垂れてると言って、宙をつかむ仕草をすると、
その瞬間、吹はぽーんと宙に舞い上がり、空の高みでフッと消えてしまったという。
それ以来、里の者たち皆で捜し回っても、見つかりませんでした。

一方、吹は山でたまたま通りかかったギンコに助けられていました。
当時の吹は何も覚えてなく、他のヒトには姿が見えない存在となっていました。
ギンコの看病(?)もあってか、ある時、吹の記憶が戻り、どうにか里に戻ってくることができました。

ギンコ曰く、これは「天辺草」という蟲のしわざ。
それは空のはるか高みに棲む蟲で、普段は尾の付いた風船のような姿をして、光脈筋の上空を巡っている。
空中の微小な光を帯びた蟲を食って生きていて、夜には蛇行する星のようにも見える。
吹が見た箒星というのは、この事ですね!
どうやら吹は蟲が見える性質のようです。
その天辺草が稀に上空のエサに不足すると、釣り糸のごとく地平近くまで触手を伸ばしてくる。
それが糸のように見えるのだが、動物がそれに触れると、一旦上空に巻き上げるも呑み込めず、
上空近くで放り出してしまう。
それでたいがいは地面に落ちて命を落とすが、吹は運良く木に引っ掛かって助かったと。
しかし飲み込まれかけたのか、吹は強く蟲の気を帯びてしまい、ヒトの目には見えないモノになっていた。
ギンコの薬でだいぶ回復できたが、まだ完全ではなく、手に残った糸で空につながってる不安定な状態のまま。
吹がヒトに戻るために必要なのは、薬だけじゃなく、自身のヒトでいたいという思いだという。
あとは清志朗に託し、ギンコは里を去ります。

吹が里へ戻ってきたとき、清志朗は公開プロポーズをしました。
ただし、里の者には、吹が子守に疲れて逃げ出したと思われていて、父親も二人を許しません。
ギンコが去った後も説得を重ねる日が続き、吹は肩身の狭い思いをし続けた。
そうするうち、吹の体は徐々に軽くなってゆき、風が吹けば宙に舞うようになっていった。
そして日が経つにつれ、吹は地表に留まっていられなくなった。
そんなある日、吹がまた姿を消したことを報せる文が、ギンコに届く。

事情を聞いたギンコによると、原因は清志朗にあると。
清志朗が今の吹を受け入れられずにいるから、清志朗が吹を否定したから、
吹はヒトの姿を保てなくなったんだと。
家に招かれたギンコ曰く、「見えずとも、吹は今もここにいる」。
吹をこのまま失いたくなければ受け入れてやるようにと諭す。

その後、急遽執り行われた祝言には、花嫁である吹の姿はなく、
それでもなお清志朗は、吹がまるでそこにいるかの如くに振る舞った。
そんな姿を見て人々は、清志朗までおかしくなってしまったのではないかとささやいたが、
清志朗は、姿の見えない吹に語りかけ続けた。
やがて、吹の姿がまた見えるようになった、という話。
この類のお話はよく民話にもあって、「神隠し」って言われる類のお話だと思うんですけど、
もしかしたらよく言われる「神隠し」も、何らかの理由で姿が見えなくなっているだけで、
本当はすぐ近くにいて、その存在を信じ受け入れていれば、やがて姿をまた現すんじゃないか?なんて思ったりしました。

囀る貝
雨の浜でギンコが耳にしたのは、鳥の群れて鳴くような声。
ただし、鳥の姿はどこにもなく…。
それは「貝の唄」といい、唄っているのは貝殻の中に棲む蟲。
ヤドカリドリとかサエズリガイとか言って、普段は海上を飛び回り藻くずなんかを喰ってるモノだが、
海で異変を察すると浜へ上がり、貝の殻に閉じこもって災いの去るのを待つ。
そして小さな声で鳴き続け、仲間を陸へ呼ぶという。
この凶兆に気づいたギンコは、近くの村の者に備えを呼びかけておいた方がいいと忠告するが…。

「貝の唄」を耳元で聞いてしまったという少女と出会う。
貝の唄を耳の間近で聞いてしまうと、ヒトは声の出し方を忘れてしまう。
治療法は、毎日ヒトの声を聞いていれば、じき思い出すという。
少女の名前はミナ。父と二人、村人とは離れ、崖の上で暮らし、誰とも交流しないで生きていた。

ギンコは崖の二人だけでなく、村の者にも忠告に行く。
そこで、過去にあったむごい事件の事を聞いた。

もう十年も前、網元の乗ってた舟で海女が鱶に喰われた。
引き上げるのが間に合わず、海が血で真っ赤になって…。
その海女というのがミナの母親で、夫の砂吉はそれきり網子をやめて、
娘とふたりっきりで、崖の方で漁をしているそうだ。
網元は先に自分の女房を引き上げたというが…。
それから、網元は養殖に取り組みだしたという。

そして、貝の唄が止むと、赤潮になった!
せっかく順調に育ってきつつあった養殖の魚も全てダメになってしまった...
赤潮も引いた頃、海人漁を再開させようとしていたが、
赤潮の後は毒を持つ貝が出ると、砂吉が止めに入る。
網元が途方に暮れていると、砂吉は、ミナが見つけた真珠を渡す。
これはささやかな希望となるだろう。
こうして、砂吉と網元とのわだかまりも解け、親子はまた村で世話になることとなる。
村で大勢のヒトの声を聞いていれば、ミナの声も戻るだろう。

貝から「波の音」がするっていうのは知ってますが、言われてみればやってみたことなかった!
なかなか海に行ったりしないからね…。
いつか海に行ったら、真っ先にやりたいです!!

夜を撫でる手
ギンコが山で漁師らしき人物に狩られそうになる。
その翌日、精のつくものでも食べようかと、干し肉を探していると、
少し腐ったような臭いのする肉を売る少年に出会う。
新しいものを分けてもらえないかと交渉すると、家についてくるよう促された。

少年・卯介が家に入り、兄の辰に声をかけると、
確かに今朝捌いたばかりだという肉がたくさん並んでいたが、いずれも独特な臭いがしていた。
ケチをつけたわけではないが、今すぐ狩ってきてやる、と出ていく。
ギンコが後をつけていくと、その狩りの仕方も独特だった!

何も持たずに意のままに獲物を狩る手。
掌に眼玉のようなあざがあるのは、腐酒(ふき)というモノに冒されてる印だという。
腐酒というのは、生命の素たるモノである光酒の腐れてしまったモノ。
本来、成るはずの蟲と成れず、赤い泥状となり地下水から地上に湧き出る。
果実酒のような匂いがするが毒性があり、高い濃度で口にすれば死に至る。
だがごく稀に、毒に耐える体質の者がある。
腐酒単体には意思もなく、ただ更なる腐敗を待つだけのモノだが、
動物の体内に入り、血に紛れると命を得、宿主もまた特殊な力を得る。
甘い匂いを掌から出し、獲物を引き付け酔わせ、たやすく狩りをするのは、辰が得た力。
それは血を介して子々孫々まで伝わってゆくが、辰のように力を得る者はごくわずか。
力を得なかった者は、毒のため長くは生きられない。
どうやら弟の卯介は、力を得られず、病に苦しんでいるようだ。
治療法は光酒を一定量飲めば腐酒は消滅する。
今は手持ちが足りないので、ギンコが調達してくることに。
ただし、ギンコ曰く、治療が必要なのは弟だけでなく、兄の辰もだという。。。

ひと月後、ギンコが光酒を届けに戻ると、辰の行動はますます異常さを増していた。
辰は余分な狩りをするようになったが、それは父の最期とよく似ているという。
その父親はその後、体の向こうが透けて見えるようになり、やがて消えてなくなってしまっていた…。
ギンコによると、腐酒の侵食が進み、やがて体を完全に乗っ取られる=完全に蟲の側に行ってしまうのだ。
父親は死んだわけじゃなく、実体をなくし、心もなくして、今も山を彷徨っているはずだという。
このままでは辰も父親と同じ結末を迎えてします!早く光酒を飲ませないと…!!
この続きは本編にて。

前にもこのようなエピソードがありましたが、所詮ヒトが山の王となるなんで、無理な話なんですよ。

雪の下
とある雪深い土地を訪れたギンコ。
この辺りの雪の中には、「雪蟲」と言って異形のモノが多く紛れ込んでいるとのことで、早速ギンコもスケッチを始める。
例えば「雪ならし」という動物の足跡に棲みつく蟲はがいつが、この蟲が多い所ではたちまち足跡が消えてしまう。
狩りや人探しをするには困りものだ。
また「雪団子蟲」は、雪の上を転がって雪玉を作って移動する蟲で、
雪玉が大きくなりすぎるとそこらの木にぶつかって身を軽くするが、
木のない所で出くわすと、追っかけてきてぶつかられる事もある。

中でもいちばん珍しいのが「常雪蟲」。
群れで行動して動物の個体を特定してまとわりつく。
そしてチクチクと皮膚を刺して体温を少しずつ奪う。
それでとりつかれた個体の周辺には、いつも雪が降っているように見える。
この現象に心あたりがあるという妙は、その人物の家でギンコを案内する。

その人物とは、妙の友人・トキ。
この冬の初めに妹を湖で亡くしてから、トキの周りにだけいつも雪が降るようになって、
家も雪に埋もれてしまったという。

実際にトキに話を聞くと、湖に落ちたはずの妹が戻ってきたのかもしれないと戸を開けると、
雪が体の中に吹き込んだ気がして、それ以来温かいものに近づけなくなって、
暖かくすると皮膚が焼けるように痛むという。
そして、寒さや冷たさは全く感じなくなったと。
ギンコが手に触れてみると冷たくて、人肌程度でも熱いと言った。
その皮膚は白くなって凍傷を起こしかけていて、たとえ感覚はなくとも体は傷んでる証拠。
温めないと今に手足を失ってしまう…。
感覚を惑わされているだけで、本当に火傷したりしないと説得するのですが聞かず、
トキは魚を捕りに出かけてしまいました。

湖の真ん中で、トキは妹のサチが湖に落ちた時のことを思い出していた。
呆っと湖の中を眺めていると、トキもまた湖の中に落ちてしまう!!
みんなで探していると、湖の一点だけ雪が降っているところがあり、その下にトキがいるのだとわかる。
ただしその辺りは水深が深く、陽も落ちたので、あきらめかけていた。
その夜、里はひどく冷え込み、湖は一夜のうちに厚い氷で覆われた。

その翌日の夜、トキが家に戻ってきた!!
しかし、凍傷を負った体を温めようとしたらひどく熱がって、また出ていってしまったという。
手遅れになる前に手分けして探すことに。果たして!?

全てのきっかけとなった兄妹の会話が冒頭に描かれているのですが、この話がすごく好きで。
サチ:「みすうみに落ちたら雪はどうなるの?」
トキ:「溶けて湖の水になるんだよ」
サチ:「土の上に落ちればいいのにね」
トキ:「雪は自分じゃ決められないんだよ」
サチ:「かわいそうね…」
トキ:「湖が凍ったらその上に積もるよ」…

この発想がもうかわいくてかわいくて。
雪のお話と言ったら、今だと「アナ雪」ですね!

野末の宴
一人の蔵人が、かつて父に教えられた酒の味を目指していた。
その父は隣の村から帰る途中に道に迷って、ある奇妙な宴に紛れ込んだ。
その時に酌み交わされた酒は、黄金色に輝いていたという。

何年も経ち、今度は息子が、病で床に臥せた父の後を継いでいた。
ある日、息子も全く同じ体験をする。
道に迷って紛れ込んだ宴は蟲師たちのものだった。
蔵人も自分の蔵の酒を持ち込んだが、すぐにニセモノだとバレてしまう!

蟲師が持っていたのは光酒。
度々登場する蟲師の必需品ですね。
でもヒトがどんなに真似しようとしても、決して同じものを作ることはできない。

ただし、蔵人が持っていた今年の酒は、それにかなり近いものができたようです。
その成果は光酒だけを好む蟲さえも騙せるほど。
ギンコの推測によると、酵母のかわりに吸蜜糖という蟲をつかったのではないかと。
しかし、酔うと蟲が見える酒なんて無駄な騒ぎになりそうなので、世に出すのはやめさせることに。
そのかわり、蟲師たちの間で流通することになりました。

それ以来、蔵人は、また一から酒を造ることに。
酒造りは本当に奥が深いですね。

ところで、少しだけ登場するワタリのイサザとは、実は前にも登場した懐かしい人物です。
ギンコが蟲師になる前からの縁で、忘れてた人は4巻を読んで復習しましょう♪



蟲師 (6) (アフタヌーンKC)

蟲師 (6) (アフタヌーンKC)

  • 作者: 漆原 友紀
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/06/23
  • メディア: コミック



タグ:蟲師
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