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大奥 7

江戸中期は意外に血腥い時代、と言われる通り、
大奥を題材にしたドラマでも、この時期のことはよく描かれていると思います。
それを象徴とするような事件が、江島生島事件。
この事件のことは教科書ではあまり触れられてないと思いますが、
ドラマで知りました。
このエンタメ界では有名な江島生島事件が、男女逆転の大奥で、
どのように描かれているのでしょうか。

この頃、六代将軍・家宣が亡くなった後、
七代将軍には家宣の子の家継がついていたが、年はわずか4歳。
幕閣の老中たちの関心は、次の八代将軍の候補に向いていた。

もともと家宣に仕えていた間部詮房と新井白石は、
家宣の意向に従い、尾州の吉通を推していた。
ところがその吉通はある日の夕食後、不審な死を遂げる。
二人は吉通の弟の継友にかけることになる。

一方、実はこの時代の老中達の多くは、
五代将軍綱吉時代から老中だった大名達なのであった。
この幕閣の者たちは、紀州の吉宗を推していた。

この対立に巻き込まれるように、大奥も二派に分かれている。
ひとつは、現将軍家継の実父である、月光院。
この人は尾州を…というより、間部詮房についていた。

そして、もう一方は、家宣の御台所であった天英院。
こちらは紀州を推しており、幕閣に味方していた。

大奥では、月光院に仕える者と、天英院に仕える者が、
にらみ合いをきかせていたという、わかりやすい構図で、
なんともドラマとして描きやすい設定!
この下地があった中で、あの「江島生島事件」は起こるのです。


亡くなった六代将軍徳川家宣の側室で、
現七代将軍家継の父である月光院と、
月光院付きの御中臈から御年寄になった大奥総取締の江島。
この時代、江戸城大奥の頂点に君臨するのが、
この二人の男でした。

一方、天英院付きの御中臈となっている藤波は、
見苦しいほど、月光院と江島に突っかかる。
しかし、二人の性格もあってか、張り合うことはなかった。

そんな中、天英院は藤波に、江戸に芝居にも観に行って来たらどうか、と提案する。
藤波はこれに大ハマリ!
やがて、大奥の御中臈達が御台所や側室の代参として、
歴代の将軍の霊廟のある増上寺や寛永寺に参詣した帰りに、
芝居見物をするのは当たり前になった。

芝居=歌舞伎ですが、男女逆転の大奥、役者ももちろん女です!
二代目市川団十郎も女。
しかし、ひときわ人気が高かったのは、山村座の生島新五郎だった。
藤波の目的は生島新五郎そのものであり、芝居見物のあと、よろしくやっていた。

それをどこかで聞きつけた月光院は、江島にも同様に代参と、
生き抜きに芝居見物にでも行ってくるように勧める。
真面目な江島はきちんと増上寺で役目を果たし、気乗りしないまま芝居小屋に向かったが、
生島新五郎を一目見た途端、惹かれてしまった!
この日を境に江島は山村座を足繫く訪れるようになる。
しかし、そこは真面目な江島だけあり、しっかり門限は守っていた。

大奥の男達には、守らなければならない3つの門限がある。
ひとつ目は江戸城と場外をへだてる平河御門。
そして、表と大奥を区分する重要な門である御錠口。
この御錠口は暮れ六ツ(=午後六時)には、
それを知らせる太鼓の音とともに閉じられてしまい、
一度閉じれば将軍ですらみだりに往き来はできない。
従って御錠口の門限に遅れることは許されない。
最後に、大奥内部にある長局への入り口を七ツ口と言う。
名前の通り、七ツ口も門限は実は七ツ刻(=午後四時)であるが、
役人に融通が利いたので、七ツ口の刻限を気にする者は少なかった。

そんな中、月光院の部屋付きの者たちは、その七ツ刻の門限すら、
きっちり守って帰ってきていた。
そこには江島というトップの人柄が表れていると思う。

そんな堅物な江島にもちょっとくらいハメを外してもらっても良いのでは?と、
部屋の者たちが人肌脱ぐことになる。
江島が生島新五郎にご執心なのはわかっていた。
それで、芝居見物の後、江島が茶屋で生島新五郎と会えるように、
お膳立てしてあげようと、月光院に相談することになった。
月光院は快諾し、七ツ口の役人に話を通してくれることになった。

舞台は整って、茶屋で生島新五郎を前にした江島はガチガチに緊張。
江島にはコンプレックスがあった。
それは毛深いこと。
それがもとで過去に縁談が破談になったり、幼い将軍からも避けられる始末。
だけど生島新五郎は、男が毛深いことなど当然と言い、平然と受け入れた。
いい雰囲気になりかけたが、それ以上進むことを拒み、暮れ六ツには帰城した。
この夜が、江島の生涯の中で最も幸せな夜となった。
布団の中でくるまって涙を流す描写が、最高に切ない伏線でやりきれないです。

朝から雪がしんしんと降る二月の事。
江島のもとを役人が訪れた。
大奥総取締という要職に就きながら、月光院の代参の帰途、
山村座にて遊興に耽り、七ツ口の門限に遅れた事。
この罪によって、江島及び江島の部屋の男衆達全てに暇が出され、
大奥から追放されることに。

一方、生島新五郎もまた、芝居の最中の舞台上で捕まってしまう!
江島との密会の容疑をかけられていた。

捕えられた江島と生島新五郎を待っていたのは、厳しい取り調べだった。
男女逆転の設定での拷問シーンも、なかなかキツイものがありますね。

結局、江島は死罪を言い渡され、生島新五郎は三宅島に流罪となる。
月光院から天英院へのはからいの結果、江島は罪一等を減じられて、
信州高遠に永遠流となるのだが…。

読者からしたら、これは謀だってすぐわかるのですが、
真の狙いは、月光院と真部詮房との関係性だったようです。
月光院の女々しいほどの真部詮房への想いの綴られ方が絶妙でした。

江島のように、出世欲がなく、忠誠心の強い者は、大奥でそうそういないと思いますが、
まさしく、正直者が馬鹿を見る話。
男女逆転のおかげで、その理不尽さが際立ったと思います。

こうして、江島が失脚し、その後の大奥総取締には藤波がなり、
将軍も8代吉宗になります。
1巻で吉宗が没日録を手にするところにやっと繋がるのです!
ここまでの記録を読んだ吉宗がある重要なポイントに気づくのですが、
徳川の長い歴史の中で、ターニングポイントとなるのは、やはり吉宗なんだな、と思います。



大奥 7 (ジェッツコミックス)

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  • 作者: よしながふみ
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2014/08/28
  • メディア: Kindle版



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