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LOOSER 失い続けてしまうアルバム

TEAM NACSの公演で、初のDVD化された作品です。
TEAM NACSとは、あの大泉洋さんも所属する、
北海道出身の男性5人組による演劇ユニット。
友人に教えてもらって、他の作品で初めて生の舞台を見たのですが、
もうすっかりハマってしまいまして、過去の作品のDVDを買いました。

DVDのいいところは、アップだったり、座席によっては見ることができない角度から見れて。
見逃した表情も見られること。
でも、ナマはその場での臨場感や緊張感が共有できて、ナマでも観たかったな~と思います。
あと、DVDの醍醐味といったら、本人たちによる副音声!
副音声なので裏話とか解説が聞けるかと思いきや、
そこはナックスなので、堅苦しい話などするはずもない。
普通に映像を見ながら自画自賛したり、雑談したり、
家で鑑賞しながら他愛もない感想を言い合ってる感じ。
それが面白いんですよね。
役者にとっても、芝居を客観的に見られるというのは有意義なことだと思います。
※くれぐれも副音声は本編を見てから楽しんでください。

さて、ここからは私もプレビューを書きますが、ネタバレするはずです!
極力気をつけますが、見どころだと思って、
改めてご自身で映像を見るキッカケにしてもらえたら幸いです。

大河ドラマの新選組ブームにのっとって、ナックス初の歴史モノに挑戦!
ところが、作・演出のリーダー、森崎さんは、なんと歴史嫌いだそうです!
私はどちらかというと歴史好きな方なんですけど、
どういうわけかこの時代は苦手でして…。
リーダーいわく、歴史嫌いになる理由が「何で戦ってるかわからないから」だそうで、
なるほどそれは一理あるかもしれないな。
なので、賛否両論あるかと思いますが、説明ゼリフが多くなっています。
こういう表現が正しいかわかりませんが、「歴史を楽しく勉強しよう♪」と趣向を凝らした授業のような感じ。
水曜どうでしょうでおなじみの大泉さんの校長キャラや、安田さんのぐるぐるメガネの生徒キャラも登場します。
水どうファンには嬉しい演出ですね。
こういう授業だったら、少なくとも学生時代にこの作品を見てたら、日本史がもっと得意だったかもしれない。

そんな歴史嫌いなリーダーが書いただけあり、森崎さんなりの解釈がされています。
根底にあるのは「新選組といえどもダラダラしてたんじゃないか?」というリーダーの思い付き。
それがタイトルの「LOOSER」になるのですが、これは奇しくもスペルミスだったというから面白い。
「失う」という意味なら「LOSER」ですもんね。
このルーズさがナックスにはしっくりくるし、歴史も勉強とか義務だと思うとキツイけど、
肩ひじ張らないゆるさが私にもちょうどいいのかも。
そもそも、歴史なんて後の世の人が語るわけで、実際の史実がどうだったかなんて誰もわからない。
だから遺された資料などから、いかようにも解釈できるものだと思うんです。
そこにオリジナルの解釈を加えるものが歴史エンタテインメントだと私は思っています。
教科書に書いてある通りのことをやっても面白くないもんね。

リーダー流の解釈で一番大きな点は、前述の通り、「新選組がルーズだった!」ということ。
いきなり登場した新選組は、屯所でヒマを持て余し、
指当てゲーム(いっせーの1ってやつ)や殿様ゲーム(今で言う王様ゲーム)をやっていました。
中でも土方歳三を一番ルーズだったとし、大泉さんに配役。
土方さんといえば新選組の象徴のような人で、規律の塊のようなイメージがあったのですが、
リーダーが読んだ司馬遼太郎の「燃えよ剣」でも、エロイ土方さんが書かれていたそうです。
それに影響されたのかな?

そしてリーダーが焦点をあてたのが、初代局長の芹沢鴨。
この人はすぐ死んでしまったので、近藤や土方ほど名を知られていません。
が、きっと新選組ファンの中では有名なんだと思いますが、
数々の歴史資料や作品で、悪人とされることが多いそうです。
だけどリーダーは、この芹沢を「豪快な天然ボケ」だったと解釈した。
その豪快さを表現するためにキャスティングされたのが安田さんで、本当にそのものだと思いました(笑)
まず登場の仕方から豪快!
ふすまが開いてド派手な音楽がなったな~と思ったら、赤フン姿で登場!
それから「鴨」だけにタモリさんもビックリな鴨の生体模写をしたあたり、さすがです!
そこからは安田さんの一人舞台、豪快に暴れてました。
となると、芹沢が関わった事件はどう扱われるのか?

①宿割担当だった近藤が芹沢の部屋を取り忘れた件
史実通りなら、ブチ切れて焚火をしたのでしょうが、
安田さんバージョンの芹沢なら、「ひどいよね。いいよいいよ、外で寝るから」とあの独特のネガティブさで言い、
「火でも焚くか」と火を焚いたら燃え広がってしまったというもの。
その火を焚くマイムが上手で、独特の「ヨイショ~」っていう台詞がクセになります。
②力士との乱闘事件
遊女が力士に殴られていて、誰も助けない中、芹沢が助けたという善人設定に。
③大和屋焼き討ち事件
大和屋庄兵衛を大泉さんが演っていたというのが全てを物語っているのですが、
大和屋は生糸で大儲けをした商人で、金で世を動かそうとした人。
その姿はギラギラの全身ミラーボールのような衣裳で、振袖のような袖には「金持ち」と書かれています。
その袖を自慢げに掲げる大泉さんが、本当に面白い!
で、大和屋に乗り込んできた新選組ですが、ボディガードとして金で雇った長州藩士を相手に歯が立たない。
キャストの都合上、アンサンブルの長州藩士がいるわけではなく、
そこは「バカには見えない生糸でつくった羽織を着ている」という、豪快な芝居のウソで乗り切ります。
そこに突然現れた力士、小野川部屋の森ノ海。
あからさまに架空なのですが、上述した乱闘事件により、芹沢に怨みをもってやってきたのですが、
力士が大砲をぶっ放そうとしたところ、とっさに芹沢が大砲を大和屋に向けたことで火が付いたことに。
その力士はあっけなく斬られ死にハケとなるのですが、捨て台詞がリーダーらしい。
(力士はリーダーが演っていました。リーダーしか出られる人がいなかったそうです)

そんな芹沢のお騒がせ騒動がありましたが、ロマンチストなところもありました。
芹沢は末期の梅毒だったのですが、「体中に深紅の梅が咲く病気」とし、病気を恐れていませんでした。
また芹沢の妾は偶然にも「お梅」といい、これほどまでに梅に縁がある人だとは…。
お梅も病気で死んだのですが、芹沢は死に際にお梅と自分の亡骸を梅の名所で有名な水戸の偕楽園に埋めてほしいと言いました。
芹沢は水戸出身でしたからね。この「梅」繋がりは見事です!!

芹沢のラストのシーンも、豪快でカッコよかった!
病気で長くないのはわかっていながら、武士として死なせてほしいと、粛清にの命を受けた土方に斬らせました。
その時、「誠」と書かれた幕が落ちる。これこそが新選組が志していたもの。
誠とは「言葉と心が一致して違わず」。この精神が後の新選組にも引き継がれていきます。

さらにもう一つ、リーダー流のアレンジをしたのが隊服。
新選組といえば、青の隊服が印象的で、ドラマなどでもよく描かれてますよね。
でもこの作品の斬新なところは、なんと赤い隊服なんです!
考えてみれば、確かに青は目立つし、赤なら返り血を浴びても気にならないですね。
史実でも、池田屋に討ち入りに行った時は、黒い隊服を着ていたそうです。
この羽織にはもう一つ大事な役割があるのですが、それは後々語るとして、
シゲさんだけは青色を着ていますが、これにも意味があります。
それはシゲさんが担った大事な役割なのですが…これも後ほど。

と、ここまで語ったところで前半が終了。
前半は主に芹沢を中心とした新選組サイドのお話ですね。
かわって後半では長州藩サイドの話になります。
ただでさえキャスト5人だけで少ないのに、どうやってやるのか?とお思いでしょうが、
ここで「羽織マジック」が活かされるのです。
長州藩側(倒幕派)の役の羽織は、全員「黒」。
なんと羽織がリバーシブルになっていたのでした!!
これによって5人が見事に演じ分けるので、キャストが2倍に!!
リーダー→宮部鼎蔵、安田さん→古高俊太郎、音尾さん→桂小五郎という配役に変わりますが、
桂以外知らない…。
古高が自分の名前を連呼するのもわかります。
宮部は語尾にやたらと「ばい」をつけてることからもわかる通り、肥後藩(熊本県)出身。
かの池田屋事件では、唯一、自刃によって命を落とした人だそうです。
古高は枡屋の主人ですが、長州勢が集会していることをかぎつけた新選組に踏み込まれ、捕縛されてしまいます。
でもどれだけ拷問されても、決起場所が池田屋だとは言わなかったとか。
こうして教科書に名前が載らない人でも貫いた大義があり、
こういうのを聞くと、やっぱり調べちゃいますよね。
便利な世の中になったもんだ。

幕末といえばこの人!という印象の坂本龍馬は、大泉さんが演じています。
髪型が、写真とかでよく見る龍馬の髪型にそっくり。
大泉さんが龍馬を演じたのには他に重要な理由があるのですが、さすがにこれは言えません。
しいて言うなら、土方は芹沢の死後から変わり、その後の大泉さんは隙がないくらいカッコイイ!!
なのにちょいちょい笑わせてくるのは反則です。

さて、ここまであえて名前をあげてこなかったシゲさん。
シゲさんだけは、「佐藤重幸」という本名で現代人なのですが、薬をもらって過去に遡る役です。
余談ですが、この薬というのは、土方が新選組に入る前に薬屋だったということから由来してるみたいですよ。
シゲさんは二度(正確には三度)も遡りまして、一度目は新選組の山南敬助として、二度目は長州勢の吉田稔麿として、
一人で両方の立場を味わった人。
ここでもまたあのリバーシブルの羽織マジックが活きてきまして、
シゲさんの山南だけ青の羽織を着てるのはこの辺の事情が関わってきます。
山南はともかく、吉田稔麿とはまた知らない名前…。
調べてみると、この人も池田屋事件の時に討死した人ではあるそうですが、
死んでいなかったら彼が初代総理大臣になっていたかもしれないと語られるほどの人柄だったようです。
シゲさんの活躍により、池田屋ではなく四国屋を誘導して時間稼ぎをしましたが、この間違いがあったのも史実。
当時も情報が錯綜していたのですね。

シゲさんにはストーリーテラー的な役割もあって、長い説明ゼリフのほとんどをシゲさんが担っているわけですが、
そこにリーダーの率直な考えがつまっているんじゃないかと思いました、
その中でも、新選組は男性にとって憧れの対象でもあるけど、同時に僻みもあるんじゃないかと。
今時、大義だの誠だのと掲げられる精神もない、武士のようなカッコ良い生き様もマネできない。
なるほど、これが男性の味方なのですね。
誠のもとに国を守る新選組と、大義のために国を変えようとする長州藩士。
自分が正しいと思う道を生きる、その為自分の勝手がぶつかる時代。
各々の大義や誠を見せつけられて、男性じゃなくても感化されるものがありました。

この後、史実だと桂が薩長同盟を結び、明治維新が起こります。
そして、新選組は新政府軍に追われる立場に。
近藤は敗走の末、流山で新政府軍に捕らわれ、打ち首、その首は京都でさらされたそうです。
実は流山は私の地元でして、近藤勇陣屋跡なんかも残っているのですが、行ったことがなくて…
近いうちにでも行ってみたいと思います。
沖田は近藤の死を知らされないまま、結核で死亡。
土方はナックスの出身地・北海道に向かい、蝦夷共和国をつくったものの、
箱館戦争が勃発し、銃弾により戦死した。
小姓の市村鉄之助に渡した遺品は、数本の遺髪と写真だけだったそうです。

全てが全くの史実通りというわけではないけど、こういう人間ドラマを知ると、歴史は勉強しやすいですね。
新選組は登場人物が多くて勝手に苦手意識を持っていたのですが、喰わず嫌いだったのかもしれません。

これだけ早大なテーマなのにも関わらず、
舞台装置は立派な龍の描かれたふすまと、その前の数段ある階段のみで、セット転換なし。
でも、このふすまからいろんな役が登場するのですが、いずれも効果的な登場の仕方でインパクトありました。
隊士の姿で派手に登場してきた時は、本当にカッコイイです!!

ナックスは気心の知れた5人組だけあって、さすがに当て書きです。
大泉さんのルーズな土方や、安田さんの豪快な芹沢は上述の通り。
他にも、普段は美形な役者が演じることの多い沖田を音尾さんが演じたことについては、
実は不細工だったんじゃないかという説もあって、これこそ男の僻みですよね(笑)
実は平目顔だったという記述もあるようで、音尾さんの適役となりました。
リーダーの近藤さんについては、身体的特徴もさることながら、
リーダーとしての気質からシンパシーを感じられたのではないでしょうか。
池田屋の1階では宮部対沖田、2階では近藤対桂で斬り合うシーンがあり、
実はこれ、どっちも同じ役者の組み合わせなんです。
互いの羽織をひっくり返して切り替えるのですが、まるでパズルのような配役ですよね!
少しでも配役が違ったら実現できない構図ですもの。

他にも変装の得意な桂が魚になりすましてピチピチするのは、音尾さんにしかできない技。
(見事な反りです!!)
安田さんのよくわからない刀裁きも、マネできそうでできない。
5人しかいないナックスのキャスト不足事情もありまして、池田屋に踏み込んだ主たるメンバーが足りない!
そもそもたったの5人で新選組をやれること自体ビックリですけどね。
永倉新八を安田さん、藤堂平助を大泉さんにまわしたのですが、もはや衣装替えもなく、暗黙の了解です。
むしろ潔いし、ファンにはおなじみのネタですね。
ちなみに藤堂平助は金持ちだったそうですが、これも史実だそうです(笑)
こういうファンサービスが多いのも嬉しいし、逆にファンじゃなくてもこれをキッカケにハマります。

また彼らは遊びの天才だと思うのですが、舞台って結構遊べるシーンがあるんです。
ある程度脚本や演出はあるんですけど、役者が自由に遊べるシーンが。
リーダーもこういうところは役者に任せるスタンスみたいです。
中でも、序盤でやっていた「シャア少佐遊び」
単純に「シャア少佐」を言う回数を順に増やしていく遊びなんですけど、これがなかなか難しい。
なのですが、稽古してるうちにうまくなっちゃったそうで、大泉さんがメチャクチャすごかった!
ただし、このシーンはシゲさんが勝たなくちゃいけなかったので、必死なシゲさんが面白かったな。
言えなかった音尾さんは可愛かったし、あっさり言えなかったリーダーもいいオチだった。
この遊びは合コンで使えそうですね。特にシゲさんみたいなガンダム好きがいる時にオススメです(笑)
あとは大泉さんがいかりや長介さながらに、音尾さんを舞台の上手から下手へ走らせたり、
他にも小ネタをあげてたらキリがない!!
隅から隅まで、良い意味で気が抜けない舞台で、しっかり考えさせられるテーマも伝わって、
2時間超えでもあっという間でした!
ちなみに、これだけ長丁場でも休憩は入らないのですが、全く問題ないです。
見てる側も集中力が続くお芝居ってなかなかないですよね。
私は自分でも芝居をやっていたことがあるので、演者としても勉強になる部分もあったし、
本当に見ごたえのあるお芝居で、何度見ても飽きないと思います!!

さて、DVD特典は副音声だけではありません。
なんと、本編とは別に特典ディスクがついてきちゃう!!
その内容がまた盛りだくさんで、1本の番組ができそうな程。
内容はナックスの5人が支笏湖にキャンプに行きつつ、今までの経歴や公演を振り返るというもの。
個人ごとのインタビューも挿入されています。
当時、北海道では有名な5人ですが、東京公演をして初めて知った人もいるだろうし、
そういう人達にとっては貴重でありがたいお話ですね。私も然り。

副音声で「信長やりたいね!」と語っていましたが、
もし私が白き薬を手に入れて10年前に遡れたら教えてあげたいです。
信長を演じるのは…
もう少し先になるかもしれませんが、その作品もいずれレビュー書きますね。


<追記>
流山にある「近藤勇陣屋跡」に行ってきました!
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LOOSER 失い続けてしまうアルバム [DVD]

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  • 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
  • メディア: DVD


平凡な日々を憂いながら毎日を送るごく普通の30男、佐藤重幸。
彼はある日怪しげな男から、タイムトリップ出来るという薬を手に入れる。
「白き薬は10のときを遡り、黒き薬は10のときを越える・・・」
15包の白い薬を頬張った彼がたどり着いたのは、動乱の幕末「新選組」の時代だった・・・。

脚本・演出を手掛けたリーダー・森崎博之が本作のテーマに選んだのは、幕末「新選組」。
おなじみの話にオリジナルのエッセンスを加味した、笑いあり涙あり感動ありの意欲作。
タグ:TEAMNACS
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