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フィッシュストーリー

表題作を含む、中篇集。
今までの作品に登場したあのキャラ達が続々登場します。


動物園のエンジン

ある10年前の回想の話。
主人公の名前はわからないですが、大学の先輩だという、
「河原崎」という男性と一緒に夜の動物園に行った時の話。
「河原崎」という名前には聞き覚えがあり、ラッシュライフにも登場していました。
新興宗教団体の信者で、バラバラ殺人に加担してしまったのですが、
その人とはあまりに性格が違う。
読み進めていくと河原崎先輩は、後に自殺することになる。
そういえば、「ラッシュライフ」の河原崎青年の父親は自殺している。
とすると、今作の河原崎先輩は、「ラッシュライフ」の青年の、
お父さんなのかもしれません。
そうそう被る苗字じゃないしね。

いきなり脱線してしまいましたが…。
灯りの消えた動物園で、動物たちの気配を感じる。
今でこそ「夜の動物園」に入る企画があったりしますが、
やっぱり普段見られない夜の動物たちの姿って興味ありますよね。
今作では恩田という、主人公の大学の同級生であり、動物園職員でもある男のおかげで、
入場することができた。

その夜の動物園で、男が一人、うつ伏せで倒れていた。
男は永沢という元職員で、恩田の先輩にあたるのだが、今は無職らしい。
この動物園では二年ほど前に、シンリンオオカミがいなくなった事件があった。
その責任を感じて、永沢は職員を辞めた。
それからの永沢はノイローゼになったようで、妻とも離婚してしまった。

永沢は動物園が大好きだった。
『動物園に行こう。休日をライオンと』なんていうビラを作ったりしたそうだが、
個人的にこのフレーズ、いいなって思います。
永沢が動物園を辞めて、寂しいと思ったのは動物たちも同じ。
永沢が動物園にいた時から、永沢が夜勤でいると明らかに違っていて、
動物園全体にエンジンがかかった感じになるのだと。
いわば「動物園のエンジン」!

その翌日も、恩田に頼んで夜の動物園に行ってみる。
「エンジン」と言われる永沢がいなくなると、動物園の雰囲気が変わるという。
それが見たくなったのだ。
朝7時になって、永沢は動物園の敷地から出て行った。
すると確かに、「エンジンが切れた」。

その翌日も夜の動物園に3人は集まったのだが、
その日の朝方、一度別れた後、河原崎は永沢の後を追っていたらしい。
すると、マンションの建設予定地へ行き、建設反対運動をしてるグループに混ざって、
プラカードを持って立っていた。
ここから推理ゲームが始まる。
何のためにやっているのか。
その答えは読んでみてのお楽しみにしますが、
それにしてもこの永沢という男は一体いつ寝てるのだろう?
動物園のエンジンになれるくらい慕われるのはうらやましいことですが。

ところで、久し振りに「オーデュボンの祈り」の伊藤が登場します。
主人公や恩田とは、大学時代の共通の友人なんだとか。
ソフトウェア会社を辞めてコンビニ強盗をやって逮捕されて、逮捕後に逃走までして…
というのは知られていたけど、さすがに奇妙な島に行ったことは知られてないのでしょう。
その伊藤に電話で推理ゲームに参加してもらうというのが、
昔からの読者には憎らしい演出。


サクリファイス

こちらは「ラッシュライフ」で人気の黒澤が主人公。
探偵と泥棒、2つの顔を持つ黒澤ですが、今回は「探偵」としてのお仕事だそうです。

依頼内容は、山田という男を捜すこと。
仙台市内に住む、53歳の男性で、2週間前から行方が分からなくなっているらしい。
依頼してきた男の印象から、山田も礼儀正しい生業で生活をしている男だとは思えなかった。

そうして黒澤がたどり着いたのが「小暮村」。
これにもしっかり裏があります。
黒澤は依頼を受けた後、本業(?)で使うための技術を発揮し、
山田の住むマンションに忍び込んだ。
すると、部屋の隅に残っていた古いPCを見つけ、興味深い情報を入手する。
それが、インターネットを閲覧した履歴情報で、
半月ほど前に「小暮村」という名前を検索した形跡だった。

かくしてたどり着いた小暮村は、古い風習にとらわれた、小さな村だった。
最初に出会った「第一村人」が、柿本という自称彫刻家の男。
60歳を過ぎても、自分の未来にまだ期待を持っているあたり、
いいキャラだな~と思ってしまいました。

そんな柿本から、村にまつわる重要なキーワードを教えられる。
新参者にもわかる、これだけおさえておけば、「小暮村」についての知識はバッチリ。
それが、村のキーパーソンは、村長の盤陽一郎と、大工の周造。
そして、村の重要な風習が「こもり様」。

「こもり様」というのは江戸時代から続く、この集落の風習。
当時は山賊が出て、通行人を襲っては荷物を奪って、
時には村にもやってきたらしい。
女が襲われたり、田圃が荒らされたり、大変だったそうな。
その時の村長が、いけにえを捧げる夢を見て、それを提案した。
山賊の被害に困り果てた村人は、その生贄案に賛成した。
ひとりの女が生贄に選ばれ、洞窟に入った。
洞窟の外に岩を置いて、閉じ込めた。
村人たちは逃げるようにその場を去って、しばらく岩壁には近づかなかった。
やがて女は死んだ。
生贄としての立場をまっとうした女は、村中で祭りが行われて、埋葬された。
以来、山賊はぱったり現れなくなった。

それ以降、この村では、困ったことがあれば、生贄をこもらせることになった。
では、その生贄はどうやって選ばれるのか。その選び方がまた独特。
まず、集落の住人が、集会所に集まる。
そこで、円陣を作るように座る。
そして、大きく長い数珠を全員で握って、
その数珠をみんなでつかんで、歌に合わせて、時計回りに回していく。
数珠には1箇所だけ大きな珠がついていて、
歌い終わった時にその部分を持っていた者が、「こもり様」となる。
まさに「かごめかごめ」の世界。
ただし、歌う回数が1回だと、毎回円陣の同じ場所が当たりになるのがわかってしまうから、
歌う回数は、村長がサイコロを振って決める。

昔はこれで本当に運命が決まってしまうのだから、さぞかし恐怖だったに違いないでしょう。
今は形式こそ同じものの、実際に死ぬわけではない。
今のこもり様は、岩壁の洞窟に、5日とか10日とか、決められた間だけ閉じこもっていればいい。
その日数もサイコロを振って決める。
出口は塞がれるが、「用意様」と言って、食事を運ぶ係がいる。
たいていはこもり様の家族が務めるが、いなければこもり様本人が指名する。
人は出入りできないが、小さなお盆くらいなら入る穴があって、そこから飯を運ぶ。
もしこもり様の具合が悪そうなら、用意様が村長に伝えるという仕組み。

このこもり様は決して定例行事というわけでなく、
現村長の陽一郎が時期を決める。
陽一郎は冷徹ではあるが、悪い人ではないらしい。
村をまとめるのに必死なのだと。
代々、この集落を仕切ってきたのが盤家であって、陽一郎も20歳の頃から家を継いでいたらしい。
昔と違って、村長は選挙で選ばれるようになったものの、
実際選ばれるのは、盤家の人間だった。
こんな小さな村でも、維持していくのは大変だのだろう。

今まさに周造がこもり様をやっている。
もう1週間になるらしい。
周造は陽一郎とは正反対で親身になってくれるタイプなのだが、
こもり様の時は山に近づいてはいけないことになっているので、会うことができないのだそう。

村の風習に従い、今回の周造にも用意様がついている。
周造は昔、恋人と死に別れたとかで、独身を貫いているので家族はいない。
それで、隣の唄子という90歳を過ぎたお婆さんが務めている。
黒澤はその唄子に会うことにした。

90歳過ぎには見えないほどしっかりしている唄子からも、村についてのいろんな情報が聞けた。
唄子おばあちゃんのバリバリの方言がカワイイ!
唄子はこもり様は最初から、村長の何らかの企みじゃないかと考えているようだ。

風習というものについての柿本の見解が見事だな、と思ったのですが、
風習というのは何かを隠すために、それらしい理屈をこじつけるのだと。
何かというのは、恐怖とか罪悪感とか、欲望とか。
そういうのをごまかすために、風習とか言い伝えとかができるのだという、
この考え方には、なるほど~っと思いました。

ところで、柿本の妻が気付いたことだが、周造がこもり様になることが多いらしい。
陽一郎と周造は、一人の女を巡って、30年前から仲違いしている、とも噂される。
こもり様はサイコロで決めているので、偶然のはずなのだが、果たして…?

他にも、「文吉事件」という奇妙な事件もあって、
それはこもり様をしていた文吉が、洞窟の中で妙な死に方をしていたというのですが、
そもそも黒澤の仕事は山田を捜すことであって、村の風習に首を突っ込むことではないんですよね。
私もこれ以上のことは、ここでは書かないようにします。

ただ、村の在り方を通して、もうひとつ学んだことがありました。
小さい村には小さい村なりの「宇宙がある」。
共同体をまとめるには、権威だけでは駄目。
統治する人間は嫌われ、恐れられ、人々を牽引していかなければならない。
そのかわり、個人個人の恐怖や不安、不満を受け止める人間も必要。
うまく従えるには、その両方のバランスを取る必要がある。
これは集団をまとめる時の基本ではないか、と。
厳しさと優しさの両方のバランスを取る。
一人の権力者でうまくできれば良いが、できなければ二人に分けても良い。

さて、いろんなことを教えてくれた柿本は、5歳年上の妻・花江と二人暮らし。
仙台で市役所に勤めていた柿本は、9年前に突然辞めて、
「俺は芸術家になる」と、この村に引っ越してきたという。
還暦も過ぎて、大変な決断だったと思う。
ただ、花江には楽じゃないことはわかっていて、そんなことよりも、
人生のうちで一度くらい花を咲かせたい、といったところかな。
それを聞いた黒澤が、かつて遭遇した老夫婦のことを思い出していた。
「ラッシュライフ」で出くわした老夫婦強盗。
この二人も「今まで真面目に生きてきたから、羽目を外そうと思った」と。
方向性は違うものの、「喝采を叫びたい」という意味では、同じなのかも。

そしてその柿本の木彫作品が奇跡を起こす。
そこで登場したのが、黒澤の学生時代の友人で、銀座の画廊で働いている佐々岡。
名前こそ出なかったものの、「ラッシュライフ」を読んだ人ならわかる人物です。
そういうところがニクイよね。


フィッシュストーリー

伊坂さんお得意の(?)、時間設定が飛ぶ構成。
あるひとつのことを軸に、タイムトリップします。
『僕の孤独が魚だとしたら』という冒頭で始まる小説と、
それを歌詞に引用した、とあるロックバンドの曲。
これらが共通で、別の時間軸の話を繋いでいきます。

まずは20数年前の話から。
雅史は自宅から片道1時間ほどの距離にある実家の帰り道で、ハンドルを握っていた。
70歳の父から突然呼び出された帰りだった。
理屈っぽい性格で、幼少の頃から正義感のある子だった雅史は未だ独身で、
27歳を過ぎた頃あたりから、両親は結婚の話を持ち出すようになった。
田舎の両親によくあるがちなパターン。

その小説のことを思い出したのは、大学時代の同級生と会った時のこと。
文学部出身の二人は、学生時代の課題でその本を読んだのだ。
友人に、その小説を引用したロックバンドのことを教えてもらった。
既に解散したバンドで、最後のアルバムに収録されている曲なのだが、
小説の文章を引用しているのもさることながら、
演奏途中で、音が切れるのが一部で話題になった。
間奏が急に途切れて、1分くらいしてからまた曲がはじまる。
レコードのジャケットには『製作者の意図によるものです』と但し書きはあるものの、
一部ではその無音の部分について、憶測が飛んだ。
そんな不自然な途切れ方だったら、さすがに私も気になると思う。

数日後、雅史は休憩時間にレコード屋へ行き、例のバンドのレコードを購入した。
それをカセットテープに録音し、カーステレオで再生する。
レコードとかカセットテープというのが、時代を感じますねぇ。
窓を開け放ち、大きな音を響かせて、湾曲した山道を運転していると、
何曲目かで、例の引用フレーズが聴こえてきた。
そして、唐突に大音量が止まった。これがあの「間奏中の無音」。
その時、どこからか高い女性の声が耳に入ってきた。
それは短く上げた悲鳴のようなもの。
持ち前の正義感のもとに、車を停めて、周囲を探してみることにした。

それから20数年後の現在。
麻美はエコノミークラスの座席で、例の文庫本を読んでいた。
家を出てくる時に、父の書斎から引き抜いてきた1冊だった。

すると、隣の席に座った男から声をかけられた。
男の名は瀬川。
彼はこの本が好きなのだという。
高校の教師になって2年目だという彼は、
体格の良さとは裏腹に、教えている科目は数学だった。

とある東南アジアの国からの帰り道。
瀬川は旅行で、麻美は仕事での帰りだった。
麻美はエンジニアで、その国で勉強会があった。
麻美は来月、その島の教会で結婚式を挙げる予定で、
麻美と瀬川の間に恋心が芽生える展開ではないのだが、会話は弾んだ。

瀬川は本当は正義の味方になりたかったらしい。
というより、そうなるべく育てられたのだとか。
それは、あの正義感の強い父親だからこそ。
中島敦の小説『弟子』から引用していますが、
「どうして悪が栄えて、正義が虐げられるのか」とは、
伊坂作品の根底に、ずーっとあり続けるテーマだと思います。
瀬川の父曰く、大事なのは職業や肩書きではなくて、
強い肉体と、動じない心、それを身につける準備こそが必要だ、と。
そのブレない精神が、何だかカッコイイです。

注目すべきは、瀬川のさらに右隣に座った老夫婦。
お金が少し貯まったので、今生の思い出に海外旅行に行ったという夫婦。
「悪いことをして貯めたお金」というので、伊坂読者のアンテナが反応するのです。
極めつけは、その後の台詞で「人生の充実」という言葉が出てくるところ。
「ラッシュライフ」で黒澤を襲った、あの老夫婦強盗に違いない!
その前の「サクリファイス」で、黒澤が老夫婦強盗の回想をするシーンがあって、
それもまた絶妙なキッカケになってると思います。
というか、それが無かったら、きっと思い浮かばなかったと思う。

さて、物語はなんとハイジャックに遭遇します!
でも結末は言わずもがな、かな。

時は再び遡って30数年前。
冒頭での雅史のエピソードから10数年前。
とある4人組ロックメンバーがレコーディングスタジオを後にし、駅へと向かっていた。
メンバーは最年長のリーダーでベースの繁樹、ギターの亮二、ボーカルの五郎、ドラムの鉄夫。

キャバレーで演奏していた彼らに声をかけてプロデビューさせたのは、マネージャーの岡崎。
しかし、彼が扱うバンドはことごとく売れない。
ただ、音楽の趣味が合うようで、彼らの敬愛するミュージシャンのことをよく理解しており、
その中には「ジャック・クリスピン」の名前もあった。
これまた伊坂作品読者にはおなじみの架空バンド。
「グラスホッパー」で岩西が歌詞をやたらに引用していたバンドです。
知名度が低く、レコードが手に入りにくいということになっていますが、
こうなると本当にいるんじゃないか、って気になってきますよね。

解散間近のバンドは、ラストアルバムの制作に入っていた。
収録曲全10曲中、9曲は録り終えていて、
残りの1曲は繁樹が歌詞を書き終えたら録音できる状況だった。
ただ彼らの音楽は理解されず、プロデューサーの谷との折り合いも良くなかった。

翌日、繁樹は電車の中で、例の文庫本を読んでいた。
2年ほど前に買ったまま、書棚に差していた本だった。
家を出る時にたまたま目に入ったので、鞄に入れてきたのだった。
ここでその本の内容がちょっと明らかになる。
朴訥とした主人公が、「俺は世界に見捨てられたわけじゃない」と強がり、
成長していく姿に引き込まれ、気づくとメモ帳に文章を抜き書きしていた、と。
こういうのが、作詞に影響していくのね。
そして、この文章をメロディに乗せて歌ってみてはどうか、と提案する。

こうして、最後の渾身の1曲を、例の文庫本を引用した歌詞で、一発録りでレコーディングした。
演奏はすごくいいものだったが、間奏で五郎が謎の独り言を言う。
これが例の曲の制作秘話です。
バンドの魂の叫びというか、生き様というか、不格好でもカッコイイと思いました。

ところで、英語で『fish story』とは、「ほら話」という意味らしいですよ。
この本のタイトルでもあるんですけど、やられた~って思いました。

そして話は「現在から10年後」に繋がります。
巧妙な時間トリックが絶妙な伏線になって、やがて全てが繋がる瞬間を、
ぜひ体感してほしいです。


ポテチ

今村と大西、ちょっと変わった同棲カップルの話。
どっちも苗字なので、最初はどちらが彼氏でどちらが彼女なのか判然としないのですが、
今村こと今村忠司が彼氏で、大西こと大西若葉が彼女です。

今村は実は空き巣。
冒頭で、マンションの1室で漫画を読んでくつろいでるようなシーンかと思いきや、
実はそれが他人の家で、空き巣に入っていたというからビックリです。

不思議なカップルの馴れ初めは、これまた不思議なものでした。
1年前、とあるマンションの一室で、親分の中村と一緒に空き巣の仕事をしていた時のこと。
その家の電話が鳴り、留守電に緊迫した内容が吹き込まれる。
「死ぬことにしたから。飛び降りちゃうから」と。
慌てて電話をとった今村が引き止め、まさに飛び降りようとしている現場に向かう。
その時の相手が大西だった。

ところで、中村は今村から「中村専務」と呼ばれるようになるのだが、
中村という空き巣には聞き覚えがある。
「ラッシュライフ」に出てきた、へなちょこな二人組だ。
判断力に欠ける上司と、世間知らずな部下。
その時も何やら大きな仕事(郵便局強盗)が控えているとかで、黒澤を誘ってきたのだが、
後先を考えず、ろくな調査や検討もせずに仕事を起こそうとする者と組む気はなかった。
その軽い言動から、私ですら大丈夫か!?と思ったものですが。
その中村がかわいがっていた、かなり天然の若者タダシが今村だった!
当時はカタカナ表記でしたが、今回は「忠司」と漢字表記になっています。

その今村は前回、ニュートンの万有引力を自力で発見した!と興奮していて、
その時のことも本作では触れられていますが、今回はピタゴラスの定理を発見します。
無謀で仕事を一緒にしたいとは思わないけど、ドジキャラで何とも憎めない二人組なのです。

中村のことは見放している黒澤も、今村の将来については案じていた。
中村につくことで、危なっかしい仕事はさせられない、と。
そして今作では、今村と大西を時々助けます。

しかしあの天然のタダシが、まさかこんなに繊細だとは。
その背景には、こんなに重いものを抱えていたとは、
あのキャラからは想像つきませんでした。

取り違えとは他の作家さんの作品でも度々題材にされますが、
昔は結構あったんですかねぇ。
今でこそ生まれてすぐの赤ん坊は、足首に名札をつけられるので、
そういう間違いはないのでしょうけど。
そうじゃなくても、もしもあの家に生まれてたら…なんて、
パラレルワールドを妄想することはありますが、
本作を呼んで、あまりに不謹慎だな、と反省しました。
取り違えを連想させる数々の伏線はさすがです。
タイトルにもなっている、ポテチの味を間違えて、泣きながら食べるシーン。
これはもう伊坂作品の中でも指折りの名場面だと思います。

そういえば、過去の伊坂作品で、やはり血の繋がりに悩んだ人物がいましたね。
「重力ピエロ」の泉水。
遺伝子関係のお仕事をしているので、黒澤の探偵業の方で縁があるのですが、
今回も今村の遺伝子検査で活躍しています。

さて、大西の方にも他作品とのリンクが…。
大西は地面に耳をつけ、そこから伝わる音や響きを確かめるのが、
子供の頃から好きだった。
「オーデュボンの祈り」にもそういう少女がいましたね。
彼女の名前は「若葉」。
でももしこれが同一人物だとしたら、大西の両親は埼玉にいるらしく、
大西若葉がひとりであの島に行っていたということ??


今回の作品はいつになく、過去作品とのリンクが多かったです。
細かいところでまだ私が気づけていないものもあると思うので、
もし気づかれた方いらっしゃったら、是非教えていただきたいです!



フィッシュストーリー (新潮文庫)

フィッシュストーリー (新潮文庫)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/11/28
  • メディア: 文庫


最後のレコーディングに臨んだ、売れないロックバンド。
「いい曲なんだよ。届けよ、誰かに」
テープに記録された言葉は、未来に届いて世界を救う。
時空をまたいでリンクした出来事が、胸のすくエンディングへと一閃に向かう瞠目の表題作ほか、伊坂ワールドの人気者・黒澤が大活躍の「サクリファイス」「ポテチ」など、変幻自在の筆致で繰り出される中篇四連打。
爽快感溢れる作品集。
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