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D-不死者島

今回の舞台はタイトルから察せられる通り「孤島」。
「不死者島から霧が出ると、みんな貴族になってしまった」
そんな噂は辺境に広く伝えられていた。

近隣のとある漁村でかつて村長をしていた老人の話では、
100年以上も前に、あの島で暮らせないものかと、
調査に向かった村人たちがいた。
彼らの知らせによると、放棄された貴族の施設がある他は、
不死者島は楽園ともいうべき場所で、
野性の動植物に溢れ、近海は魚と貝の宝庫、鳥すら射放題であると。
何より、島の土壌が実に農耕に適していると判明し、
漁業に頼るしかない村人は、海よりは安定した農耕生活を望み、
村の7家族30人ほどが、島での永住を決意して、海を渡っていったのである。
その植民団は、まだ死んではおらず、島にいるらしい。
といっても、貴族が絡む土地で、人間が無事なはずがない。
最初に霧とともにこの村をおそった貴族のひとりは、
なんと、植民団のメンバーだったのだ!

こういう未開の島に行って、大変な目に遭う話は、
よく映画でもある設定な気がする。
ジュラシックパークなんかもそうですよね。
Dの世界でも、それは同じらしい。

それは、2日前のこと。
霧が海を渡ってくると、翌日には村の者が100人以上、姿を消していた。
そんな島を調査するため、治安官や賞金稼ぎが集められた。

この事件には目撃者がいた。メグという17歳の少女。
村人たちが湾の方に向かって歩いていくのを見た。
その中にはメグの両親と妹もいた。

漁師である父を手伝い、操船のできるメグも同行し、
一行は島へ渡ることになった。

この一団の中にDはいないのです。
Dは別の目的があって島に渡り、たまたまメグと遭遇する。
なので、今回Dの出番がものすごく少ない!
そこがちょっと寂しいです。

かつてこの島で滅び、復活を遂げた貴族、ミズキ・ダンドリアン公爵夫人。
この女はDと因縁があった。
夫がいながらDに惚れて、それがもとで滅びることになった。
蘇ってからも、夫人のDに対する想いは変わらない。
不老不死となっても、嫉妬を抱くところは人間と変わらないんですよね。
むしろ、不老不死となった分、かえってたちが悪いのかも。

今回のヒロイン、メグも、なかなか恋多き女性だったのではないでしょうか。
恋人だったトーマは、他の村人と一緒に島へ渡った一人。
島で貴族の実験台にされた彼は、悲しい運命を辿る。
メグと一緒に島へ渡った治安官助手のウェスリーは、
貴族の下僕となりながらも、最後までメグを助けようとした。
ダナエ卿だって、貴族でありながら、人間であるメグとの約束を守ろうとして、
それにも心動かされたに違いない。

守られるだけなヒロインと違い、銛を片手に果敢に立ち向かっていくなど、
最後まであきらめずに健気に頑張っていたメグの結末は、ちょっと酷だなぁと思ったけど。
Dに恋愛が絡むと、ロクなことがない証拠ですね。

ヒロインであっても、敵であっても、Dに惹かれるのは女の宿命。
もちろんDがその気持ちにこたえるはずはなく。
儚げに散るのは人間、泥沼化するのが貴族。
不老不死を手に入れると、往生際が悪くなるのかもしれませんね。



吸血鬼ハンター 20 D-不死者島 (朝日文庫)

吸血鬼ハンター 20 D-不死者島 (朝日文庫)

  • 作者: 菊地 秀行
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2008/08/07
  • メディア: 文庫


かつて貴族の研究室があった孤島から白い霧が流れ出ると、付近の漁村の住民は貴族の下僕と化して姿を消す。
幾たびか起こった悲劇が、今またメグの村を襲った。
町の治安官は賞金稼ぎを雇って孤島に渡り、村人の消息を確かめようとする。
途中メグは荒れ狂う海で、やはり島を目指すもう一艘の小船に美しい人影を見た。
Dであった。
一体誰が雇い、何のために彼は島に渡るのか。
霧に包まれ、怪異に満ちた貴族の島に。

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