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終末のフール

単行本が出た時の広告や特設サイトを見て、
是非読みたい!と思っていた作品の、文庫化です。
文庫本派なので、やっと読めました。

あと3年で小惑星が衝突し、地球が消滅する。
そんな中、それぞれの終末の過ごし方を描いた、
オムニバス形式の作品です。

地球が消滅すると宣告されたのは5年前。
つまり、その当時は「あと8年」の余命だったのですが、
当時の混乱は激しく、奪い合いが起きたり、
自暴自棄になって人を襲う人や、自殺する人もいた。
その騒乱も5年経つと落ち着き、今に至る、
という何とも生々しい描写であり、洞察です。

「このままじゃ地球は消滅する」とは言われることがあっても、
実際にそういう宣告された経験はないのですが、
いざとなると、本当にこんなパニックになるんだろうな、
というリアリティが感じられました。

仙台北部の架空の団地「ヒルズタウン」の住民たちを描いた作品集。
よく見るとタイトルに統一性があります。
では、1編ずつレビューしていきます。


終末のフール

405号室、香取夫妻。
人を馬鹿にする夫と、どこかのんびりした妻・静江。
まるで噛み合わない二人の様子は、
私からすると、よくここまで一緒にいたな、と思ってしまう。

夫婦には息子と娘がいました。
兄の和也とは対照的に、妹の康子は図抜けて成績が良かった。
兄妹で比べられるというのは、ありがちな話ではありますが。
康子は、母や兄のことを馬鹿にする父親に辟易していた。

10年前、和也は地下鉄に飛び込んで亡くなった。
その2か月前、康子と父親は、激しい口論をしていた。
それは、父の和也に対する扱いをめぐるものだった。
口論の末、康子は「二度と戻ってこない」と言い放ち、
それっきり会ってもいない。

そんな康子が、突然戻ってくる、という。
こんな決別をした父としては、それはもう落ち着かない。
こんな性格な人だから、なおのことだと思う。

本人も言及していましたが、和也のことを認められなかったのは、
和也の中に、自分の嫌なところを見出していたから。
和也はそれなりに無理せずやり過ごすことができていたけど、
父はそれができなかった。
自分は受け入れることができず、にも関わらず受け入れている和也のことを、
許せなく思ったのではないか、と思う。
私が思うに、自分のことを子どもに投影する親はあってはならない、と思う。
親は親、子は子。血は繋がっていても、別の人間である。

康子を待つまでの間、静江はレンタルビデオでも観ようと提案する。
このご時世、生活必需品でもないれんたるビデオ店を営んでいるのは、
たいした神経だな、と思うのですが、
店長の渡部もヒルズタウンの住人でした。
501号室に住んでいて、この一家、特に親父さんがキーパーソンとなります。
この短編は、最初の作品ということもあって、
あとから読み返すと、あれもこれも伏線だったんだ!というのがわかり、
読み終わった後にもう一度戻って答え合わせすることをオススメします。

康子が何をしにきたのか、その結果どうなったのかは書きませんが、
人間は脆いな、と思いました。
どうしても人の弱いところばかりが見えてしまい、
それが自分に跳ね返ってきて、浮き彫りになるのが耐えられない。
終末を前にパニックになる人の脆さと重なって、深く考えさせられました。


太陽のシール

601号室、桜庭富士夫と美咲の若い夫妻。
優柔不断な富士夫は、この終末に、重大な決断を迫られていた。
なんと美咲の妊娠が発覚したこと。
あと3年で地球が消滅する、生まれても3年しか生きられないのがわかっている状況で、
産むべきか、産まざるべきか。

二人は結婚当初から子どもが欲しかった。
だけど、うまく行かず、7年前に検査したところ、
子どもができにくいということがわかった。
治療をするかどうするか富士夫が悩んでいるうちに、
ずるずると7年が経ってしまった。
世界が終わるとわかっている時に子どもができるなんて、皮肉なものです。

この夫婦の素敵だなと思うところはたくさんあって。
出逢い方から独特だった。
富士夫が飲み会へ行くのに、山手線のどっち回りで行くか迷っていると、
後ろにいた美咲が教えてくれた。というか、決めてくれた。
結局、富士夫はその飲み会を放棄した。
隕石が落ちてくるニュースが流れた時も、近隣の住民が次々とマンションを去っていく中、
美咲がここに残ることを決めた。見事にバランスをとっている夫婦。

富士夫がいかに優柔不断かを表現するのに、
オセロのエピソードが使われるのですが、この描写がとてもお気に入りです。
富士夫はオセロが好き。
その理由は、美咲の分析によると、他の遊びよりも選択肢が少ないから。
言われてみればオセロは手が限られていて、ルールも単純。

富士夫じゃなくても簡単に決断できる内容ではないけど、今回ばかりは待ってくれない。
なかなか決断できないまま、富士夫は、偶然高校時代の友人に声をかけられる。
彼は高校時代に、ともにサッカー部で過ごした友人。
サッカー部主将だった土屋が仙台に戻ってくるので、
土屋を交えてサッカーをしないか?と。

2日後、富士夫は河川敷のグラウンドでサッカーを楽しんだ。
大半が見知った顔だったけれど、一人だけ名前を知らない若者がいた。
それは、あのレンタルビデオ屋の店長だった。こんなところに登場するとは!

作品と作品を繋ぐ接点は、他にもあり、
それが美咲がアルバイトしているスーパーマーケットもその一つ。
町内にある佐伯米穀店が店を閉じた時に、突如として営業を再開した。
実は「終末のフール」でも静江がこのことを話題にしていた。
ここの店長は正義感が強いタイプらしく、自らのことを「キャプテン」と呼ばせていた。

話は逸れましたが、富士夫の決断に大きな影響を与えたのは、
久しぶりのサッカーで再会した土屋の話。
土屋には「リキ」という、先天性の病気を持った子どもがいる。
病気や障がいのある子を持つ親が、子どもを残して先に死んでしまう不安を語るのを聞きますが、
3年後に小惑星が衝突したら、みんな一緒に死ぬことができる。
この話はかなり印象的でした。

富士夫がどういう決断をしたのか、
最後のオチにも注目です。


籠城のビール

いきなり拳銃を向けられる物々しいシーンから始まりますが、
ここはヒルズタウンの一室。
509号室は、アナウンサーの杉田玄白とその家族が暮らす部屋だ。
このアナウンサーについても、「終末のフール」の冒頭で、
静江が姿を見かけて話題にしていました。

杉田に向かって拳銃を突きつけているのは、虎一と辰二の兄弟。
アナウンサーという仕事柄、過去のテレビ報道によって、
怨みを買ってしまったのである。

辰二たちの妹、暁子は10年前に亡くなった。
はじまりは、とある籠城事件。
犯人は30代の女性で、空き巣の常習犯だったのだが、
ある時、盗みに入った賃貸マンションで、たまたま住人と鉢合わせになった。
そして住人を拳銃で脅し、そのまま立てこもった。
その時の住人が、暁子だった。

籠城は3日間続き、唐突に姿を現した犯人の女は、
その場で自らの頭に銃弾を撃って死んだ。
3日間の一部始終を、テレビはまるでお祭りの中継のように報道した。
暁子は無事で、一件落着になるはずが、一家を新たな苦痛が襲った。

福島の自宅に戻ってきた暁子を、マスコミが追いかけてきたのだ。
辰二の想像によると、これには暁子の外見も関係していたのだろうと思われる。
当時19歳だった暁子は、兄から見ても、器量が良かった。
マスコミは執拗に、事件後の暁子の姿をとらえようとした。
そのうち根も葉もない噂が流れ出し、やがて暁子の不用心が犯罪を誘発したかのような
論調になり始めた。
その時の番組を担当したアナウンサーが杉田で、悪役のようなコメントを残していた。
一家は疲弊し、暁子はしまいには自殺してしまった。

そういうわけで、妹の復讐のために、虎一と辰二は杉田の部屋にいる。
さすがに籠城が長引いてくると、周りがざわついてきた。
突然、杉田宅の電話が鳴る。
501号室に住む、あの渡部だった。
杉田の家に不審な男が入っていくのを見かけて、心配しての電話だった。
電話をしてきたのはレンタルビデオ店で働く渡部の父で、
屋上で何か作業をしているらしい。

二度目の電話は警察から。
そうこうしているうちに、周りを警察に囲まれた。突入の準備だろう。
皆が追いつめられた瞬間、衝撃の展開が!!
何だかとっても伊坂さんらしい作品だな、と思いました。


冬眠のガール

301号室、両親を亡くした田口美智、23歳。

4年前、つまり地球消滅の発表がされた1年後、
美智の父と母は一緒に亡くなった。

5年前に世界の終わりが発表された当時、
世の中がパニック状態で、店では食料品や消耗品の奪い合いが酷かった。
その群れの中に、美智の母親もいた。
ある時、父が灯油を手に入れて帰ってきた時、
マンション前で母に襲いかかってきた暴漢を、角材で撲殺してしまったこともあった。
その後、両親が入水自殺をした。
恐らく、誰もが卑しい人間へとなっていく中で、
自分たちも同じであることへの自己嫌悪と罪悪感に苛まれていた二人は、
娘には同じ道を歩ませまいと、二人で死を選んだのだろう。

美智には、両親の死後に定めた3つの目標がある。
①お父さんとお母さんを恨まない。
②お父さんの本を全部読む。
③死なない
冒頭では、今まさに、②の目標をやり遂げたところだった。

そんな美智が唯一、外界との接触ができるのが、食材を調達しに行く時。
町が落ち着いてきて、営業を再開したスーパーマーケットへ。
店長が自らを「キャプテン」と呼び、
「太陽のシール」の美咲が働くあのスーパーマーケットだ。
そこで、美智の中学時代の同級生だった誓子と会う。
誓子は美人だが、いかにも優越感に浸りたい性格で、
美智を卑下するようなことを言って去っていた。
幸い、美智にはその意図がわからなかったのだけど、美咲にはわかっていた。

そんなエピソードが効いたのか、美智の新しい目標が決まる。
達成してしまった②の目標は、「恋人を見つける」に差し変った。

それから美智は、恋人を探しに、3人の人に会いに行く。
それは美智が読んだビジネス書にならったものだった。
「新しいことをはじめるには、3人の人に意見を聞きなさい。
まずは、尊敬している人。
次が、自分が理解できない人。
3人目は、これから新しく出会う人」
この原文があるビジネス書があったら、丸々1冊読んでみたいと思いますが。

美智にとっての1人目は、太田隆太。
高校の同級生で、同じバスケットボール部に所属していた。
2人目は、小松崎輝男。
高校生の時に、家庭教師として家に来ていた人だ。
3人目は…。

この4年間、毎日を読書に費やしていた状態を、
「疑似冬眠中」と表現しているのが印象的でしたが、
美智は、冬眠から目覚めたようです。
私もほとんど冬眠しているようなものなので、
何か目覚めるキッカケがあればなぁ、と思います。
いや、キッカケには出会ってるけど、掴んでないだけかも。

ちなみに、作中で「終末のフール」の夫婦にも遭遇。
ここでやっとこの夫妻の苗字を知ることができました。


鋼鉄のウール

キックボクシングに精を出す少年16歳。

少年がこの児島ジムに通うようになったのは、6年前のこと。
小惑星衝突の発表がされる1年前のことになる。
小学生だった少年には、1つ年上の、負かしたい相手がいた。
その上級生は板垣といい、長身で横幅もあって、
同じクラスの男子に暴力を振るっていた。
よくその現場に遭遇するたびに、不愉快な気持ちになった。
何より、怖くて何もできない自分に対しては、もっと不愉快だった。

少年は、1か月前、テレビで放送された苗場の試合が忘れられずにいた。
苗場はキックボクシングの日本王者になったこともあって、
マスコミに取り上げられていた時は、「鋼鉄の〇〇」というように、枕詞が使われていた。
確かに、苗場の身体は鋼鉄のように締まっているが、同時にしなやかさもあった。
少年は苗場の試合を見て、鮮やかな鋭い動きに圧倒されたのはもちろん、
その表情や立ち姿にも心打たれた。
そして、「苗場さんになりたい」と思った。

それから1年間、真面目にジムに通った。
練習を重ねるうちに、板垣のことなどどうでもよくなって、
ただ純粋に「強くなりたい」という気持ちだけが残った。

そんな矢先、通い始めて1年ちょっと、あの小惑星衝突のニュースが流れた。
混乱した世の中が異常事態になり、ジムへ通うどころではなくなった。
自分の部屋から出るな、と釘を刺されてしまった。
普通なら小学校を卒業し、中学生時代を過ごし、高校生になるまでの期間を、
棒に振ってしまったんだなぁ。

「世界の終末」がはじまって2年もしないうちに、
部屋に閉じこもりがちになってしまった父親。
そんな風に、あたふたと怯え切った父を見るのがつらかった。
年頃の少年にとって、これは堪えますよね。追うべき背中がいないって。
だから少年は、苗場の姿を追いかけるようになったんじゃないかな。

世界が終わる前に終末を迎えてしまったかのような家庭の様子に嫌気がさして、
市街地まで行ってみることにした。
ジムを通り過ぎようとしたところ、苗場と会長が残っていた。
ここでも、今まで通りの日常を営んでいる人がいる。

これまでの作品を通して共通として思ったのは、
大事なことは「自尊心」なのではないか、と。
世の中がパニックになった時、人々が失ったのは「自尊心」。
少年はすっかり自尊心を失った両親を見て、
自分の未来はそうならないように、自尊心を守ろうと思った。
弱い者いじめをする上級生を見て何もできない自分を許せなかったように、
こんな両親を見て何もできない自分にも許せなかったんだろう。

「おい俺、俺は、こんな俺を許すのか?」とは苗場の言葉ですが、
終末を前に「許す」というのも、キーワードなんだと思います。
「許す」という行為が、終末を前にした心の整理につながるのだろう。


天体のヨール

今にもロープで首をくくってこの世を去ろうしている中年男性・矢部。
自宅のマンションで試みたものの、失敗し尻餅をついたところだった。
再び自殺を試みようと思っていたところ、突然電話が鳴る。
相手は大学時代の同級生、二ノ宮だった。
矢部は死ぬ前に、二ノ宮に会うことにした。

二ノ宮はいわゆる「天体オタク」。
それは大学時代も、20年ぶりに再会した今も変わらなかった。
二ノ宮は20年前に、「小惑星はぶつからない」と断言した。
二ノ宮いわく、小惑星衝突などのニュースは、煽っているだけらしい。
その裏には、科学者は予算が欲しいから、と。
「危険を煽って予算をもらう。」

では、いざ実際に小惑星衝突のニュースが流れたところで、
二ノ宮の見解はどうなのか?
実のところ、半信半疑だった。
小惑星が近づいてきているのは確かだが、
二ノ宮の理屈で言うと、小惑星の動きはちょっとしたことでも変わるもので、
そもそも数年先のことなんて断言できない。

だから二ノ宮はこんな風に思っている。
今回の小惑星衝突も、故意か過失かは分からないけど、
誰かがみんなを煽ることになって、煽られた世界中がみんな真に受けて、
みんなが真に受けることになったから、小惑星が落ちることになったんじゃないか。
と案外、科学的じゃない考えだった。

「鋼鉄のウール」あたりから、方舟の話がちらほら出てきます。
方舟に乗せてほしいと懇願する人もいるかと思えば、
向こうから方舟に乗らないか?と勧誘してきたり。
当然二ノ宮は興味が無くて断るのですが、
曰く、方舟があると信じて、その人員を選抜することに躍起になって、
小惑星のことを忘れようとしているんだ、と。
確かに方舟なんて一時しのぎなもので、もしそこで助かったとしても、
何もなくなった世界で、どうやって生きていくのか?
エヴァの旧劇場版のラストシーンが思い浮かびました。

これだけでも二ノ宮の観察力と考察力の鋭さがわかるのですが、
二ノ宮が観察していたのは星だけじゃなかったのです。
その観察対象は矢部であり、後に妻となる千鶴を結び付けたのも、
二ノ宮のおかげのようなものだった。

矢部と二ノ宮の大学時代のエピソードが、生々しく描かれているのが、
まるで今の荒んだ世界との対比のようで、効果的な文章だと思いました。

今の千鶴は、5年前、あの騒動が始まった中で、巻き込まれて亡くなった。
二ノ宮には、矢部が語るより前に、千鶴がもういないことに感づき、
矢部が抱えている苦悩、自殺を試みたこともお見通しだった。

一方、二ノ宮はこんな状況でも今までと変わらず、
望遠鏡を覗いて小惑星を発見しては、スミソニアンに問い合わせしようとしている。
この状況下で、スミソニアンが正常に機能しているとも思えないけど、
やっぱり二ノ宮も、今まで通りの日常を過ごしているに過ぎない。
この二ノ宮との再会が、矢部に何を思わせたのか、気になります。

「冬眠のガール」の美智もちょこっとだけ登場します。
これまでの作品も終わりが気になるような描かれ方だったのですが、
こうして後の作品で後日談がわかるというのが、心ニクイ演出。


演劇のオール

かつて役者を志していた倫理子。
私も似たような人生だったので、共感できるところがいっぱい。

大学生時代に役者を目指して上京したものの、
才能がないとわかって仙台の戻ってきたのが7年前。
その1年後=6年前に小惑星のニュースで混乱が起きた、と書かれていることから、
この作品集の中で、時間が経っていることがわかります。
おそらく、時系列順に作品が並んでいて、
最初の「終末のフール」からは約1年が経っていることがわかります。

倫理子の両親はやはり亡くなっていた。
役者への道を断念した倫理子は、面白い生き方をしていた。
これは、私みたいな役者を志したことがある人には、よくわかる話だと思う。

倫理子はいろいろな人のところを訪問しては、様々な役を演じていた。
早乙女のおばあちゃんのところでは、孫娘として。
2歳年下の亜美ちゃんのところでは、姉として。
11歳の勇也と9歳の優希の兄妹のところでは、母親として。
マンションの同じ階に住む一郎のところでは、彼女として。

これは倫理子の憧れだったインド出身のベテラン俳優にならったものでもあった。
その俳優の言葉で、
「一人の人間は一つの人生しか体験できないのに、
役者はいくつもの人生を味わうことができる」というのがあって、これには同感。
私も役者を目指してた時は、それが醍醐味だと思っていました。
そして役者でなくなった今も、人はいろんな役割を演じているものだとは思っています。
でも私はそれでは飽き足らず、今でも、2つ以上の人生を歩んでいる。
名刺が2つも3つもある感じ。
そうしないと、自分自身が保てなくて、
それぞれの面が支え合って、私をつくりあげているんだと思います。

倫理子を共通点として、登場人物たちが繋がっていくのは、
見事だと思いました!

余談ですが、役者同士でトランプゲームの「ダウト」をやったら面白いだろうなぁ。
ババ抜きもいいけど。

ところで今回も前の作品の登場人物が出てきて後日談がわかるのですが、
「最近、矢部さんの姿を見ない」という会話があって、
ちょっと不穏な気持ちと、やっぱりそうしたのか、という気持ちと複雑になります。


深海のポール

満を持して、レンタルビデオ店員、渡部修一の話。
これまでの作品でもちょこちょこと登場しては、
父の変人ぶりを披露していた。

渡部の父が屋上で作っていたもの。それは櫓だった。
最後の瞬間、少しでも高い位置にいられるように。
映画「ディープインパクト」で、隕石が衝突する瞬間、洪水に飲まれていく場面を思い出しました。

ちらほら出ていた方舟の話は、妙な団体が、妙な集会で煽っていた様子。
理路整然と誰が選ばれるとかではなく、いざとなったらその瞬間はもっと必死だろう。
誰が助かるとか決めてあったとしても、蹴落としたり、その通りには行かない。
上述の映画もそうだし、「タイタニック」でもそうだった。
あの生々しい描写がリアル。

渡部修一には中学生時代、死を考えたことがあった。
自ら選択する死であれ、運命で決められた死であれ、
2回も死に直面し、逆説的に生を考える機会を与えられた修一。
修一の迷いは、父の全く理論的でない言葉によって、払拭されているようです。
さすが、この終末に櫓を建てるだけあって、破天荒な父だ。

それにしても、終末に、レンタルビデオの延滞料金を回収しに行くとは、
なかなか面白い発想だな、と思いました。
もしかしてそれを描きたいがために、
修一がレンタルビデオ店員を営む設定になったとか!?

他作品の登場人物たちも続々登場します。
時間経過があるので、いくらか小惑星が近づいていることにはなるのですが、
各々が最後の瞬間の迎え方を想像しているようです。

渡部修一と妻・華子には一人娘がいて、その名前が「未来」なのが素敵でした。
この先の未来に、どんなことが待ち受けているのか、
未来は長かろうと短かろうと、一生懸命生きて、終わりを迎える。
人生の質を問われているような、そんな深い作品集でした。





終末のフール (集英社文庫)

終末のフール (集英社文庫)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2009/06/26
  • メディア: 文庫


あらすじを読む


タグ:伊坂幸太郎
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三文ゴシップ

純粋なソロ名義では、かなり久しぶりのアルバム。
タイトルのきっかけは、林檎ちゃんがギブソンのギター「SG」のルックスには惹かれるのに、
使ったことが無かったので、それを使ったアルバムの作品を作ってみたいと思ったことから。
SGのSから「三文」、Gから「ゴシップ」という、林檎ちゃんの好きな言葉が浮かび、
それを組み合わせたものがタイトルになりました。
通勤通学やレジャーのお供など、日常生活で聴いてもらうことを想定して制作されたアルバムで、
ジャンルは多岐に渡り、聴きやすい曲も揃っていると思います。

詳しいレビューは省きますが、「カリソメ乙女」は新バージョンが収録されています。
アレンジも然ることながら、日本語詞のバージョンは初めてかも。
まるで花魁が歌っているような粋な歌詞に惹かれます。

ボーナストラックとして、丸の内サディスティックのNewアレンジも入ってますよ。
英詞が混ざって、クラブサウンドのような大人の音楽に様変わりしています。

流行
Mummy-Dさんのラップとのコラポです。
これまた斬新!
林檎ちゃんが「流行」を追っているというイメージはないですが、
新たな流れをつくるタイプのアーティストだな、とは常々思います。

労働者
言いたいことはすごくよくわかる!
天職は何だかわからないけど、
好きなことが仕事になってる今は、
まぁ天職に恵まれたってことなのかなぁ?

密偵物語
林檎ちゃん曰く、この楽曲は「真夜中は純潔」の続編とのことです。
和製ボンドガールのイメージ。
クールで凛とした林檎ちゃんに似合うなぁ。
全編英詞の中、日本語の決めゼリフが入るところは、
まるで映画のワンシーンのようにキャッチ―で、カッコイイです。

〇地点から
図形の丸印で表記されていますが、タイトルは「ゼロちてんから」と読みます。
冒頭から「嵐が去ったあとの静けさ」とありますが、
そのとおり、落ち着いた穏やかな曲です。
私はホームドラマのような雰囲気すら感じました。

都合のいい身体
華やかなオーケストラサウンドに乗って、ファンタジックな気分。
メルヘンな雰囲気に、難しい言葉をのせるところが、林檎ちゃんらしい。
「都合のいい」っていうニュアンス、なんかよくわかる気がします。
出るとこ出て、凹むとこ凹んで、みたいな。
そんな身体がレンジでチンして手に入ったらいいよね~。

 壮大なミディアムバラード。
歌詞がものすごく深くて、メロディとともに沁みました。
「生きているうちはずっと旬」という考え方はすごくいいな、と。
いまを生きる、むしろ「活きる」のです。

二人ぼっち時間
NHK「みんなのうた」に提供された楽曲です。
お子様にも歌いやすいメロディと歌詞。
まさに、林檎ちゃん流の「ドレミの歌」です。
タップダンスの足音も聞こえてきて、
軽やかにステップ踏みたくなる!!

マヤカシ優男
きわめて和製のタイトルに反して、全編英詞。
あのSOIL&"PIMP"SESSIONSのパフォーマンスなので、
さながらショータイムのようです。
ハイセンスが溢れまくってます。

尖った手口
「とがったてぐち」と読むのですが、「口」の部分は、よく見ると、
図形の正方形で表記されています。
「〇地点から」とのシンメトリーですね。
タイトルのように、ちょっとハード系の楽曲。
事件のニュースやドラマででよく聞くようなワードが並べられていて、
ハードな印象をさらに強めています。
最後はMummy-Dさんのラップで締められます。
どんな曲ともコラボできるカメレオン的なセンスには脱帽です。

色恋沙汰
軽快なリズムに、ストリングスや管楽器の流れるようなメロディ。
ふわふわと軽やかな気持ちになります。

凡才肌
伴奏はcobaによるアコーディオンのみ。
抒情的に歌う林檎ちゃんの迫力には圧巻。
突きつけるような言葉の圧もまた。
とても凡才には思えません。

余興
はじけるようなロックで、私はみずみずしささえ覚えました。
この曲にも「生モノ」というワードが出てきましたが、
「今しかない」「今を大切にする」というのをこのアルバム1枚を通して、ものすごく感じました。




三文ゴシップ

三文ゴシップ

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMIミュージックジャパン
  • 発売日: 2009/06/24
  • メディア: CD


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BAND AGE

BAND AGE(=バンド時代)とBANDAGE(=包帯)をかけたタイトル。
なので、ジャケ写では、女性が包帯に巻かれています。
ブックレットでもメンバーがそれぞれ包帯に絡められているのが印象的です。

BANDAGE
タイトル曲。
込められたダブルミーニングは上述の通りだと思いますが、
包帯って何となく痛々しいというか、
病んでる象徴みたいなイメージがありますが、、
この作品では、弱ったところを隠すプロテクターのようなイメージなのかな?
これまでに負ったダメージを受け止め、未来へ進むために必要なもの。

what are you looking for?
何かを探してて、これといって見つからなくて、惰性で生きていたのですが、
そういうのはやめよう。
日々何かを刻みながら生きていこう、と思うようになったのは、
本当にごく最近です。

idealistic story
何だか身につまされる曲だなぁ。
若い頃からずっと理想を抱いてきたけど、
そろそろ妥協することも考えなくちゃいけない30代。
現実は理想どおりには行かないんですよね。
30代も半ばになって、折り合いつけた部分もあるけど、
恋愛・結婚については妥協できないな。

そして優しく
人は忘れるもの。
だけど、その忘れることができるからこそ、
救われることもあるんだよね。
悲しみを乗り越えて、優しい大人になっていく。
だから悲しみは無駄じゃないという、救われる歌です。

イカロス
小学生の時、何もわからずに歌ってた「イカロス」。
蝋で固めた鳥の羽を持って飛び立ったというのは、
その意味するところはわからないものの衝撃的でした。

forgiven
別れた相手を想う、切ない曲。
すごくシンプルなのですが、ものすごくリアルに伝わりました。
ラストで歌い上げるところは感動でした。
さすがはミュージカル仕込み!?

やめたりできない
「ぶらり途中下車の旅」の主題歌になっていて、
松岡さんも旅人として、何度か出演されていました。
ロックバンドのボーカリストが!?と意外でもあったのですが、
それまで見れなかった松岡さんの人柄が垣間見られました。

age
もうひとつ、タイトルに沿った曲。
包帯がモチーフになっています。
「傷を癒す包帯」として、やはり痛々しいイメージはなく、
包帯の包容力に焦点をあてたよう。
曲はなかなかハードでカッコイイんですよ。

Baby Smile
爽やかで、心地よい爽快な風が吹き抜けるような曲。
私にとって、SOPHIAといえば、「爽やか」なのです。
変わらないなぁ。

楽園
こちらもイカロスのモチーフが使われていますが、
あの小学生の時に歌った歌は「勇気ひとつを友にして」というタイトルでした!
今となっては、あの曲の真意がわかりますけどね。



BAND AGE

BAND AGE

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルJ
  • 発売日: 2009/06/24
  • メディア: CD


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タグ:SOPHIA
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ホタルノヒカリ 14

前巻のラストで蛍と部長の同居がバレてしまい、絶体絶命!
そこで二人のとった行動とは…。

とりあえず部長は、後輩たち3人を家にあげ、説明することにする。
蛍は適当な言い訳を考えてその場を逃れようとしたけど、
部長は堂々と毅然とした態度で、事実を伝えた!
確かに対外的には理解しにくい関係だけど、やましいことなどないのは事実で、
それは二人の会社では見られないやり取りからも伝わったものですが。
まぁでも噂が広まるのは時間の問題だよね、こういうことって。
また実際に見てみないとわからないこの関係が、口で伝わるわけもなく…。

噂は事実を歪めて、蛍の姉・揚羽の耳にまで届いてしまう。
頭に血が上った揚羽は、部長に詰め寄る。

一方、噂が広まったことを知ったマコトも、蛍のことを守ろうとする。
すっかり冷静さを失って、強引にNYへ連れて行こうとするも!?
こういうところ、まだまだだなーって思っちゃうんだけどね(笑)
私だったら絶対ヨリ戻そうなんて思わない(笑)

こうして周りに騒がれるほど、自分の気持ちに気付いていく。
特に部長がね。
それまで蛍の側にいながら、自分の気持ちに気付いていなかった、向き合ってなかっただけなのかも。
蛍には直接言わなかったけど、マコトに対して、
「アイツが一番ツラかった時、側にいたのはオレだ」なんて、もう完全に好きじゃないですか!!
素直に言えばいいのに。

そうは言ってもそうなかなか素直になれないもんだよね。歳をとればなおさら。
部長が結婚を決めた時、普通なら素直にプロポーズすればいいところ、
「現時点での互いの欲求および問題点、そして社会的責任を統合すると~」
なんて、まるで仕事をする時の言い方!
その後の結婚式の準備も、まるでプロジェクトを進めるかのように、
サクサク資料を用意して、提案して…。
さすがの蛍もついていけなかった。

結婚という結果を出す前に、気持ち伝えてないよね。
読んでる側としては、それが部長の照れ隠しなんだな、ってわかるけど、
あの部長が、気持ちを伝えるところが見たいじゃない。
なので、いざそういう場面となると、キュンキュンしちゃったよ。
完璧な部長にもスマートにできないことがあるのね。

以前、蛍が自分の恋愛観をトランプのジョーカーに例える話。
これがこの作品のわりと鍵概念になるかな、なんて思うんですけど、やっぱり私も共感できるな。
回ってくるとゲッて思っちゃって、できれば避けたいな、と思ってしまう。
部長は部長で、そんな自滅するような可能性のあるカードを使わない人生だったようだけど、その部分は私も同じ。
蛍みたいに苦手意識を持ちつつ、だけど蛍のように適当にできないんじゃなくて、
そこは部長のように使わないようにしてた。
だから蛍は、蛍なりに苦手なものにも向き合おうとしてる分すごいなって思ってて、
部長のような人の心を動かすんだから、たいしたもんだ!と思ったものです。

これだけ書いてると、これでハッピーエンドか!?と思ってしまうのですが、そうではないのです。
そこにはまた蛍らしい価値観があるのですが、それはまた次回。




ホタル ノ ヒカリ(14) (KC KISS)

ホタル ノ ヒカリ(14) (KC KISS)

  • 作者: ひうら さとる
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/06/12
  • メディア: コミック


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ゆめゆめこのじ

明治という時代の礎となった薩長同盟と坂本龍馬暗殺の二つの夜明けを、
遊郭の女を視点に描いた二幕の物語。
珍しく、女性視点の物語なんです。

この作品は、オリジナルは田中良子さんプロデュースの新作として上演されました。
きっかけとなったのは、そんな彼女の印象的な言葉だったとか。
幕末という激動の時代の中で、必死に生きてきた侍たちは、
今日まで当たり前のように描かれている。
その中で波をテーマに物語を描くのかを考えていたときに、
彼女は屈託なく、「女性はいつの時代も必死だもの、勿論今も」と笑って言ったそうです。
女性としてはすごく共感できる発言なのですが、
そんな言葉を手掛かりに、秋雪という女性が描かれました。
だから感情移入しやすいのかなぁ。

秋雪(あきみ)は京都・花街にやってきた遊女。
かつては江戸吉原で看板を張ったこともあります。

秋雪がどういういきさつでこの店にきたのかは定かではありませんが、
この店の遣手である出雲とは、昔馴染み。
この状況から、それぞれの想いと、添い遂げられない運命が容易に想像できて、切なくなりました。
お互い、自分の想いは表さないけどね。特に秋雪は。

このお店にもいくつか決まり事があって、秋雪も出雲から一つ一つ教わっていく。
その中で唯一、秋雪の心を動かしたもの。
それは遊女のことを「ゆめ」と呼ぶことだった。
もちろん「夢」という意味も込められており、タイトルの「ゆめゆめこのじ」とは、
「遊女」と「夢」との掛詞だったのです。
相変わらず、言葉選びの粋なことといったら!!

それから、出雲が秋雪に伝えた、大事な決まり事がもうひとつ。
毎朝、必ず部屋の障子を開けること。
そして、そこから見える景色を焼き付けること。
そこから何が見えるのか。
それは「夜明け」なのかもしれないし、「海」なのかもしれない。
答は、この作品を通して、それぞれが考えることなんだと思います。
なので、演者によっても異なるだろうし、観客それぞれにも解釈があるでしょう。

秋雪の面倒をみた二人の太夫、水狼花(くじばな)太夫と香海(さらめ)太夫。
遊郭といえば上下関係やしきたりに厳しいイメージですが、
水狼花はいかにもそんなイメージの遊女。看板ともなると、さすがの風格です。
香海は対照的に優しい感じ。

二人とも、歴史上重要な人物にとってのキーパーソンでした。
水狼花は西郷隆盛が懇意にしていて、香海は桂小五郎が懇意にしていた女性。
この二人が出会って同じお店で出会ってしまったら、
薩長同盟が結ばれてしまうのでは!?
もしそうだったら、この国の歴史は、遊女が創ってきたといっても過言ではないのかもしれない。

それは、坂本龍馬が懸命に考えた作戦でした。
そのための文をしたためているのですが、そのロマンチストぶりときたら!!
薩摩と長州を恋仲に見立てて引き合わせるなんて。
遊女たちよりも、龍馬の方が女々しいのでは!?なんて思ってしまうけど。

ところが、せっかくしたためた文がなくなってしまう…。
あろうことか、その文を龍馬のいいなずけであるおりょうが拾ってしまう。
てっきり恋文と勘違いしたおりょうは、龍馬が浮気していると思い込む。
そして、龍馬本人のもとへ乗り込んでいくというドタバタ劇。
本人は気づいていないのですが、歴史的大物を巻き込んでの大騒動です。
修羅場になるのかと思いきや、天然キャラが揃っていたおかげでひょんな方向に。

これで終われば喜劇なのですが、そうは行かない。それは史実からもわかる。
そう、龍馬は暗殺されるのです。
このわかりきった史実は曲げられないのですが、女たちが動かしてきたという軸の中で、
それはどう描かれるのか!?
結末は言えませんが、圧巻でした!!


同じ時代を描いた作品として、ついTEAM NACSのLOOSERと比べてしまうんですよね。
比べるといっても優劣をつけるのではなく、アプローチの仕方を比較するのですが。
そうすると共通点が見えてきたりして、面白いなって思います。

中でも興味深い共通点を感じたのは、桂小五郎の変装好き。
LOOSERでは、音尾さんが魚に擬態してたりしたけど、
この作品では乞食に身をやつしてたり、バレそうになると「にゃー」と言ってごまかしたり。
実際に変装ばっかりしてたのかしら!?と疑いたくなってしまう。
どちらの作品も、教科書に載らないところに焦点をあてて、
それは空想も含まれるかもしれないけど、歴史を身近なものにしてくれているので、楽しめます。

全くの余談ですが、以前私が芝居をかじっていた時に、舞台で遊女の役をいただいたことがありまして、
その時にイメージしたのが、田中良子さんの秋雪でした。
あんな風に凛とした姿にはなりきれなかったかもしれませんが、
芯の強い女性でありたいな、と表現した覚えがあります。



ゆめゆめこのじ

ゆめゆめこのじ

  • 作者: 西田 大輔
  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2009/06/01
  • メディア: 単行本


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タグ:西田大輔
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∞Octave

藤木さんのCDデビュー10周年を記念したアルバムです。
なのでジャケット写真には、ケーキや愛用のギターに囲まれていて、
お祝いムードたっぷりな雰囲気になっています。
実際には「10周年を記念したツアーに向けたアルバム」と意識されていたそうで、
そのライブでやって、ファンのみんなに喜んでもらえる曲が詰まった作品にしたかったそうです。

アルバムタイトルは、1オクターブ8音の音階を意味しています。
∞がついているのは、音階って切れ目なくずっと繋がっていて、無限なんですよね。
そんな風に今まで続いてきた10年があって、この先も続いていく、というような、
意味合いが込められているのかな、と思いました。


Steppin' Stone
Aメロの歌詞が具体的で、男性陣に共感を呼びそうな歌詞なのですが、
コメディタッチで、女性としては面白いです。
石が転がるように、あれよあれよと時間が経ってしまう日々。
「人生、山あり谷あり」で、何だかんだいって10年もすぐ経ってしまうのかも!?
そういえばこのブログも始めて10年なんです。
そんな毎日ストイックに続けてるわけじゃないけど、あっという間だったなぁ。

CRIME OF LOVE
藤木さんが松本清張作品に挑戦した主演ドラマ「夜光の階段」の主題歌です。
ドラマの世界観とリンクした歌詞は、藤木さん自身が書き上げました。
主人公の「佐山道夫」については藤木さんがいちばんわかっているし、
その世界観を責任を持って描きたい、と。
佐山の中にある純粋さや情熱、人を殺めてしまう危うさみたいなものを表現するために、
いつもより少しとげとげしい、激しい言葉も入れられています。

ドラマの制作サイドの意向も汲みながら曲を選んで行き、
最終的に絞られた候補曲の中からこの曲が選ばれたのは、
耳に残るメロディ―だったのと、これまであまり歌ってこなかった歌謡曲っぽさがあったから。
確かに、ドラマの終わりに流れるこのメロディーは、かなり印象的でした。
大人っぽく聴かせたい、というリクエストがあり、スパニッシュなアレンジになったそうです。
情熱的なラテンと、内に秘めた闘志のようなものが、とてもリンクしているように思えました。

松本清張作品は時代に合ったようにリメイクされながら様々な作品がありますが、
どこかレトロな部分も残しているので、ついついハマってしまいます。
藤木さん演じる、二面性のあるカリスマ美容師にも、くぎ付けになりました。

KISSの代償
大人の落ち着きを備えた、儚い曲。
切ないメロディーに切ない言葉がのっていて、何だかザワザワします。
冷静に歌詞を読んでしまうと、私には難しくて(笑)大人だなぁ。
女性コーラスの雰囲気がすごくムーディーで、こんな感じの大人の女性像なんだろうな。

星屑の海
大切な人への想いが溢れている曲。
こんなに想われているなんて、幸せ者です。
ストレートに言われることはそうそうないかもしれないけど、
こうして歌にでも込められると、キュンとしちゃいますよね。

恋人
一緒にいる時間が長くなって、夫婦のような関係になった恋人って、
こんな感じかな?という、リアリティのある曲。
「恋人のような夫婦」ってよく言いますけど、
結婚したとしても、ずっとこんな気持ちを抱き続けられるのは理想ですよね。

ESCAPE!
独特なイントロが耳について離れない、スタイリッシュな曲。
スマートさが今の時代に合ってると思います。

LOOP
二人の絆がLOOPになぞらえて描かれた曲。
ちょっと哲学的なところが、
落ち着いたミディアムナンバーに合います。

奇跡のロックスター
まるでアイドルみたいな、ポップな曲。
かわいさ全開です。
まだまだこういう路線も行けますよ(笑)

モノクローム
出会いと別れ繰り返す意味を解った時。
10年間、今も繋がっている人もいれば、いつの間にか連絡とらなくなっちゃった人もいる。
SNSのおかげで直接会わなくても情報だけは入ってきたりもしますが。
ほんと、人と人とのつながりは不思議ですよね。

個人的には、ちょうど10年くらい前になりますか。
何の確証もなく描いた夢に向かって立ち向かっていたあの頃。
それは確かに私の中に軌跡として残っていることでしょう。
今も野望は忘れてないよ。

Sounds Of The Sun
南への二人旅を描いた曲。
太陽や空、砂の感触などの描写が細やかで、
まるでアルバムをめくっているかのようです。
暑い夏の思い出に。

いいんだぜ~君がいてくれれば~
藤木さん主演の「イケ麺そば屋探偵~いいんだぜ!~」の主題歌でした。
原曲の作詞、作曲はともに故・中島らもさん。
ところが、原曲はそのままでは放送できない歌詞が含まれているため、
出来るだけ元の歌詞を残してほしいという遺族の意向に沿うよう、
藤木さん自身が歌詞をアレンジしました。
あらゆる人を肯定できる歌になっていて、
肩ひじ張らずに聞ける、緊張を解きほぐしてくれる曲です。

主題歌となったこのドラマは、藤木さんの曲がところどころに使われていて、
ファンにとってはそれだけでも楽しめる作品でした。

月世界
とても綺麗でロマンチックな曲。
ロミジュリとかピーターパンのウェンディのように、
窓から夜空を眺めてる光景が浮かんできました。

Octave
アルバムの最後となったこの曲は、さりげないものにしたいと考えて作られたのだそうです。
1コーラスだけの曲なのですが、タイトル曲らしく、
この短いフレーズの中に、アルバムのコンセプトとなった思いが込められています。
10周年を迎えた藤木さんの心境がありありとわかる!!




∞Octave

∞Octave

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 2009/06/10
  • メディア: CD


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タグ:藤木直人
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