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Dr.コトー診療所 22

前巻で島にやってきたミナの夫、柚原。
彼は島に良からぬものをもたらそうとしていました。
しかしその思惑も、とあるアクシデントで立ち消えに…。
柚原は大けがを負い、診療所で治療をすることに。

そんな中、ゆかこの息子が崖から落ちて溺れかけてしまう。
悲鳴を聞きつけた柚原の行動に、彼の人間性を垣間見る。
柚原は本当に根っからの悪人なのか?

確かに柚原の起こした事件は許されるものではないし、罪になる。
だけどコトー先生は「島の力」を信じていました。
この島に来ると何故かみんな元気になってしまうという、島の力。
彩佳さんのお父さんの末期癌も治っちゃったし、
かつてのコトー先生も、この力に癒やされました。
コトー先生曰く、その島の力とは、ここに住む人達の気持ちが、
島中に満ちているからじゃないか、と。

さて、そんな島民たちの気持ちは、柚原にも響くのでしょうか。
犯してしまった罪はしっかり償ってほしいものです。


この巻は、さらにショッキングな内容が続き、なかなかヘビーでした。
それは、星野家にまつわる話。
彩佳さんは医師を目指して本土へ。
花屋で住み込みで働かせてもらいながら、勉強に励んでいました。

一方、島に残った父・正一さんと、義母の典子さんは…
膠原病と闘病していた典子さんがついに力尽きてしまいました。
看取りの場面は、昨年祖父を看取った時のことが生々しくよみがえってしまって…。
その日の朝までは普通に話してたのに、突然逝ってしまったのです。
祖父は悟っていたのかもしれないけど。
あの瞬間を体験して、当人はどこまで意識があって、どうなってしまうのかなって、
想像することもできないだけに、不思議に思います。

その頃、彩佳さんはセンター試験の本番。
だけれども、試験どころではない出来事に巻き込まれてしまう…。
それは彩佳さんが住み込みでお世話になってる石平さんの家族にまつわるお話。

家族の死を受け入れるのは容易ではない。
私も祖父が未だにどこか旅をしているんじゃないかって、
ピンとこない部分もあります。
そんなだから、幼い子にとってはなおさら。
時間をかけて徐々に受け入れていくしかないのでしょうけど、
よく言われることかもしれませんが、「いなくなった」のではなく、
「家族の中で生きている」と考えることが大事なんだと思う。

それにしても、彩佳さんに、重たい出来事を詰め込み過ぎな気がします。
見てて辛くなるよ。



Dr.コトー診療所 22 Dr.コトー、駆ける。 (ヤングサンデーコミックス)

Dr.コトー診療所 22 Dr.コトー、駆ける。 (ヤングサンデーコミックス)

  • 作者: 山田 貴敏
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2008/02/05
  • メディア: コミック


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死神の精度

実は、私が初めて読んだ伊坂作品になります。
「死神」とか、いかにも私好みのタイトルに惹かれて、
読んでみたらストライク!!
人の死を司る死神のストーリーは、
まさしく私が読みたいストーリーそのものだったのですが、
それだけではなく、独特の伊坂さんワールドにもハマリ、
それから伊坂作品を全て読むほどハマったのでした。

こちらの作品は、死神・千葉が担当する案件ごとの短編集となっています。


死神の精度

この作品のインダクション的なお話。
死神なんて現実離れした存在を持ち込むには、説明が必要ですよね。

死神の仕事は対象の人間の調査を行い、
「死」を実行するのに適しているかどうかを判断し、報告をする。
ただそれだけのこと。
対象の人間がどうやって選ばれているのかは死神自身もわからず、
それは別部署の仕事だからです。
死神が所属するのは調査部ですが、
まるで会社のような組織があって、部署が分かれているのが親近感わきますよね。
調査というのはたいしたことではなく、
死の1週間前に対象の人間に接触し、何度か話を聞き、
「可」もしくは「見送り」と書くだけ。
しかも、その判断基準は、死神個人の裁量に任されているという。

死神・千葉が今回担当するのは、藤木一恵。
大手電機メーカーの本社に勤務し、苦情処理の電話を受けている。
私もコールセンターの勤務は長かったけど、100%苦情の内容ではなかったので、
まだいい方だったのかな~、なんて思ったり。
でも、苦情の電話はできれば受けたくはないもの。
自分が悪いんじゃないってわかってても、つい相手に引きずられてしまうというか。
苦情ばっかり聞いてると、だんだん何のために仕事してるのかわからなくなったり。
好きで入った会社であれば、苦情でも貴重なお客様の声として受け止めることができるんでしょうけど、
私の場合、望んだ仕事ではなかったので…。
そもそもが他にやりたいことがあって、生活を支えるためのお仕事だったのです。
でも、せめて何かプラスになることがあればいいなって、
声を使うコールセンターの仕事をしたんですよね。
5年以上コールセンターのお仕事したけど、声のお仕事のご縁はなく、
藤木一恵のようなドラマはなかったな。


死神と藤田

今回、千葉が担当するのは、藤田という中年の男。やくざ、ということらしい。
死神の仕事柄、やくざと遭遇することはよくあるらしい。
そりゃそうだろうな、と納得。
というのも、自殺や病死は死神の管轄ではないが、
事件や事故死は死神が絡んでいるからだ。

ところで、死神の中にはろくろく調査もせず「可」と報告する者も多い。
藤田に関しても、極端なことを言えば、会わずに報告してしまってもよいのだが、
千葉はそうしなかった。
たとえ報告が「可」になると決まっていたとしても、やるべきことはやる。
真面目というか、律儀なタイプのようです。
そんなわけだから、こういう任侠の世界でも馬が合う(?)ようですね。

さて、藤田は栗木という別の組に属するやくざを探していた。
その栗木の情報を提供することで、千葉は藤田へ近づく。
もちろんこれも千葉を派遣するにあたり、情報部が用意した材料です。
調査するにしても、きっかけがないと対象と接点をもてないですから。
ちなみに、死神の外見も、案件ごとに、対象を惹き付けるのに適したものに変わるそうです。
名前は変わらないんですけどね。

藤田が栗木を探すのは、よくあるやくざ間の揉め事。
藤田の兄貴分が栗木に殺された。
だから、筋を通すために、藤田が栗木を殺す。

千葉が来たということは、藤田に死期が迫っているということですが、
ここで千葉が気になる質問をする。
恐らく人が一度はやくざに聞いてみたい質問なんじゃないかな。
「死についてどう思うか?」
実際のところ、どうなのかはわかりませんが、この作品での答えは、
「死ぬことよりも、負けることの方が怖い」
なるほど。こういうイメージあります。

やくざとか任侠ってどういうものなのか全くわからないのですが、
「弱きを助け、強きをくじく」
やくざとは元々そういう役割だったらしいです。
弱者はたいてい、国や法律に苛められる。
それを救えるのは、法律を飛び越えた無法者。
無法者というと悪いイメージしかないけど、
それが弱きを助けるってことになり、やくざなんだと。
これは藤田が部下の阿久津に教えた言葉です。

そんな藤田は、ある意味、ロックンロールに近いのかも。
藤田の生き様をしっかり見届けたい作品です。


吹雪に死神

舞台は洋館。
そこに数名が集められ、何人かが死んでいく、という王道のミステリー設定です!

今回の担当は、田村聡江。
千葉は、吹雪でどうにもならず避難してきた、という体で洋館を訪れるが、
最初の被害者、田村聡江の旦那である田村幹夫が亡くなる。
この夫婦は旅行で訪れていたそうです。
宿泊者は他に、権藤、英一、真由子。
いずれも当選葉書が送られてきて招待された客で、
権藤と英一は親子、真由子は女優の卵のようなことをしており、
到着が遅れている彼氏を待っていました。
そして、洋館には雇われた<童顔の料理人>がいて、
これで登場人物とプロフィールが出そろいます。

王道ミステリーの常で、この後、また一人、二人と登場人物が殺されながら、
残った中で犯人を探していく。
千葉にしてみれば、誰が犯人だろうと興味はなかったでしょうが、
読者のためにサービスです。
まぁ、千葉にとっては然るべき調査に過ぎないのかもしれませんが。
ただ、そんな千葉にも予想できなかったカラクリがあり、物語が動きます。

ミステリー好きにもご堪能いただける作品だと思います!


恋愛で死神

今回の担当は、荻原という23歳の青年。
8日目に死んだところを見届けたところで始まります。
彼に何があったのか、どんな生き様だったのか。
千葉が調査をした1週間を、1日ごとに語られます。

千葉は同じマンションに引っ越してきた、2歳上の青年、という設定。
通勤する荻原と行動を共にするうちに、古川朝美という女性と出会う。
どうやら彼女は、荻原の想い人のようだ。

きっかけは彼女が荻原の働くブティックへ客としてやってきたことだった。
彼女は荻原のことには気づいてなかったが、いい雰囲気で関係が進んでいく。
一方、彼女はトラブルにも巻き込まれていた。
知らない男に電話番号から住所が割り出され、怯えていた。

荻原と古川朝美の関係がちょっとずつ進むにつれ、キュンキュンしていたのですが、
盛り上がっていく中で、千葉が来てからの7日目を迎えてしまう。
そんな酷な…!やっぱり死神なんて残酷なんだ!と思ってしまいがちなのですが、
そこにはちょっとした救われる事情もあって。
伊坂作品はやっぱりバッドエンドにはならなかった。
伊坂さんは死神じゃなかった!と勝手に思いました。


旅路を死神

今回の担当は、森岡耕介。
ナイフで人を刺した後、千葉の運転する車へ乗り込んできたという、
物騒な始まりですが、千葉は当然驚かない。
国道六号から北上する旅が始まった。

国道六号とは、私の地元も走っている国道なので、とても身近な道路なのですが、
北の果てでは阿武隈川を通り過ぎるとは、知らなかった。
そして橋を渡るとすぐに国道四号と交わるのですね。
免許持っててもほとんど運転しないので全く知らず。

森岡は十和田湖、奥入瀬を目指していた。
そこに森岡が会いたい男、深津がいるからだ。
深津というのは、森岡が少年の頃に誘拐されたことがあり、
その誘拐事件に関わっていた者らしい。
森岡はその誘拐での恐怖体験に捉われた20年間を過ごしてきたのだと思う。
道中、いろいろな人や出来事に遭遇することで、少しずつ誤解のパズルが解けていくのと、
それを象徴するかのように現れる十和田湖の様に、想像するだけで感動します。

やっぱり旅はいいよね。人の心を変える力がある。
作品に影響されたわけではないですが、十和田湖は行ってみたいな。

ところで、道中、「重力ピエロ」の春に出会います。
場面としては放火事件1件目の日、燃えたソフト会社の斜向かいの駐車場の兵に、
「GOD」と落書きをしていた。
「重力ピエロ」を読んだ人にはすぐわかる場面ですね。

結構、長い間登場していて、千葉との絡みもあります。
そこで千葉が「どうして、人間は、人を殺すんだ?」と核心をついた質問をする。
「重力ピエロ」の読者にとっては、この時の春の気持ちが読み取れるし、
伊坂さんからのサービスかな?なんて思ったり。
この時の春の回答を踏まえて「重力ピエロ」を読むと、また読みが深まります。

また、この回答とは別に、春はこんな発言もする。
「人間独自のつらいことの一つに、幻滅、がある」
それは、頼りにしていた人間が、実は臆病者だったとか、
言われてみれば人間独自に感じる苦痛なのかもしれない。
自然や動物には、そういう裏切りはない。
だから私も動物が好きだし、大自然を見ると落ち着くのかな。
そんなこと言われるとますます旅したくなっちゃうよね。

この発言もまた、重力ピエロを読み返すと興味深い発言に聞こえます。
そして、森岡の過去へのトラウマに対しても、千葉を通して影響を与えるものでした。


死神対老女

今回担当するのは、新田という老女。
何と、彼女は千葉の正体に気付いていました!
不思議なことに、まわりのの知り合いを、交通事故だとか予期せぬアクシデントだとか、
いわゆる死神が関わる死によって亡くしている。
なので、死神に会っていたとしても不思議ではない縁の持ち主です。

ところで、短編集も最後の一編となりましたので、
千葉について語りきれなかったことを、もう少し書きたいと思います。

千葉が仕事をする時はいつも雨。いまだ晴天を見たことがないのです。
果たして最後まで雨は止まないのでしょうか。

それから、千葉を含む死神が偏愛するのがミュージック。
ろくに調査もせず、CDショップの視聴機の前で時間を潰す同僚もいるほど。
それに比べたら千葉は仕事してる方なんですが、
カーステレオでもラジオでもラジカセでも、機会があればミュージックを聴く。
「ミュージック!」とはしゃぐ千葉の姿は何とも可愛らしい。
しかし、今や配信で音楽を聴く人が増えて、CDショップが減ってきているので、
死神もさぞかし困っていることでしょう。
かく言う私も、このご時世で律儀にCDを買っている人で、
iPodに落として持ち歩いています。
なので移動中は音楽がお供なのですが、今そのiPodが壊れてしまって、困っています。

ちなみに、千葉が言うところのミュージックとは対極で、
人間の発明した最も不要で、醜いものは「渋滞」だそうです。
車に乗らない私は「通勤ラッシュ」かな。
どうして人は同じ時間に集まるのだろうか。

何気なく綴られてきた6編の作品ですが、実はかなり時間が経過しているのです。
1つ目の作品から大体50年くらい?死神に時間の概念がないからこそ、為せる技なのですが。
それも、1話目に登場した藤木一恵のその後が語られることでわかる、という粋な演出。
彼女は千葉が珍しく「見送り」にしたこともここでわかります。
また、この老女の過去を知った時が、この作品最大のアハー体験だったんですけど、
物語の最後がこの老女のお話で良かったと思います。

詳細は是非、ご自身で読んで体感してみてください!



死神の精度 (文春文庫)

死神の精度 (文春文庫)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/02/08
  • メディア: 文庫


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