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大奥 2

前巻で男女逆転をしていることに違和感を覚えた吉宗は、
御右筆の村瀬を訪ね、こうなったいきさつを知ることになる。
この2巻からは、大奥の誕生からを辿っていくことになります。

男女逆転とは言っても、2代将軍・秀忠までは男性。
3代将軍・家光も当初は男性でした。
ところがその家光も、赤面疱瘡で亡くなってしまう!
必死になった春日局は、家光の死を隠し通すことにしたのです。

家光が男色だったのは有名な話ですが、
そうなると跡継ぎは望めないと思わていました。
ところが、たった一人、血の繋がった子がいたのです。

ある夜更けに、夜歩きをしていた家光が、
たまたま見かけた町娘を襲った。
その時、身ごもった娘がいたのです。
全ては春日局への反抗心から起きた痛ましい事件でしたが、
春日局はこの際、徳川家の血が繋がることに喜んだ。
というよりも、春日が溺愛した家光の血筋を残したかったのだ。
よって、主治医を口封じに殺し、家光の死は伏せられ、
かわりに春日の実の息子である稲葉正勝が亡くなったこととした。

家光が町娘・お彩に産ませた子は娘で、名は千恵。
嫁にも行けなくなったお彩は娘を連れて、江戸城に身を寄せており、
城内に小さな屋敷と乳母を与えられて、静かに暮らしていました。
ところが、家光の死を受け、千恵は春日局のもとに連れて行かれることに。
お彩と乳母はやはり、口封じに始末されてしまいました。

春日のもとに連れてこられた千恵の役目は、将軍のかわりとなること。
そのために髪を切られ、男の姿をさせられることに。
でも千恵はわかっていました。
自分は、徳川の血を繋ぐための、借腹でしかないと。
以降、家光とは、成長した千恵のことを指すことにします。

それから6年後…。
慶光院新院主の跡目相続の御礼に江戸へやってきた万里小路有功。
将軍との謁見を済ませたらすぐに京へ戻るつもりだったが、
何故か許してもらえず、江戸にしばらく逗留するよう勧められる。
丁重に断る有功だったが、春日局にお金まで積まれて、引き留められてしまう。
かといって自由に江戸を見物できるのかと思えばそうではなく、
屋敷の中で過ごすよう命ぜられるので、ますます訳がわからない。
そのまま何もお達しがないままで4日が経った頃、
春日局から衝撃の発言が飛び出す。
江戸で還俗し、将軍家光公のお小姓となるのだと。
つまり、大奥入りを命ぜられたということ。
あまりのことに声も出ない有功。
しかし手回しの早い春日局は、吉原から遊女を呼び寄せ、
有功に女犯の罪を犯させて、無理やり還俗させようとした。
魂胆がわかってしまった有功は頑なに断るが、
お付きの明慧という坊主と、一人の遊女が斬られてしまう。
命を救えなかったことによる罪悪感から、結局、残りの遊女の一人と一夜を共にした。
朝が来て寝所から出てきた時の「髪をのばすぞ」と言ったその表情が、
何とも言えず絶妙な表情でした。

それから半年。
慶光院の拝領屋敷から田安台の御用屋敷に移された有功は、
玉栄とともにただひたすら髪を伸ばして、登城の日を待った。
玉栄は、亡くなった明慧とともに有功に付き添ってきた小坊主で、
部屋子として有功とともに大奥へ入ることを許されました。

そしてついに将軍と対面した時、有功はその姿に唖然とする。
将軍・家光とは、男性の形をした、少女の姿だったのです。
違和感を覚えた有功は、全てを知ることになるのです。
・本来の将軍・家光は亡くなっており、娘の千恵が代わりをしていること。
・その将軍、ひいては徳川家を守るために築かれたのが大奥であり、若い男たちが集められたこと。
その大奥へ連れてこられた有功の役目とは、家光との間にお世継ぎをもうけるという、いわば「種」。
全てを知ってしまったからには、有功は二度と、大奥の外には出られなくなりました。

そうとなっては、有功は大奥の数あるしきたりに従うことになり、
それらの案内役として、村瀬正資がつくことに。
1巻で年老いた御右筆として登場した人の若かりし頃です!
早速、京言葉を改められるよう言われる。
その後も、男の園で、数々の嫌がらせに遭遇します。
男の方が、立場にこだわったり、プライドがあるから、こういう権力争いは厄介かもしれませんね。

そんな仕打ちにも耐えながら過ごしていると、家光が有功に猫をプレゼントする。
若紫と名付けられた猫は、有功に大変可愛がられ、それがキッカケで家光との距離も近づいていきます。
ところがそれを妬む者たちもいて…。
快く思わない玉栄は、猫をつかって復讐を果たす。
それは猫殺しの濡れ衣を着せること。
将軍ご拝領の猫となれば「お猫様」と呼ばれ大切に扱われるが、
その「お猫様」が斬り殺されたとあっては、大変な重罪です。
玉栄のことを痛めつけた御中臈の一人、角南重郷を葬ることに成功する。

この場面を読んで、無類の猫派である私は怒り爆発!!
いくら何でも、罪のない猫の命を奪うなんて!!
玉栄、それでも元坊主か!!
「手討ちにしてくれるッ!!」て家光の台詞と、私の心の叫びがシンクロした瞬間でした。

若紫を弔う墓の前で、有功は家光の心の傷に触れることになる。
さすがの元坊主である有功は、弔いの心得を知っております。
弔いというのは、残された者が気持ちの整理をするためにあるものだと。
念仏を唱える間しばし心を落ち着け、失った者を思い出してはまた念仏を唱える。
そうするうちに人は、少しずつ悲しみから立ち直ってゆく。
だけどそれも綺麗事だと家光は一蹴する。
念仏を唱えたところで死んだ者は帰ってこない。
だから家光は、念仏を唱えるくらいだったら仇を斬る。
仇がいない場合は、手近にいる者を斬ればよいというのが、家光の考え。
この考えにより、家光が江戸の女たちの髪を切ることで憂さを晴らしていたことに思い当たる。
当時、江戸では若い娘の髪を切り奪っていく通り魔のような侍が横行していました。

人はみな、自分でもどうにもならない運命を受け入れて生きている。
それは家光も同じ。
こうしてお互いの傷を慰め合うように、身を寄せ合った二人なのでした。

ところで、そもそも大奥とは、どうして始まったのか。
もちろん、もともとは赤面疱瘡で亡くなった家光のためにつくられたものではありましたが。
その考えのもとにあるのが「七色飯」。
亡き家光は幼い頃から病弱で食が細く、春日は朝飯を七種も用意した。
それだけあれば、気に入って食べてもらえるものがあるだろうと。
大奥の原理もそれと同じ。
これだけ数多の女性を集めれば、男色好みの家光にも、一人くらいはお気に召す女がいるはずと。
これだけ単純な構造のものが、どれほど多くのドラマを生むかと思うと、末恐ろしくなります。



大奥 (第2巻) (JETS COMICS (4302))

大奥 (第2巻) (JETS COMICS (4302))

  • 作者: よしなが ふみ
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2006/11/29
  • メディア: コミック



タグ:大奥
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