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Every Best Single ~COMPLETE~

ELT初のオールタイムベストは、全シングル曲49曲+ボーナストラックの計50曲、
4枚組の大ボリューム!
1996年のデビューから、13年分の歴史が詰まっています。

曲順は時系列順になっていて、
五十嵐さん完全プロデュース時代から始まり、
五十嵐さんが脱退して、セルフプロデュースな期間を経て、
最後には五十嵐さんと再会を果たすのが、何とも感慨深いのです。

アルバム初収録となった曲は、
「あたらしい日々」「黄金の月」「DREAM GOES ON」「冷たい雨」

「あたらしい日々」はドラマ「シバトラ」の主題歌でした。
このドラマには藤木さんが出ていて、金髪姿が衝撃だったのですが、
めったに見られないワイルドな兄貴分な役柄も新鮮でした。

「黄金の月」はもっちーの作詞・作曲。
五十嵐さんプロデュース時代から考えると、いろんな経験した賜物だなって思います。

そして「DREAM GOES ON」と「冷たい雨」は、
再会を果たした五十嵐さんプロデュースの曲。
デビュー時と違うのは、もっちーが作詞した歌詞に、五十嵐さんが作曲してるところ。
サウンドには五十嵐さんのテイストが残っていて、懐かしさも味わえました。

ジャケットは「チェルシー キャンディー」のパッケージとのコラボ。
チェルシーは昔よく食べたなぁ。


Every Best Singles ‾Complete‾【通常盤】

Every Best Singles ‾Complete‾【通常盤】

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: エイベックス・エンタテインメント
  • 発売日: 2009/12/23
  • メディア: CD


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Past<Future

「全てを空にして新しいスタートを切りたい」という決意から、
「自らの作品を自ら打ち壊すことによって新しい作品を生み、新しい時代に突入する」
というコンセプトのもと制作されました。
前年リリースのベストアルバム『BEST FICTION』のビジュアルを自ら破るジャケットが、
衝撃的で話題になりました。
なので、アルバムタイトルには「過去よりも大きな未来」という意味が込められています。

このコンセプトからして既にカッコイイこの作品は、
最高にクールで、安室ちゃんの心意気を感じる1枚です。

DVDには、新曲4曲を含む6曲のミュージック・ビデオを収録しています。

FAST CAR
キャッチ―なイントロで始まるリード曲。
出だしからカッコよくて、いきなりかましてくれたなって感じです。
MVは、「ヴィダルサスーン」第3弾のキャンペーンテーマでもある
中世ブルジョワゴージャスの世界をモチーフに制作されました。
扇を使ったパフォーマンスにはうっとりします。

COPY THAT
自身出演のCM「プレミアム ヴィダルサスーン」のキャンペーンソングでした。
内容はまるでオフィスの場面が浮かんでしまうような、コミカルな歌詞。
安室ちゃんはまさにスーパーウーマンで、働く女性として憧れの存在です。

LOVE GAME
恋愛の駆け引きを、ボクシングの試合になぞらえた面白い曲。
いろんな作戦に、ボクシングの技がオーバーラップするのですが、
そのたとえが、どれをとってもお見事!です。
また、じっくりと試合を進めているような雰囲気の曲もカッコイイ。
そんな曲に合わせて、MVではクールなダンスバトルが見られます。

Bad Habit
ワールドワイドな楽曲提供・コラボを次々に実現させている
多国籍コンポーザー・プロデューサー集団「Phrased Differently」が制作。
海外も認める安室ちゃんだからこそこなせるパフォーマンスだと思います。

Steal my Night
クールに誘ってきます。
こんなカッコイイお姉さんなら、女の私でも参ってしまう(笑)

FIRST TIMER feat.DOMERMAN INC
DOBERMAN INCとのコラボレーションで、
クールな安室ちゃんとも相性バッチリ!
言葉遊びが面白いラップも聞きどころです。

WILD
楽曲プロデュースは、おなじみのT.Kura・michicoコンピに依頼。
「コカ・コーラ ゼロ」のキャンペーンテーマである「WILD HEALTH」と、
自身の考えていた方向性がマッチし、そのイメージから制作されました。
裏テーマは「少子化対策」なんだそうです。
なかなか言いづらいことも、カッコよく歌ってくれています。
MVはブラックに統一された、SFの世界です。

Dr.
「プレミアム ヴィダルサスーン」のキャンペーンとのタイアップ曲。
バレエ音楽「ボレロ」を素材にしたオペラパートや、
エレクトロ、テクノ、R&Bなどをミクスチャーした曲。
クルクルと曲調が変わるのが表情豊かで、演劇のようです。
楽曲プロデュースは、おなじみのNao'ymtさん。
CMのテーマである「ブルジョワ・ゴージャス」に沿い、
安室ちゃん自身の提案によりオペラパートが導入されました。
タイトルや曲の世界観は、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』からヒントを得ています。

MVは自身初となるフルアニメーションになっていて、
「時空を超えて世界平和のメッセージを伝える」というストーリーのSF作品になっています。

Shut Up
ロックと融合した、超絶カッコイイ曲です!
もう何も見えないくらい、圧倒的にカッコイイ。
こんな風に自分を通して生きてみたい!

MY LOVE
こちらも「プレミアム ヴィダルサスーン」のキャンペーンソング。
クールさとは打って変わって、安室ちゃんのスイートな声も魅力的。
LOVEがいっぱいの楽曲。

The Meaning Of Us
久々のバラード曲。
透き通るようなピアノとR&B仕込みの歌唱力の見事な融合。
安室ちゃんならではのバラードで、つい聞き惚れてしまいます。
MVではベッドに腰かけて歌ったり、比較的にナチュラルな安室ちゃんがキュートです。

Defend Love
「Dr.」の続編ソング。
「Dr.」の最後が「To be continued...」で終わってたので、その続き。
曲中に「Please save us Dr.」というフレーズも出てきます。

「守るべき愛(世界)」をテーマに制作された楽曲。
重いテーマを、確固たる強い意志を込めて歌います。
難しい単語が多く、ちょっと固めの歌詞なのですが、
その分一つ一つのワードが響くのです。
終盤、ガラッと曲調が変わるところが必聴!

フルアニメーションで制作されたMVでは、
「機動戦士ガンダム」とのコラボが実現!
アムロ・レイと安室ちゃんが共演してます!!


PAST<FUTURE

PAST<FUTURE

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: avex trax
  • 発売日: 2009/12/16
  • メディア: CD


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ALL SINGLES BEST ~THANX 10th ANNIVERSARY~

10周年記念作品のひとつで、過去にリリースしたシングル31作に、
両A面シングル曲5曲をすべて収録した初のコンプリートベストであり、
かつ公認オールタイム・ベストアルバムなのです。
大ボリュームの3枚組!!
全曲にクリアな低音のデジタル・リマスタリング音源が施されており、音質が向上しています。

アルバム初収録となったシングル曲は、「STORY」「SUMMER LIGHT」「MAGIC」
「MAGIC」は最後となる「名探偵コナン」とのタイアップでした。
そしてボーナストラックとして新曲の「GIFT」も収録。



ALL SINGLES BEST~THANX 10th ANNIVERSARY~

ALL SINGLES BEST~THANX 10th ANNIVERSARY~

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: GIZA
  • 発売日: 2009/12/16
  • メディア: CD


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タグ:愛内里菜
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下荒井兄弟のスプリング、ハズ、カム。

大泉さん初の脚本・演出の作品で、いつもとはちょっと違うテイストの舞台です。
全64公演、動員数53,000人で、私もその中の一人です。
私が言うのも何ですけど、あの過密スケジュールの中、よく書き上げたなぁ~、と。
タイトルだけ最初に決まり、中身は何もない状態から始まりました。

今回いつもと違って特筆すべきは、その作り方。
ある程度完成した台本を持ってきてブラッシュアップするのではなく、
「台本打ち合わせ」と呼ばれるミーティングをして、
メンバー間でアイディアを出し合って作り上げていくというもの。
メンバーそれぞれがソロとしても活動しているので、
そのみんなのアイディアが集まれば、それは良いものが作れることでしょう!

タイトルが指し示す通り、NACS5人が演じる、5人兄弟の物語。
大泉さんは、ファンが何を見たいか、ファンが自分達に何を求めているかを考えたときに、
5人の独特の結束というか、妙に仲の良い人間関係だということにたどりつき、
5人が兄弟だったら…という発想に至ったそうです。
そうなんですよ、彼らの不思議な関係が、いつ見ても何だか面白いんですよね。
ベッタリ仲良しというわけではなく、言い合ったりもするんだけど、結局一緒にいる。
この5兄弟は、NACSにしか演じられないものだと思いました。

その配役がこちら。
長男・大造(たいぞう)=森崎さん
次男・大洋(たいよう)=音尾さん
三男・剛助(ごうすけ)=安田さん
四男・健二(けんじ)=大泉さん
五男・修一(しゅういち)=シゲさん

いつもの通し番号と順番が違う!?と思うのですが、
一番年下のはずの音尾さんの貫禄だったり、頼りないシゲさんだったり、
これがしっくりくる並びなんですよ。

物語は「家族とは…」という長文のスクロール投影から始まります。
どういう話なのか想像を膨らませながら幕があがるのを待っていると、
いきなり全裸の安田さんの後ろ姿!
今までこんな完璧な全裸で舞台に登場した役者を見たことがない!
そしてすぐ服を着るのかと思いきや、そうでもなく、そのまま芝居が始まっていきます。
途中ヒヤッとするような動きもあるのですが、
今思うと、アキラ100%が出てくる何年も前に、裸芸を極めていたんだな~、と。
さすが安田さん!DVDだとよく見える背中やお尻がキレイです(笑)

リラックス感満載の始まりですが、状況としては亡き父親の「10年祭」が終わった後。
いわゆる法事が終わった後、家で家族でゆったりする、というシーンです。
「10年祭」というのは、神道での言い方のようですね。
私も神道の式に出たことがないので、なじみがないのですが、
大泉家の宗教が神道だそうで、かなり独特の形式のようです。
NACSメンバーが驚いたのは実話。

今回、大泉さんが脚本・演出をする中でこだわったのが「ナチュラル」。
いつものリーダーがつくるお芝居だと、派手な音楽があって、派手な見せ場があって、
これぞ舞台!というか、舞台映えがするお芝居なのです。
が、今回はいつもと違うことがしたい。
ということで、ホームドラマに近いような作品になっていて、
なるべく普通のお芝居をして、会話をちゃんと見せれる作品に仕上がっています。
かといってドラマをそのまま舞台でやっても何なので、舞台ならではの仕掛けもあったりするのですが、
ただ、楽しい掛け合いでリアルなお芝居を舞台で見せる、というのはなかなか高度なのですよ。
舞台だと通常、非現実な演出によって助けられる場面もあるのですが、今回はそうではなくリアル。
舞台という、そもそもが異空間での「リアル」って難しいのです。

そのリアルさの表現に一役買っているのが、舞台セット。
下荒井家を切り取って、断面的に部屋の中から見ていると言えばいいのかな。
間取りがまた絶妙で図を書きたいくらいですが。
メインとなるのが下手側半部を占めるリビング。
役者は中央にある扉から出入りします。
リビングの一番下手からはキッチンへと続くはけ口があります。
そして中央の扉にあるのは、何とお風呂!
このお風呂も活躍します。
それから何と言っても目を引くのは、上手側の小上がりになった和室と、その上の2階部屋。
この2階の部屋は、引きこもりの健二の部屋になっていて、
主に大泉さんが階段を上がったり下がったりしてきます。
和室には大事な大事なお父様の祭壇もありますよ。
詳細は特典DVDで、シゲさんが詳しく説明してくれているので、そちらを是非。
よーく見るとペルシャ絨毯っぽいけどそうじゃない絨毯とか、
私の祖父母の家にもあったな~って、懐かしくなりました。
今の時代の話ではあるんだけど、あえてNACSメンバーが生きてきた時代を感じるセットで、
彼らの実家だったり、つまりは原風景ってことですよね。
このノスタルジーがまたいい味出してくれるのです。

オレンジのソファーが印象的なリビングでのやり取りは、
メンバーのいるもよりナチュラルを心がけた芝居のおかげもあって、
本当にホームドラマを見てるような気分になりました。
かといって退屈でないのは、抑えた芝居の中でも織り込まれる絶妙なギャグだったり、
次々とくるドタバタな展開だったり、
和室スペースまでを使ったアクションシーン(?)だったりと、
ナチュラルと脚色が、絶妙なバランスだったんだと思います。

さて、物語は5人兄弟だけで進むのではなく、他にも登場人物がいます。
それも女性!
NACSファンにはおなじみの、女装メンバーが登場します。
今回は多くて、シゲさん、音尾さん、リーダーが女装します。
「ナチュラル」を心がけているのは女性キャラもそうで、
どの女性も「いそうだな」と思ったのです。
まぁ、リーダーはちょっと出オチ感はありましたが(笑)
後から言われて気がついたのですが、今回の女装では、全員メイクをしていないんです。
男性の場合、アイラインや口紅を塗ってしまうと、その途端に「オカマ」に見えると。
確かにそうかも!
そこでメイクはせずに、こだわったのはウィッグでした。
ウィッグだけでこんなにキレイ変わるんですね!!
それから、シゲさんのスラリと伸びた脚にも注目で、悔しいほどレギンスがよく似合います。

見た目だけでなく、女性らしい仕草にも注目。全く不自然じゃないんですよね。
シゲさんみたいな、夫を尻に敷くタイプの妻、いるいる!!
音尾さんの世間知らずなお嬢様も意外に似合っていました。
これはこれでいそう!
マリリン・モンローみたいにスカートがめくれ上がるシーンは名シーンです。
キレイにめくれるように、スカートの素材などこだわったようですよ。
リーダーの女装についてはあえて語りません。

それから、女装とおなじく名物?の、メンバー同士のキスシーン。
今回はシゲさんと音尾さんでした。


物語は実は2部構成のような感じになっています。
前半は、長男・大造が勘違いで失恋する話。
これは健二の些細なイタズラなんですけどね、ここまで切ない結果になるとは…!
見てて辛くなりました。
成就するわけないのが、観客にはわかっちゃいますからね。
しかもそれが結構長い!
健二の「殴ってくれ」には、演出かとしての罪悪感も込められていたのでしょうか。

勘違いした大造の衣装は、COMPOSERでリーダーが演じたサリエリにしか見えない!
あの時はみんながこんな重厚な衣装を着ていて普通だったんだけど、
舞台が変わるとものすごい違和感なのですが、
それがまた舞い上がり過ぎたテンションを絶妙に表現してて面白いですね。
このあたりのシーンは、シゲさんの言葉を借りるなら、「芸もしない大型犬」。
このたとえ、よくわかる気がします。
バカかわいらしさというか、空回りしてる感じがすごくわかりやすいのです。
だからこそ、よけいに哀れに思えちゃうんでしょうね。


そして後半は音信不通だった次男の大洋が帰ってくる話。
その音尾さんが演じるヤクザな大洋の初登場シーン、
「アロ~ハ~」という挨拶なのですが、ものすごい貫禄とインパクトでした!
あれはもう、一種の歌舞伎ですね(笑)
そして直前まで演じていた女役からの変わりよう!
同じ役者とは思えないです。すごいなぁ。

この切り替わりのところでは、早替えの荒らしですよね。
女装⇒男装だったり、結構衣装のアイテムが多いので、
裏では大変だろうなぁと思いつつ、さすがプロ!と余計なところに思考が働いてしまう。

絶妙なところで物語に関わったり離れたりするのが、健二。
引きこもりという役どころがうまい具合に行ったなぁと思うのですが、
彼は2階の部屋で何をやっているかというと、盗聴。
家中のあちこちに盗聴器を仕掛けたり、あらゆる手段で盗聴するプロ。
健二お守りなんていうポータブル型のアイテムもありまして、
これグッズ化されてたら買ったな。もちろん盗聴器は仕込まれてないですが。
この盗聴が、後の展開にとても重要で、盗聴も役立つんだなぁと誤解してしまうくらい。
盗聴で感動させられることができる人は、そうそういないんじゃないでしょうか。
題名こそ「健二最初の盗聴」とされている盗聴テープも、
実は間違って録音ボタンを押しちゃっただけのかわいいエピソードだったりします。

2階の健二には重大な仕掛けがあって、何と床が抜けるのです!
落ちるのは音尾さんなのですが、こういう落ちる演出を大泉さんは昔からやってみたかったそうです。
満を持しての仕掛けは、伝説のシーンになりました!
このあたりのシーンはかなりカオスで、ドタバタ劇ならでは。
面白い裏話として、音尾さんが床から落ちる時に、
階下の和室に畳んで置いてある布団がマットの役割をするのですが、
このシーンに至るまでに安田さんがこまめに布団の位置を調整しているのです。
結構この和室に一番よくいて、和室の主と化してるのは安田さんだと思います。
個人的には、そそくさと布団敷いて寝ちゃうシーンが好きなんですけどね。

芝居は段取りと演技の狭間で、役以外にもいろんなことを考えなきゃいけないんです。
その点、舞台は何度も練習してできるから良いんですよね。

演出上、6人目を登場させなきゃいけない事態になるのです。
もしかしてこれが、このお芝居の最大のピンチか!?と思ったのですが、
驚くべき方法で切り抜ける!
こういうアイディアも、稽古を重ねていて生まれたアイディアなんでしょうね。
そういうアイディアが至るところに散りばめられています。

話がちょっとそれましたが、安田さん演じる剛助という人も大変な人で、
なかなか大変な役だと思います。
慌てる安田さんの変なステップとか、揉み合いの場面で畳で滑って転んだのはガチだと思うけど、
テンパった時の安田さんの動きは、ずっと見ていられますね。
ここで、そういえば全員靴下なんだなってことに気付きました。
家の中でのお話だから、当たり前なんですけどね。

いろんな事情を抱えた兄弟5人が揃った時、やっぱりこの5人はいいなぁ~って思いましたね。
それを効果的に演出するのが「パトランプ」。
ドタバタの末、引きこもりの健二が立てこもり犯に見られるのですが、
この時に2階部屋から外を覗く大泉さんの悪い顔と言ったら!
ここでもこの2階部屋が効果的に働きます。
で、警察に包囲された体でパトランプがチカチカするのですが、
まるでサスペンスドラマのような状況なんだけど、
逆に家の中では5人が結束している、っていう。
こんな状況だけど、やっと5人が揃ったんですよね。

良いシーンといえば、今回もあります、お歌のシーン。
ここでやっと、下荒井家の家業がギター教室だということが活きてきます。
音尾さんがギターを弾いて、大泉さんとシゲさんが歌うのですが。
かつてシゲさんと「FAN TAN」というユニットを組んでいたことがあり、その再来ですね!
演出上、いいところで演奏中断になってしまうのですが、
特典DVDではフルコーラスで聞けますよ。

チラシを見た時は正直、どういう話なのか想像つかず、
タイトルからして何となくホームドラマなのかな、って思ってたのですが、
いざ見てみると、チラシのような恰好をした人は一人も出てこなくて(笑)
本当にタイトル以外何もないところから始まって、台本も未完成なまま稽古が始まって、
稽古をしながら作り上げていき、本番ギリギリでカタチになったものだと実感。
結果、アットホームでわかりやすい、大泉さんらしい作品になったかな、と思いました。
ちなみに、劇中で集合写真を撮る時、実はチラシの並びになっているのです。
チラシを見たお客さん用にって、何て細やかな配慮なんだか。


特典DVDには毎度おなじみのメイキング映像と、
公演終了後のお花見パーティーの様子が収められています。
お花見の場所は北海道の円山公園。
撮影時期はまだ桜は咲いてなかったのですが、
GWなんかはさぞかし綺麗なのでしょう。
そして北海道でのお花見だとジンギスカンパーティー、通称「ジンパ」が定番なんだそうですね。
「リードヴォー」という、子羊の頃にしか取れなくて、胸腺と膵臓の肉は初めて聞きました。
北海道民はやっぱり、臭みがあるマトンを食べるんですね!、
チラシに使われているクラシックカー、通称「下荒井号」も走りますよ。



下荒井兄弟のスプリング、ハズ、カム。 [DVD]

下荒井兄弟のスプリング、ハズ、カム。 [DVD]

  • 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
  • メディア: DVD


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フィッシュストーリー

表題作を含む、中篇集。
今までの作品に登場したあのキャラ達が続々登場します。


動物園のエンジン

ある10年前の回想の話。
主人公の名前はわからないですが、大学の先輩だという、
「河原崎」という男性と一緒に夜の動物園に行った時の話。
「河原崎」という名前には聞き覚えがあり、ラッシュライフにも登場していました。
新興宗教団体の信者で、バラバラ殺人に加担してしまったのですが、
その人とはあまりに性格が違う。
読み進めていくと河原崎先輩は、後に自殺することになる。
そういえば、「ラッシュライフ」の河原崎青年の父親は自殺している。
とすると、今作の河原崎先輩は、「ラッシュライフ」の青年の、
お父さんなのかもしれません。
そうそう被る苗字じゃないしね。

いきなり脱線してしまいましたが…。
灯りの消えた動物園で、動物たちの気配を感じる。
今でこそ「夜の動物園」に入る企画があったりしますが、
やっぱり普段見られない夜の動物たちの姿って興味ありますよね。
今作では恩田という、主人公の大学の同級生であり、動物園職員でもある男のおかげで、
入場することができた。

その夜の動物園で、男が一人、うつ伏せで倒れていた。
男は永沢という元職員で、恩田の先輩にあたるのだが、今は無職らしい。
この動物園では二年ほど前に、シンリンオオカミがいなくなった事件があった。
その責任を感じて、永沢は職員を辞めた。
それからの永沢はノイローゼになったようで、妻とも離婚してしまった。

永沢は動物園が大好きだった。
『動物園に行こう。休日をライオンと』なんていうビラを作ったりしたそうだが、
個人的にこのフレーズ、いいなって思います。
永沢が動物園を辞めて、寂しいと思ったのは動物たちも同じ。
永沢が動物園にいた時から、永沢が夜勤でいると明らかに違っていて、
動物園全体にエンジンがかかった感じになるのだと。
いわば「動物園のエンジン」!

その翌日も、恩田に頼んで夜の動物園に行ってみる。
「エンジン」と言われる永沢がいなくなると、動物園の雰囲気が変わるという。
それが見たくなったのだ。
朝7時になって、永沢は動物園の敷地から出て行った。
すると確かに、「エンジンが切れた」。

その翌日も夜の動物園に3人は集まったのだが、
その日の朝方、一度別れた後、河原崎は永沢の後を追っていたらしい。
すると、マンションの建設予定地へ行き、建設反対運動をしてるグループに混ざって、
プラカードを持って立っていた。
ここから推理ゲームが始まる。
何のためにやっているのか。
その答えは読んでみてのお楽しみにしますが、
それにしてもこの永沢という男は一体いつ寝てるのだろう?
動物園のエンジンになれるくらい慕われるのはうらやましいことですが。

ところで、久し振りに「オーデュボンの祈り」の伊藤が登場します。
主人公や恩田とは、大学時代の共通の友人なんだとか。
ソフトウェア会社を辞めてコンビニ強盗をやって逮捕されて、逮捕後に逃走までして…
というのは知られていたけど、さすがに奇妙な島に行ったことは知られてないのでしょう。
その伊藤に電話で推理ゲームに参加してもらうというのが、
昔からの読者には憎らしい演出。


サクリファイス

こちらは「ラッシュライフ」で人気の黒澤が主人公。
探偵と泥棒、2つの顔を持つ黒澤ですが、今回は「探偵」としてのお仕事だそうです。

依頼内容は、山田という男を捜すこと。
仙台市内に住む、53歳の男性で、2週間前から行方が分からなくなっているらしい。
依頼してきた男の印象から、山田も礼儀正しい生業で生活をしている男だとは思えなかった。

そうして黒澤がたどり着いたのが「小暮村」。
これにもしっかり裏があります。
黒澤は依頼を受けた後、本業(?)で使うための技術を発揮し、
山田の住むマンションに忍び込んだ。
すると、部屋の隅に残っていた古いPCを見つけ、興味深い情報を入手する。
それが、インターネットを閲覧した履歴情報で、
半月ほど前に「小暮村」という名前を検索した形跡だった。

かくしてたどり着いた小暮村は、古い風習にとらわれた、小さな村だった。
最初に出会った「第一村人」が、柿本という自称彫刻家の男。
60歳を過ぎても、自分の未来にまだ期待を持っているあたり、
いいキャラだな~と思ってしまいました。

そんな柿本から、村にまつわる重要なキーワードを教えられる。
新参者にもわかる、これだけおさえておけば、「小暮村」についての知識はバッチリ。
それが、村のキーパーソンは、村長の盤陽一郎と、大工の周造。
そして、村の重要な風習が「こもり様」。

「こもり様」というのは江戸時代から続く、この集落の風習。
当時は山賊が出て、通行人を襲っては荷物を奪って、
時には村にもやってきたらしい。
女が襲われたり、田圃が荒らされたり、大変だったそうな。
その時の村長が、いけにえを捧げる夢を見て、それを提案した。
山賊の被害に困り果てた村人は、その生贄案に賛成した。
ひとりの女が生贄に選ばれ、洞窟に入った。
洞窟の外に岩を置いて、閉じ込めた。
村人たちは逃げるようにその場を去って、しばらく岩壁には近づかなかった。
やがて女は死んだ。
生贄としての立場をまっとうした女は、村中で祭りが行われて、埋葬された。
以来、山賊はぱったり現れなくなった。

それ以降、この村では、困ったことがあれば、生贄をこもらせることになった。
では、その生贄はどうやって選ばれるのか。その選び方がまた独特。
まず、集落の住人が、集会所に集まる。
そこで、円陣を作るように座る。
そして、大きく長い数珠を全員で握って、
その数珠をみんなでつかんで、歌に合わせて、時計回りに回していく。
数珠には1箇所だけ大きな珠がついていて、
歌い終わった時にその部分を持っていた者が、「こもり様」となる。
まさに「かごめかごめ」の世界。
ただし、歌う回数が1回だと、毎回円陣の同じ場所が当たりになるのがわかってしまうから、
歌う回数は、村長がサイコロを振って決める。

昔はこれで本当に運命が決まってしまうのだから、さぞかし恐怖だったに違いないでしょう。
今は形式こそ同じものの、実際に死ぬわけではない。
今のこもり様は、岩壁の洞窟に、5日とか10日とか、決められた間だけ閉じこもっていればいい。
その日数もサイコロを振って決める。
出口は塞がれるが、「用意様」と言って、食事を運ぶ係がいる。
たいていはこもり様の家族が務めるが、いなければこもり様本人が指名する。
人は出入りできないが、小さなお盆くらいなら入る穴があって、そこから飯を運ぶ。
もしこもり様の具合が悪そうなら、用意様が村長に伝えるという仕組み。

このこもり様は決して定例行事というわけでなく、
現村長の陽一郎が時期を決める。
陽一郎は冷徹ではあるが、悪い人ではないらしい。
村をまとめるのに必死なのだと。
代々、この集落を仕切ってきたのが盤家であって、陽一郎も20歳の頃から家を継いでいたらしい。
昔と違って、村長は選挙で選ばれるようになったものの、
実際選ばれるのは、盤家の人間だった。
こんな小さな村でも、維持していくのは大変だのだろう。

今まさに周造がこもり様をやっている。
もう1週間になるらしい。
周造は陽一郎とは正反対で親身になってくれるタイプなのだが、
こもり様の時は山に近づいてはいけないことになっているので、会うことができないのだそう。

村の風習に従い、今回の周造にも用意様がついている。
周造は昔、恋人と死に別れたとかで、独身を貫いているので家族はいない。
それで、隣の唄子という90歳を過ぎたお婆さんが務めている。
黒澤はその唄子に会うことにした。

90歳過ぎには見えないほどしっかりしている唄子からも、村についてのいろんな情報が聞けた。
唄子おばあちゃんのバリバリの方言がカワイイ!
唄子はこもり様は最初から、村長の何らかの企みじゃないかと考えているようだ。

風習というものについての柿本の見解が見事だな、と思ったのですが、
風習というのは何かを隠すために、それらしい理屈をこじつけるのだと。
何かというのは、恐怖とか罪悪感とか、欲望とか。
そういうのをごまかすために、風習とか言い伝えとかができるのだという、
この考え方には、なるほど~っと思いました。

ところで、柿本の妻が気付いたことだが、周造がこもり様になることが多いらしい。
陽一郎と周造は、一人の女を巡って、30年前から仲違いしている、とも噂される。
こもり様はサイコロで決めているので、偶然のはずなのだが、果たして…?

他にも、「文吉事件」という奇妙な事件もあって、
それはこもり様をしていた文吉が、洞窟の中で妙な死に方をしていたというのですが、
そもそも黒澤の仕事は山田を捜すことであって、村の風習に首を突っ込むことではないんですよね。
私もこれ以上のことは、ここでは書かないようにします。

ただ、村の在り方を通して、もうひとつ学んだことがありました。
小さい村には小さい村なりの「宇宙がある」。
共同体をまとめるには、権威だけでは駄目。
統治する人間は嫌われ、恐れられ、人々を牽引していかなければならない。
そのかわり、個人個人の恐怖や不安、不満を受け止める人間も必要。
うまく従えるには、その両方のバランスを取る必要がある。
これは集団をまとめる時の基本ではないか、と。
厳しさと優しさの両方のバランスを取る。
一人の権力者でうまくできれば良いが、できなければ二人に分けても良い。

さて、いろんなことを教えてくれた柿本は、5歳年上の妻・花江と二人暮らし。
仙台で市役所に勤めていた柿本は、9年前に突然辞めて、
「俺は芸術家になる」と、この村に引っ越してきたという。
還暦も過ぎて、大変な決断だったと思う。
ただ、花江には楽じゃないことはわかっていて、そんなことよりも、
人生のうちで一度くらい花を咲かせたい、といったところかな。
それを聞いた黒澤が、かつて遭遇した老夫婦のことを思い出していた。
「ラッシュライフ」で出くわした老夫婦強盗。
この二人も「今まで真面目に生きてきたから、羽目を外そうと思った」と。
方向性は違うものの、「喝采を叫びたい」という意味では、同じなのかも。

そしてその柿本の木彫作品が奇跡を起こす。
そこで登場したのが、黒澤の学生時代の友人で、銀座の画廊で働いている佐々岡。
名前こそ出なかったものの、「ラッシュライフ」を読んだ人ならわかる人物です。
そういうところがニクイよね。


フィッシュストーリー

伊坂さんお得意の(?)、時間設定が飛ぶ構成。
あるひとつのことを軸に、タイムトリップします。
『僕の孤独が魚だとしたら』という冒頭で始まる小説と、
それを歌詞に引用した、とあるロックバンドの曲。
これらが共通で、別の時間軸の話を繋いでいきます。

まずは20数年前の話から。
雅史は自宅から片道1時間ほどの距離にある実家の帰り道で、ハンドルを握っていた。
70歳の父から突然呼び出された帰りだった。
理屈っぽい性格で、幼少の頃から正義感のある子だった雅史は未だ独身で、
27歳を過ぎた頃あたりから、両親は結婚の話を持ち出すようになった。
田舎の両親によくあるがちなパターン。

その小説のことを思い出したのは、大学時代の同級生と会った時のこと。
文学部出身の二人は、学生時代の課題でその本を読んだのだ。
友人に、その小説を引用したロックバンドのことを教えてもらった。
既に解散したバンドで、最後のアルバムに収録されている曲なのだが、
小説の文章を引用しているのもさることながら、
演奏途中で、音が切れるのが一部で話題になった。
間奏が急に途切れて、1分くらいしてからまた曲がはじまる。
レコードのジャケットには『製作者の意図によるものです』と但し書きはあるものの、
一部ではその無音の部分について、憶測が飛んだ。
そんな不自然な途切れ方だったら、さすがに私も気になると思う。

数日後、雅史は休憩時間にレコード屋へ行き、例のバンドのレコードを購入した。
それをカセットテープに録音し、カーステレオで再生する。
レコードとかカセットテープというのが、時代を感じますねぇ。
窓を開け放ち、大きな音を響かせて、湾曲した山道を運転していると、
何曲目かで、例の引用フレーズが聴こえてきた。
そして、唐突に大音量が止まった。これがあの「間奏中の無音」。
その時、どこからか高い女性の声が耳に入ってきた。
それは短く上げた悲鳴のようなもの。
持ち前の正義感のもとに、車を停めて、周囲を探してみることにした。

それから20数年後の現在。
麻美はエコノミークラスの座席で、例の文庫本を読んでいた。
家を出てくる時に、父の書斎から引き抜いてきた1冊だった。

すると、隣の席に座った男から声をかけられた。
男の名は瀬川。
彼はこの本が好きなのだという。
高校の教師になって2年目だという彼は、
体格の良さとは裏腹に、教えている科目は数学だった。

とある東南アジアの国からの帰り道。
瀬川は旅行で、麻美は仕事での帰りだった。
麻美はエンジニアで、その国で勉強会があった。
麻美は来月、その島の教会で結婚式を挙げる予定で、
麻美と瀬川の間に恋心が芽生える展開ではないのだが、会話は弾んだ。

瀬川は本当は正義の味方になりたかったらしい。
というより、そうなるべく育てられたのだとか。
それは、あの正義感の強い父親だからこそ。
中島敦の小説『弟子』から引用していますが、
「どうして悪が栄えて、正義が虐げられるのか」とは、
伊坂作品の根底に、ずーっとあり続けるテーマだと思います。
瀬川の父曰く、大事なのは職業や肩書きではなくて、
強い肉体と、動じない心、それを身につける準備こそが必要だ、と。
そのブレない精神が、何だかカッコイイです。

注目すべきは、瀬川のさらに右隣に座った老夫婦。
お金が少し貯まったので、今生の思い出に海外旅行に行ったという夫婦。
「悪いことをして貯めたお金」というので、伊坂読者のアンテナが反応するのです。
極めつけは、その後の台詞で「人生の充実」という言葉が出てくるところ。
「ラッシュライフ」で黒澤を襲った、あの老夫婦強盗に違いない!
その前の「サクリファイス」で、黒澤が老夫婦強盗の回想をするシーンがあって、
それもまた絶妙なキッカケになってると思います。
というか、それが無かったら、きっと思い浮かばなかったと思う。

さて、物語はなんとハイジャックに遭遇します!
でも結末は言わずもがな、かな。

時は再び遡って30数年前。
冒頭での雅史のエピソードから10数年前。
とある4人組ロックメンバーがレコーディングスタジオを後にし、駅へと向かっていた。
メンバーは最年長のリーダーでベースの繁樹、ギターの亮二、ボーカルの五郎、ドラムの鉄夫。

キャバレーで演奏していた彼らに声をかけてプロデビューさせたのは、マネージャーの岡崎。
しかし、彼が扱うバンドはことごとく売れない。
ただ、音楽の趣味が合うようで、彼らの敬愛するミュージシャンのことをよく理解しており、
その中には「ジャック・クリスピン」の名前もあった。
これまた伊坂作品読者にはおなじみの架空バンド。
「グラスホッパー」で岩西が歌詞をやたらに引用していたバンドです。
知名度が低く、レコードが手に入りにくいということになっていますが、
こうなると本当にいるんじゃないか、って気になってきますよね。

解散間近のバンドは、ラストアルバムの制作に入っていた。
収録曲全10曲中、9曲は録り終えていて、
残りの1曲は繁樹が歌詞を書き終えたら録音できる状況だった。
ただ彼らの音楽は理解されず、プロデューサーの谷との折り合いも良くなかった。

翌日、繁樹は電車の中で、例の文庫本を読んでいた。
2年ほど前に買ったまま、書棚に差していた本だった。
家を出る時にたまたま目に入ったので、鞄に入れてきたのだった。
ここでその本の内容がちょっと明らかになる。
朴訥とした主人公が、「俺は世界に見捨てられたわけじゃない」と強がり、
成長していく姿に引き込まれ、気づくとメモ帳に文章を抜き書きしていた、と。
こういうのが、作詞に影響していくのね。
そして、この文章をメロディに乗せて歌ってみてはどうか、と提案する。

こうして、最後の渾身の1曲を、例の文庫本を引用した歌詞で、一発録りでレコーディングした。
演奏はすごくいいものだったが、間奏で五郎が謎の独り言を言う。
これが例の曲の制作秘話です。
バンドの魂の叫びというか、生き様というか、不格好でもカッコイイと思いました。

ところで、英語で『fish story』とは、「ほら話」という意味らしいですよ。
この本のタイトルでもあるんですけど、やられた~って思いました。

そして話は「現在から10年後」に繋がります。
巧妙な時間トリックが絶妙な伏線になって、やがて全てが繋がる瞬間を、
ぜひ体感してほしいです。


ポテチ

今村と大西、ちょっと変わった同棲カップルの話。
どっちも苗字なので、最初はどちらが彼氏でどちらが彼女なのか判然としないのですが、
今村こと今村忠司が彼氏で、大西こと大西若葉が彼女です。

今村は実は空き巣。
冒頭で、マンションの1室で漫画を読んでくつろいでるようなシーンかと思いきや、
実はそれが他人の家で、空き巣に入っていたというからビックリです。

不思議なカップルの馴れ初めは、これまた不思議なものでした。
1年前、とあるマンションの一室で、親分の中村と一緒に空き巣の仕事をしていた時のこと。
その家の電話が鳴り、留守電に緊迫した内容が吹き込まれる。
「死ぬことにしたから。飛び降りちゃうから」と。
慌てて電話をとった今村が引き止め、まさに飛び降りようとしている現場に向かう。
その時の相手が大西だった。

ところで、中村は今村から「中村専務」と呼ばれるようになるのだが、
中村という空き巣には聞き覚えがある。
「ラッシュライフ」に出てきた、へなちょこな二人組だ。
判断力に欠ける上司と、世間知らずな部下。
その時も何やら大きな仕事(郵便局強盗)が控えているとかで、黒澤を誘ってきたのだが、
後先を考えず、ろくな調査や検討もせずに仕事を起こそうとする者と組む気はなかった。
その軽い言動から、私ですら大丈夫か!?と思ったものですが。
その中村がかわいがっていた、かなり天然の若者タダシが今村だった!
当時はカタカナ表記でしたが、今回は「忠司」と漢字表記になっています。

その今村は前回、ニュートンの万有引力を自力で発見した!と興奮していて、
その時のことも本作では触れられていますが、今回はピタゴラスの定理を発見します。
無謀で仕事を一緒にしたいとは思わないけど、ドジキャラで何とも憎めない二人組なのです。

中村のことは見放している黒澤も、今村の将来については案じていた。
中村につくことで、危なっかしい仕事はさせられない、と。
そして今作では、今村と大西を時々助けます。

しかしあの天然のタダシが、まさかこんなに繊細だとは。
その背景には、こんなに重いものを抱えていたとは、
あのキャラからは想像つきませんでした。

取り違えとは他の作家さんの作品でも度々題材にされますが、
昔は結構あったんですかねぇ。
今でこそ生まれてすぐの赤ん坊は、足首に名札をつけられるので、
そういう間違いはないのでしょうけど。
そうじゃなくても、もしもあの家に生まれてたら…なんて、
パラレルワールドを妄想することはありますが、
本作を呼んで、あまりに不謹慎だな、と反省しました。
取り違えを連想させる数々の伏線はさすがです。
タイトルにもなっている、ポテチの味を間違えて、泣きながら食べるシーン。
これはもう伊坂作品の中でも指折りの名場面だと思います。

そういえば、過去の伊坂作品で、やはり血の繋がりに悩んだ人物がいましたね。
「重力ピエロ」の泉水。
遺伝子関係のお仕事をしているので、黒澤の探偵業の方で縁があるのですが、
今回も今村の遺伝子検査で活躍しています。

さて、大西の方にも他作品とのリンクが…。
大西は地面に耳をつけ、そこから伝わる音や響きを確かめるのが、
子供の頃から好きだった。
「オーデュボンの祈り」にもそういう少女がいましたね。
彼女の名前は「若葉」。
でももしこれが同一人物だとしたら、大西の両親は埼玉にいるらしく、
大西若葉がひとりであの島に行っていたということ??


今回の作品はいつになく、過去作品とのリンクが多かったです。
細かいところでまだ私が気づけていないものもあると思うので、
もし気づかれた方いらっしゃったら、是非教えていただきたいです!



フィッシュストーリー (新潮文庫)

フィッシュストーリー (新潮文庫)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/11/28
  • メディア: 文庫


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